本文の先頭へ
韓国:誰も見たくない夢、長時間労働、そして死
Home 検索

誰も見たくない夢、長時間労働、そして死

サムスン協力業者で68時間の長時間労働に苦しんで死亡した故ユ・ソンウ氏

チョン・ヨンギル記者 2014.03.21 11:24

▲故ユ・ソンウ氏が働いていた亀尾市工団洞のチャンウォン・テック工場の前。遺影を持った故人の父親と涙を流す母親。

不快な臭いが鼻をつく亀尾市工団洞のある工場の前。涙をためた十人ほどがサムスン電子の携帯電話ケースを作る(株)チャンウォン・テック前に立った。 工場の正門を見て泣くチョン・ミスク氏は、5か月が過ぎて、一輪の菊を持って先に行った息子が働いていた工場を訪れた。

2013年10月5日、12時間昼夜二交代と残業で週68時間働いたユ・ソンウ氏は、3か月で亡くなった。 大学卒業まで一学期を残した息子が学費も稼ぎ、社会生活を経験できると言って、工場で亡くなるまで、お母さんは息子がこんなに空しく死ぬとは思わなかった。

学費を稼ぎ、社会生活も経験できる携帯電話工場
週68時間の長時間労働に秋夕連休・特別勤務まで...

社会生活を経験するために仕事を探していたソンウ氏は、6月20日から(株)チャンウォン・テックで働き始めた。 もちろん、会社とソンウ氏の間には(株)TSNトップという人員派遣業者があった。

ソンウ氏は携帯電話トリミング(プレス)パートに配置され、12時間昼夜二交代で働いた。 昼から夜に交代する時は20時間、夜から昼に交代する時は16時間勤務までした。 休憩時間は午前・午後・夜・夜明けに10分、昼食・夕食・夜食の時間は30分だった。 ソンウ氏は入社後、死亡するまで週68時間以上の長時間労働に苦しんだ。

体がきつくて休みたかったが休めなかった。 用役で働いていたソンウ氏は、残業勤務を拒否した時の解雇1順位だったからだ。 会社は1日の作業量をチェックして、個人別の作業量が少なければさっさと解雇した。 作業量が少ないという理由で同僚が解雇されるのを見ていたソンウ氏は、自ら機械になるほかはなかった。 そのため8月にはたった一日しか休めず、秋夕連休の期間にも休日特別勤務をしなければならなかった。 誠実だったソンウ氏は、3か月働いて、遅刻や早退は一度もしなかった。

お母さんのチョン・ミスク氏は、休みの日に家に来た息子のソンウ氏が、2か月の間に体重が5kgも減ったという。 心配はしなったが、一人で働くお母さんを考えて金を稼ごうという息子を殊勝に思い、あまり心配していなかった。 ソンウ氏は小さい時からテコンドーを習い、酒もタバコもやらず特別な病気もなかった。

▲死亡前ユ・ソンウ氏の勤務時間。8月は休業日が一日しかなく、週68時間以上働いた。死亡前は週86時間働いた。

そんな10月4日、夜間組だったソンウ氏は、夜8時30分に出勤して仕事を始めた。 腹具合が悪かったソンウ氏は消化剤を飲みながら深夜勤務を続けた。 それでも体調が悪化し、明け方5時にソンウ氏は会社の休憩室に行ったが、目を開かなかった。 午前6時45分頃、からだが固くなっていて息をしていない状態で発見されたソンウ氏は、救急車で病院に運ばれたが、発見から1時間後に息をひきとった。

解剖検査の結果、ソンウ氏の解剖学的な死因は不明だった。 外部の衝撃もなく、身体に異常な兆候もなかった。 ソンウ氏の労災事件担当のイ・ギョンホ労務士は 「解剖学的な死因は不明だが、原因不明の内因性急死である『壮年急死症候群』の可能性が高いが、これは過労やストレスが原因」とし 「死亡前の12週間の勤務時間は週68時間を越えているので、過労認定は当然」と話した。

遺体安置所にも来ないサムスン協力業者(株)チャンウォン・テック
「青年を使い捨て扱いする現実」

息子の突然の死に悲しみに陥っていたチョン・ミスク氏は、息子が働いた会社の社長と責任者が誰も来ないことに理解ができない。 職場の同僚何人かが遺体安置所に来たが、会社からの弔問はなかった。 労災申請をしようとしたが、(株)チャンウォン・テックは職員でないと言って労災申請関連資料の協力要請も受け入れなかった。 所属業者に行けということだ。 しかし人員を送るだけの無許可派遣業者TSNトップはソンウ氏の勤務環境だけでなく、担当部署も知らなかった。

▲遺影を持って工場の前に立つ父。そしてチャンウォン・テック職員らがこれを見守っている。

息子をなくしたことも悲しいが、チョン・ミスク氏は息子の死に対する会社の態度に腹を立てている。 自分の会社で働いていた人が死んだのに、別の人に働かせればそれまでといったように対応する会社が薄情に思った。 息子が死んでもしばらく会社を叱責しなかったが、もう耐えられなかった。 くやしくて、憎くて、怒りがわいた。

