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韓国:水資源公社への民間委託は民営化ではない?(2)
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また押し寄せる災害、水私有化

[寄稿]水資源公社への民間委託は民営化ではない?(2)

イム・ボッキュン(全国公務員労組) 2010.11.05 09:17

無条件に地方上水道の統合運営を反対しようというのではない。だが地方の上 水道を統合運営するには、いくつかが前提にされなければならない。まず中央 と地方政府、政策担当者、さらに国民の水に対する認識と政策基調の転換が必 要だ。

水を資本の論理によって金儲けの手段と考えるのではなく、人間が生きるため に絶対に必要な公共の資産、つまり水はすなわち人権であり生命であるという 大前提が必要だ。水を金儲けの手段と認識して、国民の生命よりいくつかの世 界的な水企業の育成が重要だと判断することで、上水道民営化という災害を政 策的な基調に採択して進めてはならない。また、民間委託や民営化ではなく、 上水道の公共の所有と運営が前提にされなければならない。そうしてのみ、漏 水率改善事業、統合運営等で削減した費用を公・私企業ではなく、地域民に還 元することができ、水企業を育成するための画一的な統合ではなく、生活圏別、 水系別の特性を考慮した合理的な地方上水道運営管理方案が生まれる。

また、料金の現実化率に現れるように、現在、地方上水道は低価格の料金によ る赤字を地方自治体予算が保全している。人間が生きていくために絶対に必要 な公共の資産である水だけは、金持ちも貧乏人も、必要なだけ使えるように、 地方自治体が赤字部分を負担している。政府の計画のとおりに地方上水道が民 間委託を経て、世界的な水企業に渡されると、生産原価を保全するために料金 の値上げは不可避だ。さらに競争で生き残るには、多くの利益をあげなければ ならないという資本の属性を考慮すれば、10倍、20倍の値上げは決してむなし い主張ではない。

百歩譲って、政府の計画のとおりに世界的な水企業が育つとしても、これは国 民の生命を担保として水企業家を育てることでしかない。韓国が世界の水産業 に飛び込むということは、世界的な水企業のベオリアやスエズなどが韓国に進 出できるように水市場を開放することが前提だ。したがって、韓国の上水道は 水企業の戦場になるほかはない。

上水道は、ネットワーク産業としての特性上、地域内競争ではなく地域独占に ならざるをえない。つまり上水道の管路網が異なる大田市上水道と忠南、論山 の上水道が、水質や低価格の料金などサービス競争で競争力を確保することが できない構造なのである。電気や上水道のように電線や管路で地域独占体系が 形成されるネットワーク産業では、サービスや値下げ等で競争力を確保するの ではなく、値上げによる高収益を創出することだけが競争で生き残れるという 構造なのだ。

したがって、政府が育成しようとしている水専門企業が生き残るためには、料 金の値上げで営業利益を極大化させるほかはなく、水は他の消費財と違い人間 の生命と直結するので国民的な抵抗を呼び、莫大な社会的費用を払った後に世 界的な水企業は撤収するかもしれない。これはすでに南米などで国民の抵抗に あたり、多くの超国籍企業が撤収した事例からわかるように、杞憂ではなく現 実である。

さらに、政府が推進する世界的な水専門企業の育成は失敗する可能性が高い。 政府は中国、東南アジア、中東、アフリカなど、急成長する開発途上国の市場 で利益をあげるために世界的な水企業を育成するという。ところが世界的な水 企業を育成すれば、上下水道サービスが画期的に改善されるわけではない。一 例として、世界的な水企業があるフランスでは、水企業への国民の不満が非常 に高い。

また、委託期間が2-30年で長期契約なので、相対的に安く供給されている上水 道の特性上、民間委託による弊害は民間委託から5-10年後にならなければ本格 的に現れないが、すでにこの時は上水道関連の人的、物的財源の枯渇で回収は ほとんど不可能になり、水私有化が進み、それによる弊害をあじわった後に戻 すのは、私有化の前に防ぐより数十倍の努力と費用がかかる。

これは今の世代の誤りを次の世代、つまり子供たちに転嫁する行為と違わない。 2-30年後に民営化の弊害がはっきりあらわれても、その被害はその当時の民衆 がかぶらざるをえないのだ。

