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韓国:韓国の職業性ガン認定率がOECD最下位の理由
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韓国の職業性ガン認定率がOECD最下位の理由

[コラム]調査される使用者側が、調査する人を選定...勤労福祉公団は無関心

キム・ミノ(労務士) 2012.06.21 08:53

職業性ガンの認定が空の星を取るほど難しい理由...

6月15日、サムスン忠南対策委とパノルリムが、サムスン電子温陽工場卵巣ガン 死亡労働者の故イ・ウンジュ氏の両親と兄さんと共に勤労福祉公団天安支社の ユン・ミョンス支社長に会いました。とても胸が痛かったです。勤労福祉公団 天安支社が故人の両親と兄の胸に大きな傷を与えたからです。

故人の命を奪った『卵巣ガン』が職業病かどうかを判断するには、故人が働い ていた作業環境に関する疫学調査を実施しなければなりません。それで、勤労 福祉公団は、疫学調査専門機関の韓国産業安全保健公団(産業安全公団)に疫学 調査を依頼しました。

産業安全公団は傘下の韓国産業安全保健研究院(産保研)で疫学調査を実施して、 その結果を勤労福祉公団に送ります。勤労福祉公団は、業務上疾病判定委員会 (疾判委)を経て、職業病かどうかを決めます。事実上、『疫学調査の結果』が 職業病かどうかを判断するわけです。

こんな事情なので、疫学調査を受ける会社は有害な作業環境を隠蔽、縮小しよ うとします。死の工場とまで呼ばれている韓国タイヤでは、これについての資料 が公開されたりもしました。

産保研もこれを知らないわけではありませんが、会社が公開して提供する条件 の下で疫学調査を進めるしかないと訴えます。単にサムスンだけでなく、すべて の職業病事件の疫学調査がこんな調子です。職業性ガンを認められるのが空の 星を取るぐらい難しい最大の理由がまさにここにありました!

勤労福祉公団、「なぜ私に...私がなぜそんなことをさせるのか」

昨年、忠北清州のマグナチップ半導体白血病死亡労働者、故キム・ジンギ氏の 白血病事件で、民主労総忠北本部と清州労働人権センターは勤労福祉公団清州 支社長と会い、疫学調査に遺族が推薦した専門家(職業環境医学分野、産業衛生 分野)が参加できるように、産業安全公団に疫学調査を依頼することを要求して、 受け入れられました。

しかしマグナチップ半導体は、遺族が推薦した専門家が会社に入ることを阻止 しました。すると勤労福祉公団と産保研は、遺族や民主労総忠北本部に知らせ ないまま、マグナチップ半導体が推薦した専門家も参加させ、疫学調査をしま した。調査される当事者が自分を調査する調査者を選ぶことを認めたのです。

しかもマグナチップ半導体が推薦した専門家のひとりはサムスン白血病事件が 社会的な問題になると、これに対してサムスンが設立した健康研究所の副所長 になった成均館大のキム・スグン教授でした。

サムスン忠南対策委は、故イ・ウンジュ氏に対する疫学調査がこのように進め られることを防ぐため、遺族推薦専門家の参加保障と共にサムスン電子が推薦 する専門家は参加させるなと要求するため勤労福祉公団天安支社長に会いました。

しかし天安支社長は自分は疫学調査を依頼するだけで、調査の方法には関与で きない、なぜ私にそんなことを要求するか、私がなぜそんなことをしなければ ならないのか、と、始終一貫高圧的で無責任な態度を見せました。私に偏狭な 考えを持っているとも言いました。労働者偏向的な労務士だから言うわけでは ありませんが、公平性の名で遺族が推薦する専門家と使用者側が推薦する専門家 の両方を参加させるか、排除しろという、その本質の論理は明確に間違いです。

勤労福祉公団は「業務上の災害を迅速で公正に補償」し、「災害予防とその他 に勤労者の福祉増進のための事業を施行し、勤労者保護に尽くすことを目的」 とする〈労働災害補償保険法〉によって設置、運営される社会保険機関だから です。

韓国の職業性ガン認定率がOECD国家中で最下位水準に留まっているのは、韓国 の作業環境がOECD国家中で最高水準だからでしょうか? あるいは不十分な 疫学調査を黙認し、幇助する勤労福祉公団、産業安全保健公団、労働部の職務 遺棄が、OECD国家中で最高水準だからでしょうか?

ぜひ今回の国政調査で疫学調査問題がきちんと扱われ、立法的に解決されるこ とを期待します。もちろん整理解雇問題のように、思い切り騒いでおいて立法 の段階になって、核心から逃げては決していけません。きちんとした労災補償 なしで、きちんとした労災予防は不可能だからです。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2012-06-22 08:35:28 / Last modified on 2012-06-22 08:35:49 Copyright: Default

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