そして3月20日、5か月ぶりに一輪の菊を持って工場の前に来た。 しかし会社は自分たちと会っても、挨拶どころか、門を閉めて職員に監視させた。 民主労総と政党、市民団体会員と共に追慕記者会見をしたミスク氏は、涙を流した。 偶然だろうか。記者会見が始まると、突然風雨が吹き付けてきた。

チョン・ミスク氏は「ソンウも、私たちも無力だが、一生懸命暮らす普通の人だった。 大学卒業前に社会生活もしてみて、学費も稼ぐと言って、工場に行った息子が死んで帰ってきた。 ひどい。 若い青年を使い捨ての人として扱う現実が悲しい。 一度も弔問にこない社長、死の釈明もない会社... 息子は死んだが、私たちの息子のような青年たちが二度とこんなことになってはいけない」と話した。

▲この日の記者会見には正義党のパク・チャンホ慶北道支社予備候補、労働党のキム・ヘラン慶北道議員予備候補、緑の党のキム・スミン亀尾市議員、緑の党のイ・ボンド亀尾市議員予備候補が参加した。

工場が密集し、そして下請け・派遣労働者が多い亀尾で進歩を語る人々が、相次いで自分たちを叱責した。 互いに違う政党だが、工場の都市、亀尾の現在を十分に噛み締めた。

民主労総亀尾支部のペ・テソン事務局長は 「過労に勝てず、死に至らせたチャンウォンは法的責任を口にする前に、人としての道理をわきまえろ」とし 「特別勤務と徹夜を拒めない労働者は亀尾には多い。 こうして事故がおきてから、一歩遅くやってきたことは、本当に申し訳ない」と話した。

緑の党のキム・スミン亀尾市議員は 「一週間に65時間以上の長時間労働、誰も見たくない夢だろう。 亀尾工業団地の全域に広がる長時間、不法派遣労働を見て、罪悪感と悲しみがおしよせる」とし 「地方選挙の時節に入って、誰もが庶民を語るが、ほとんどが人間と自然を破壊する成長を語る。 人が暮らせるような成熟した社会を作るのかを問う選挙にしなければならない」と話した。

正義党のパク・チャンホ慶北道支社予備候補も 「若い労働者が死んでいく時、この土地の進歩政党はどこにいたのか、もう一度深く反省する」とし 「正義党は、抑圧される労働者がいる現場で一緒に進歩政治を作る」と話した。

過労は確かだが、労災承認は不透明
長時間労働、派遣天国の亀尾工業団地...青年労働者の死は止められるだろうか

▲故人の月給明細書。時給4860ウォンの雇用で250万ウォンほどを稼ぐために、どれほど働かなければならなかったのだろうか。ソンウ氏が命を落とした10月の賃金にもそのまま明示された「お疲れさまでした」という言葉が面目を失う。

遺族はソンウ氏が過労による死亡だったと3月14日、勤労福祉公団に労災申請をした。 解剖検査の結果、死因は明らかにならなかったが、死亡前の4週間、12週間に週68時間以上の勤務で過労認定は充分だからだ。

大法院も「突然死(内因性急死)の場合、死因となる病変が明らかにならなくても突然死の原因になるさまざまな病気が過労により誘発されたり悪化して死亡したり、そのような病気がない場合に死亡時過労以外に他の誘引がない場合には、死亡と過労の間に因果関係がある」と判示している。 しかし遺族が因果関係を立証できなければ労災承認も不透明な状況だ。 因果関係についての専門の所見も必要だが、会社が積極的に動けば労災承認の可能性も高まる。

チョン・ミスク氏は「会社は警察署に行って述べる時も、ソンウの体調が良くなかったことだけを強調した。 からだに異常がなかった人も、徹夜勤務を何か月も続ければ、体調も悪くなるのではないか。 会社の態度さえ変われば、私たちもこれほどくやしくはないだろう」と話した。

長時間労働の強要と用役業者所属の職員の解雇を繰り返した会社に対する処罰はどのように行なわれているのだろうか。 遺族は事業場に対する告発状を提出し、労働庁は3月16日から(株)チャンウォン・テックに対する特別勤労監督を始めた。

無駄な努力にしないことはできるだろうか。 イ・ギョンホ労務士は「ソンウ氏の死亡以後、派遣業者TSNトップは廃業した。 しかし亀尾工業団地では不法派遣と長時間労働が普遍的に行われている」と話す。

付記
チョン・ヨンギル記者はニュースミンの記者です。この記事はニュースミンにも掲載されます。チャムセサンは筆者が直接書いた文に限り同時掲載を許容します。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2014-03-22 07:02:47 / Last modified on 2014-03-22 07:02:48 Copyright: Default

関連記事キーワード



このフォルダのファイル一覧上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について