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韓国:[連続寄稿-売られる公共部門](1)減税効果と公共部門民営化
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減税が呼ぶ公企業売却と公共料金の値上げ

[連続寄稿-売られる公共部門](1)減税効果と公共部門民営化

ホン・ソンマン(進歩戦略会議運営委員)/ 2008年09月01日18時28分

経常赤字と財政黒字

9月1日、政府は2008年税制改編案を発表した。内容の前に、まず確認すべきこ とは財政黒字の規模が史上最大になる展望だという点だ。8月29日の企画財政部 の統合財政統計によれば、2008年6月までの統合財政収支(累計)は、21兆4000億 ウォンの黒字を記録したという。これは各種の年金などの社会保障性基金黒字 17兆7千億を除いても、3兆6千億以上の黒字で、昨年上半期の11兆3300億ウォン と比べて二倍近く増えている。財政黒字は多額の税金が集まったからだ。歳入 が主項目を占める経常収入は140兆程度で、昨年同時期の124兆ウォンより16兆 ウォン以上増えた。物価の上昇、特に燃料価格の値上げによる関税と税収増大 で税金が増えたという。これに伴い、今年末までに史上最大の財政黒字が予想 されている。

二番目に確認すべき事実は史上最大の経常赤字が発生している点だ。今年の初 め、10年ぶりに経常赤字が始まり、7月中には経常赤字は24億5千万ドルを記録 した。今年の累積赤字は78億ドルにのぼる。7月の資本収支も57億3千万ドルの 赤字を記録し、外国人の株式と債券の売りが殺到している。為替レートは政府 の介入にもかかわらず、今日9月1日に1100ウォン台を越えた。外国人投資家は 今年320億ドル以上の保有株式を売却したと推定される。

文字通り、財政は史上最大の黒字で、経常収支と資本収支は史上最大の赤字だ。 算数ができれば経常赤字を政府の財政で埋めなければならないという事実がわ かる。このように、減税政策の背景は金持ち同士の助け合いという点もあるが、 経常赤字を埋めるという理由もある。だがわれわれはここでいくつ疑問を感じ る。政府財政で赤字を埋めても、どのような方式でするのか、財政支援を誰に するのかという点だ。まず政府は減税というカードを持ち出した。

減税と景気浮揚

今回の税制改編は所得税、法人税、不動産税などの大幅な減免で、今後5年間に 25兆ウォン台の税金を値下げする大幅な減税を断行すると政府が発表した。こ れに伴い、年間20兆7千億ウォンの減税効果があるという。法人税が9兆2650億 ウォン、所得税5兆7670億ウォン、贈与税8840億ウォン、関税7千510億ウォン、 個別消費税6530億ウォン、その他3兆4260億ウォンと推定されている。

今回の政府の税制改編は、主に中産層以上の集団に対する税金減免効果を集中 させた。所得税の定率減税も問題だが、譲渡所得税課税基準を高め、相続贈与 税を大幅に下げた。さらに総合不動産税の負担も下げた。それと比べ、庶民や 自営業者への支援は、所得税の定率減税程度で終わった。このように、政府の 税制改編方案は、現在の財政黒字の方を『金持ち同士の助け合い』で、財閥と 金持ちに戻すということだ。

とりあえず減税の対象と効果をこのように集中させたのは他でもなく、投資と 消費振興だという。だがこうした方式での財政運営がどの程度投資と消費を呼 ぶかは非常に疑わしい。すでに100大企業の社内留保資金は500兆を越えている。 留保資金500兆から払う法人税9兆がさらに残り、509兆になっても、企業が投資 をするはずがない。

では消費は増えるだろうか? 韓国の個人向け融資の66%以上が住宅担保融資だ。 問題は、この住宅担保融資の元利金延滞が増え、利率も上がり続けていること だ。今回の税制改編で年間総給与が4千万ウォンの4人家族では、所得税は現行 の169万ウォンから来年は133万ウォン、2010年には115万ウォンと、今年と比べ て53万ウォン(31.7%)ほど減る。だが年初に7%台を行き来した利率が今は10%を 越えている。1億ウォンを融資すれば年間300万ウォンの追加利子を負担しなけ ればならない。さらに中小企業の54%が前の金融統委の利上げで不渡りの危機に 直面している。換言すれば、今回の改編は高くなった利子を相殺するほどの税 金減免効果にもならない。減税でできた金がどこに行くのかは自明だ。今回の 税制改編が庶民層の支援でなく『銀行支援方案』である理由もここにある。

減税、それ以上の政策が出てくる

さらに大きな問題は現在の経済状況がスタグフレーションに入った点だ。成長 は遅滞、縮小し、物価は上がり続けている。そもそも減税効果とやらがきかな い状況だ。為替レートと国外の条件を考慮すればさらに暗鬱だ。米国は今年に 入って2千600億ドルにのぼる減税と税金の払い戻しを断行した。それでも景気 がよくなる展望は全く見えていない。反面、米国は今年景気浮揚策による税金 の還付と経済成長の鈍化による税収の減少で2009年の財政赤字は4千820億ドル と史上最大を記録すると予想している。

現在の高い物価水準にもかかわらず、経済成長がさらに鈍化すれば言うまでも なく、税収が減少するだろう。政府は継続的な流動性供給の外に特別な対策を 出していない。減税しても効果が出なければ、次は税金の還付だ。そして直接 の現金補助を断行する可能性もある。経常収支は赤字で、財政支出の需要は増 加する態勢だ。資本市場の赤字もほとんどが政府の外貨準備高で埋められる形 になるだろう。ではその多額の金をどう確保するのだろうか?

米政府は消費の萎縮を憂慮して、この数十年間の経常赤字を財政で間に合わせ た。そのために途方もない財政赤字に苦しんだ。この財政赤字に耐えるため、 米国は世界基軸通貨のドルで赤字を埋めてきた。だが韓国政府がドルを刷るこ とはできないではないか? 財政がなければ海外で借りなければならない。しか しこれも難しい。9月危機説が主に外国人の投資資金回収と再投資の忌避で発生 しているという事実を念頭に置けば資本の借入れはさらに難しくなる。

結局、解決法は公企業の売却と公共料金の値上げになる。最近、民営化の方針 が確定した産業銀行一つとっても資産総額は145兆にのぼる。2012年まで段階的 に民営化を進めるというが、算術的に毎年30兆ウォンの収入が発生する。ここ に大宇造船海洋、現代建設など、公的資金投入企業の売却代金だけで数十兆に のぼる展望で、公的資金を回収してあまりある。このようにはっきり調べれば、 金はあふれ出てこないだろうか!

ここでこうした公共機関と公企業の民営化が公共性をいかに破壊するか、労働 者庶民の暮しがどう破壊されるのかという話はない。ただし指摘したい点は、 こうして売られれた公共部門のために、また物価が上がるという点だ。銀行の 民営化と超大型投資銀行の登場で、住宅担保融資の条件は緩和されて、簡単に 金を借りられるようになるかもしれない。だが、危険負担が大きいだけに利率 もまた上がり続ける。これ以上、政府の財政で支援を受けることができない公 企業は、やむをえず公共料金を上げなければならない。国内市場とは無関係な 為替レートはまた上がる。だが、成長は停滞する。それでも破局を防ぐために 政府は流動性資金の供給を続けなければならない。お金? 心配するな。また公 企業を売れば良いのだから。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2008-09-04 09:37:45 / Last modified on 2008-09-04 09:37:46 Copyright: Default

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