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韓国:仁川空港、外国資本の餌になるか
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せっかく育てた仁川空港、外国資本の餌になるか

仁川空港の民営化は競争力とサービスの質を落とす

ユン・ジヨン記者 2010.08.30 12:21

昨年8月、政府は公企業先進化方案によって仁川空港の民営化に着手した。世界 的なハブ空港にするには、先進的な運営技法を学ぶという主張だ。だが一部で は、仁川空港の民営化はむしろ世界的な競争力を持つ仁川空港のサービスの質 を落としかねないという批判が続いている。

世界が認めた仁川空港、なぜ民営化するのか

仁川空港は昨年一年間で2600億ウォンの黒字を記録し、今年の純利益は5000億 ウォンを越えると予想される。また5年間、世界1位の空港に選ばれ、乗換え客 数も500万人を越えている。これは、仁川空港が世界的に競争力を確保した証拠 だが、政府は民営化によるさらなる競争力確保を話している。

8月29日、MBC「時事マガジン2580」は、政府が推進する仁川空港の民営化が、 むしろ仁川空港の競争力を落とすと憂慮した。すでに仁川空港の優秀な経営が 世界に認められた状況で、『先進運営技法』を導入するというのは理解できな いという立場だ。

国土海洋部のキム・サンド課長は「時事マガジン2580」とのインタビューで、 「公企業の形態で100%政府が株式を持っているより民間が一定部分株式を持ち、 経営の統制やガイドができる形態のほうが望ましい」と説明した。

だが仁川空港の経営技法はすでに世界的に認められている。これまで仁川空港 の経営技法を学ぶために訪れた世界各国の航空関連者だけで4000人を越える。 また、イラクのアルビル空港とロシアのハバロフスク空港には、仁川空港の運 営技術が輸出された。

これについて釜山経済大のホン・ジャンピョ教授は「韓国の空港建設と運営技 法を海外に伝授するところを見つけるのが適当だ」と説明した。イ・ミョンシ ク仁川空港前監査委員も「来た人々は異口同音にわれわれのシステムをとても 羨んでいる」とし「成長している仁川空港を急いで売却すれば、安値で国庫が 流出する憂慮が高い」と説明した。

仁川空港の資産価値算定にも問題があった。仁川空港公社が委託した外国系の コンサルティング業者マッキンジーの報告書によれば、政府は持分の51%だけ 確保し、経営権を維持するとなっている。あとの49%の持分は民間に売却し、そ のうち30%までは外国人が所有できるようにしている。

特にマッキンジーの報告書には政府が49%の持分を売却し、3.6兆ウォンより高 く売却すれば、政府は利益をあげられると説明した。これは仁川空港の全資産 価値を7兆3000億ウォンと算定したものだが、多くの専門家はこれが仁川空港の 資産価値を十分に反映していないと見ている。

これに仁荷大学校のキム・テスン教授は、「現在仁川空港の資産が10兆内外と 言うが、これは額面の話」とし「だがその実質的な資産価額は10倍になるのか、 20倍になるのか、わからない」と主張した。仁川空港の潜在的価値が高まって おり、これを算術的に計算するのは難しいという説明だ。

釜山経済大学校のホン・ジャンピョ教授も「当面の収入売却代金のために今後 これほど莫大な財政収入源を放棄するのは、黄金の卵を産むガチョウの腹を切 るようなもの」と批判した。民営化が形成されれば、仁川空港の莫大な収益が 結局、外国人投資家のものになるということだ。

民営化、仁川空港競争力落とす

民営化によるサービスの質の下落と、これによる競争力下落の憂慮も提起され た。すでに海外の多くの空港が民営化し、こうした問題を表わしているためだ。 世界9位だったアテネ空港は民営化後、空港サービス評価が世界50位に落ちた。 シドニー空港も21位から81位に、スキポル空港も18位から55位に順位が落ちた。

特に民営化による値上げが競争力下落の主な原因になっている。民営化が推進 されれば、着陸料、ターミナル利用料など各種の空港施設利用料が上がり、こ れに伴い航空会社は乗客の航空料金を上げざるをえない。だから高価格な料金 はそのまま乗客の負担になる。

ソウル経済研究所のキム・ヨンボク博士は「(英国)ヒースロー空港が1987年に 民営化した後、航空料金が全体的に4倍程上がり、シドニー空港では民営化の過 程で民営化前より100%料金を上げた」と説明した。

政府は価額上昇の副作用について『サービス価格抑制政策』でこれを解消する と明らかにしたが、展望はそれほど明るくはなさそうだ。政府が人為的に価格 上昇を防ぐと、運営業者は収益をあげるためにサービス改善に資本を投資しな くなるからだ。これは自然に、空港サービスの質の下落につながる。

英国政府の場合、ヒースロー空港の民営化でサービス料金の値上げを抑制した。 すると運営業者は収益をあげるために空港拡張をはじめ、施設改善などに投資 しなくなった。ヒースロー空港の競争力が急落した最大の理由だ。その上、 2008年には手荷物施設がきちんと作動せず2万8000個のカバンが紛失し、一日平 均60便の航空機運航が取り消された。

一方、政府は仁川空港の滑走路と開発制限地域などは売却対象から除外する計 画だとし『金にならないことだけを政府が抱え込もうとするのか』という世論 の袋叩きにされた。免税店や旅客ターミナルなど最大の収入源だけを売却する ので、結局外国資本に国庫をそっくり捧げる形になるからだ。

仁荷大学校のキム・テスン教授は「収益性がない資産は政府が抱え込めという ことで、収益性がある可能性がある部分だけを残して、民営化しようという話」 と批判した。

8月6日、歌手の金Cがツイッターで『仁川空港が日本のANAに売られた』という うわさを伝えて問題になった。政府は『まだ売却対象は決定していない』と釈 明したが、仁川空港民営化に反対する世論はさらに沸き立った。9月に始まる定 期国会では、仁川国際空港公社法などの関連法改正案が上程される予定だ。ま た、政府は民営化計画を予定通り進めるという立場を固守している。世論の民 営化反対の世論が静まらない状況で、政府の民営化強行が成功するのかに関心 が集まっている。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-08-31 13:26:53 / Last modified on 2010-08-31 13:26:57 Copyright: Default

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