本文の先頭へ
韓国:サムスン物産事態の本質と財閥の企業支配構造
Home 検索

サムスン物産事態の本質と財閥の企業支配構造

[ソーシャルパワー]サムスン問題、また国民的議論を集めろ

2015.06.15 13:22 ソン・ミョングァン(チャムセサン企画委員)

「株主平等主義 vs 国富流出防止」?

5月26日、サムスンのいわゆる「経営権継承」のために、サムスン物産と第一毛織の合併計画が発表された。 MERS事態で国民の耳目が一方に傾いている間に、サムスンの李健煕(イ・ゴニ)会長の身辺問題で速度がついた権力継承のボタンがまたかけられ始めたのだ。 先立って第一毛織とサムスンSDIの上場により、李健煕の株式相続のための李在鎔(イ・ジェヨン)の実弾確保を終えた後、 今では合併によりサムスン電子の支配力をさらに高めようとする計算だ。

ところでここに第3位の株主としてサムスン物産株式の7.12%を持つ外国系ヘッジファンド、エリオットが訴訟を提起したことで議論が拡大している。 彼ら主張の要旨は、サムスン物産の経営陣が合併をして株主の利益を侵害したということだ。 サムスン物産の資産規模が第一毛織より三倍も大きいのに、合併の割合は反対に0.35:1の割合で安値で合併させるのは、誰が見ても明白な背任行為だということだ。 エリオットは、サムスン物産の最大株主である国民年金に合併反対に参加することを公開で訴え、 世論戦を展開して小額株主から株式の委任を集めている。 もちろん、ここにはこの問題をできる限り問題化して株価の上昇を誘導し、 短期差益を狙うという内心もある。

この議論について多くの批判があふれている。 サムスンが三代世襲だけに没頭し、市場の秩序を傷つけ、株主の利益を侵害していると指摘する批判的な見解と共に、 短期差益を狙う海外投機資本による国富の流出を憂慮するという指摘も提起されている。 ちょうど、2003年にヘッジファンドのソブリンがSKの企業支配構造を変えるという名分で経営権獲得に飛び込み、 結局相場差益だけを享受して出て行った時のように、 「株主資本主義 vs 国富流出」の論争が再現する兆しも見られる。

循環出資と財閥支配構造?

この問題の直接の原因は、財閥企業の循環出資にある。 サムスンを筆頭としてほとんどの財閥は、財閥企業どうしを連結させる循環出資により、 少ない株式で財閥を支配している。 現在、財閥企業が新しく循環出資することは禁止されているが、 既存の循環出資はそのまま容認されている。 問題は、既存の循環出資が財閥企業間の合併によりそのまま継承されるため、 李在鎔は一銭もかけずにサムスングループを支配する方法が生じている。

サムスン物産が重要なのは、サムスングループの支配構造の核心にあるサムスン電子の株式を持っているからだ。 李在鎔が筆頭株主である第一毛織がサムスン物産と合併すると、 サムスン物産のサムスン電子の持分を李在鎔が掌握することができる。 またサムスン物産はサムスンSDSの第2位の株主なので、サムスンSDSがサムスン電子と合併すればサムスン電子の持分率がさらに増える展望だ。 現代車グループの鄭義宣(チョン・ウィソン)副会長の三代世襲もこれと同じ合併方式で行われている。

しかしさらに根本的な問題は、財閥の企業支配構造再編の最終的な終着駅が何かという点だ。 財閥一家の支配を容認し、持ち株会社体制で整理することか? さもなくば李健煕一家が経営権から手を引き、米国式の専門経営者体制に転換することか? 現在の議論のとおりなら、どんな形態であれ財閥問題のジレンマは解決せずに続くほかはない。 問題の核心は、誰であろうが少数の株式で資産400兆のサムスングループを支配しているという問題だからだ。

株主資本主義、あるいは株主平等主義の実際の現実は、筆頭株主と第2、第3位の株主間の競争になるほかはない。 結局、株主平等主義は筆頭株主が独占している権利を第2、第3位の株主が権力を分けて行使するという要求、それ以上でも以下でもない。 その上、ほとんどの財閥企業の第2、第3位の株主は外国人資本が多く、 彼らはほとんどがヘッジファンドだ。 こうした現実を無視して株主資本主義に合わせて財閥支配構造が再編されても、 その方が民主的だと言えるような理由はない。

サムスン問題、また国民的な議論を集めろ?

李健煕一家が勝とうが、エリオットが勝とうが、あるいは互いに妥協しようが、 それは大資本家の紛争であり、国民の立場として考慮すべきことは別の問題だ。 李健煕一家が勝って「国富」を守ったとしても、その「国富」はすべて三代世襲に帰結する。 またエリオットが勝ち、サムスンが莫大な損害を被ったとしても、 サムスンが払うべき金はほとんどがエリオットのポケットに行くだけだ。 または妥協して利益を分けあうこともできる。 ソブリンとSKの経営権紛争で、ソブリンが7000億ウォンを食い逃げしただけでなく、 崔泰源(チェ・テウォン)一家も数千億ウォンの相場差益を得て、これにより極めて少ない株式でもSK全体を支配する軸をつかんだ。 今回の事態でも互いにウィン・ウィンになる可能性は非常に高い。

誰もがご存知の通り、サムスングループの循環出資の輪は非常に脆弱だ。 こうした状況での三代世襲は、支配構造をさらに脆弱にさせていて、 これによりサムスングループの無理があちこちで現れている。 この問題をどう整理すべきだろうか?

脆弱な財閥の支配構造を変えようとすれば、方法は一つや二つではない。 銀行よりも経済の支配力の方が大きい財閥企業に対する大株主適格性審査を導入すれば、 脱税と背任など犯罪歴がある李健煕会長は大株主の資格を失う。 また、金産分離原則を徹底して貫徹させれば、サムスン生命はサムスン電子を支配できない。 その上、保険業法に「他の金融機関のように保有株式算定を市場価格で計算する」という但し書きを付けただけで、 サムスン生命はすぐサムスン電子の株式を大量に売却しなければならない。 こうなると、李健煕一家のサムスングループに対する支配力は顕著に低くなる。

問題は、前にも話したように、その弱い輪を打って、どうするかだ。 ほとんどの人が、サムスンの産業的な一人占めに反感を持っていても大きな声をあげられない理由は、 彼らが稼ぐ途方もない収益のためだ。 結局、彼らのそうした経営能力を認めているので、せいぜいもっと税金を多く払えと注文したり、 社会還元次元の奨学財団の設立や新しい成長動力への投資と雇用をお願いする程度で終わる。

今回のサムスン物産事態は、李在鎔への3世継承の過程で大きくなった一つのエピソードでしかない。 どう絞り取っても、支配構造は李健煕の時よりさらに脆弱にならざるをえず、 それだけ経営の不安定性はさらに広がるだろう。 不況が深刻になっている状況で、財閥は路地商圏まで蚕食しながら利潤をあげているが、 賃金カット、雇用縮小、内需価額上昇、単価操作などで国民経済全体の次元で危機と不況をさらに深める役割を果たしている。 韓国経済の未来を李在鎔の手にすっかり任せる愚を冒してはいけない。 株主資本主義か、財閥体制かという狭い議論を超え、 財閥の社会化による国民経済の再編を議論し直すべき時だ。[チャムセサン研究所(準)]

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2015-06-16 03:55:05 / Last modified on 2015-06-16 03:55:06 Copyright: Default

関連記事キーワード



このフォルダのファイル一覧上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について