地方上水道の代案的運営方案

人権としての水基本権を確立するために、中央政府はもちろん、地方政府の認 識の転換が必要だ。水は人権だ。清潔な水を飲む権利、差別されず水を享有で きる権利は人間の基本権であり、人権としての水、水資源を保存して持続可能 に守っていくことは、人間の権利であり義務だ。国家と社会は水を清潔で安全 に国民すべてに供給する義務をはたさなければならないのだ。

地方政府もまた、中央政府の財政的圧迫を言い訳として民間委託を急ぐのでは なく、漏水率を向上させる設備投資に積極的に出るべきだ。忠南の市・郡の最 近数年間の予算書を見れば、漏水率を改善する予算配分はきわめて少ないこと がわかる。地方政府も中央政府だけを恨んだり、選挙のためのばらまき事業に 予算を偏重して編成するのでなく、全住民の健康と生命のために自らの予算を 老朽管路交換などに編成しなければならない。

また、上水道の全国的単一化と料金体制が必要だ。上水道事業は全国的単一化 を追求すべきであり、そのために中央政府次元での財政と管理・運営体系をま ず単一化しなければならない。これを通じて地方上水道次元で、行政区域別で はなく、生活圏や水路を考慮した運営と管理の統合、地方上水道と広域上水道 の連係と統合的管理などから推進しなければならない。これに基づいて、料金 体制も単一化しなければならない。ソウルや釜山が、江原や忠南より安く水を 供給されているのが現実だ。ソウルなどの大都市と江原、忠南などの農山村地 域が同じ料金で水を供給されるように公共性を前提とした中央政府次元での管 理・運営と財源調達計画を樹立しなければならない。

統合委託受託に参加する地方自治体に漏水率向上事業費を支援し、参加しない 地方自治体に上下水道関連補助金を削減するのでなく、財政が悪い地方自治体 には漏水率改善の事業費を優先して配分しなければならない。公的な投資と支 援を惜しんではならないのだ。政府や地方自治体が予算問題で、やむを得ず民 間委託をしなければならないと主張しているが、中央政府次元の予算支援と財 政統合で公的な投資と支援を拡大しなければ、地方の上水道問題を根本的に解 決することはできない。8つの世界的水企業育成と37000の雇用創出のために、 5千万国民の生命を放棄する愚を冒してはならない。

また地方自治団体長は、中央政府の誤った政策で地域住民を苦しめないように 積極的にならければならない。地方自治団体長と地域住民は互いに敵ではない。 地域民の健康と生命を守るのは、地域民を代表する自治団体長の義務だ。中央 政府と予算を理由に地域民から水に対する権利と生命を奪ってはならない。

中央政府の財政的圧迫に個別の自治体が耐えるには、多くの困難があることを 知っている。そうでなくても劣悪な地方自治体の財政を考えれば、補助金削減 などの中央政府の圧迫を言い訳として慢性的な財政赤字など、管理・運営に困 難が多い地方上水道をなくしたいだろうし、統合委託に参加すれば補助金など の財政的支援を拡大するという中央政府の甘い誘惑は、選出職の自治団体長や 地方議員にとっては良いエサである。

上水道民間委託の弊害は、5-10年後にならないと本格化しないので、4年後を準 備する政治家にとって5-10年後になって現れる弊害は、深刻な問題でない。む しろ、当面の財政的インセンティブとペナルティが現実的な問題である。その ため個別の自治体の対応ではなく、地方政府の共同対応が必要だ。全国で民間 委託を実施した自治体は、232団体のうち18しかない。今からでも遅くない。地 方政府、地方議会は地域民と共に誤った政府政策を直すために率先しなければ ならない。そのために全国の自治団体長と地方議員は、生命であり人権である 水の公共性を守る共同行動に出ることを要求する。

さらに、住民と関連労働者の参加と統制で、上水道産業の正しい発展方向を設 定し、社会的な統制のシステムを構築しなければならない。統合委託で世界的 な水企業を育成する土台を構築することに政策の中心をおくのでなく、人権で あり生命の水だけは、資本を肥やす金儲けの手段ではなく、誰もが安く水を享 有できるように、公共の資産として管理し、運営する方向へと政策を転換しな ければならない。公共分野で公的・社会的な所有構造は、公共性確保の最大の 前提だ。公的所有が前提にならない状態で、国家次元の規制機構が存在すると しても、商業主義的な運営を統制する方法はない。地方上水道の公共性を守る ために、関連労働者と地域民、そして地方自治体の共同の努力が必要だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-11-06 04:56:55 / Last modified on 2018-11-09 03:05:27 Copyright: Default

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