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韓国:最低賃金1万ウォン...雇用も創出し、低賃金もなくす
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世代対立? 最低賃金の「盗み」をなくせば解決

[最低賃金]最低賃金1万ウォン...雇用も創出し、低賃金もなくす

ユン・ジヨン記者 2015.06.05 17:14

#大学清掃労働者のユン・ミョンスン(68)氏。 12年前に初めて大学でほうきを持った瞬間から、彼女は最低賃金暮らしになってしまった。 5年前に労組を結成し、毎年賃上げを引き出した。 だが最低賃金より970ウォンほど高い時給では、味気ない人生を変えらられなかった。 ユン氏は夫を扶養しなければならなかった。 ユン氏が稼いだ140万ウォンほどの月給は、夫婦の1か月の生活費だ。 「お小遣年金」に転落した国民年金は毎月17万ウォンが支払われる。 月17万ウォンに老夫婦の老後を任せることはできなかった。 自然に夫婦の老後は、ユン氏が稼ぐ最低賃金にかかっている。

#大学生のチョ某(21)氏は、フランチャイズのパン屋で働くアルバイト労働者だ。 一学期に300万ウォン以上の登録金と生活費まで儲がなければならないのでアルバイトをやめられない。 昨年は金を稼ぐために休学を選択した。 卒業でかるのか、途方に暮れるばかりだ。 最近は授業を併行しながら、一週間に三日間パン屋でアルバイトをしている。 11か月間、最低賃金を受け取ってきたが、6月に入ると時給が5700ウォンに上がった。 月給を受け取ると30万ウォンは登録金のために貯蓄し、25万ウォンは生活費に使う。 一学期100万ウォンの国家奨学金を受け取っているが、 あとの250万ウォンはそのままチョ氏が負担しなければならない。 6か月間、休まず貯めなければならない学期登録金にもならない。 彼女にとって、就職準備より重要なことは当面の登録金と生活費をどう充当するかだ。

最低賃金の「盗み」さえなくなれば、世代対立がなくなる?

最近、文亨杓(ムン・ヒョンピョ)保健福祉部長官が国民年金所得代替率引き上げの要求を「世代間の盗み」に比喩して議論を呼んだ。 大統領と政府も雇用をめぐり、世代間の戦いをあおった。 朴槿恵(パク・クネ)大統領は5月26日の閣僚会議で 「今、私たちに必要なのは既成の世代が既得権を少し譲歩しても、息子や娘に希望をあたえる天命意識」だと強調した。 崔炅煥(チェ・ギョンファン)副総理兼企画財政相も経済紙とのインタビューで 「お父さんが定年を延長し、さらに1~2年会社に行ってもっと月給を取ることが重要なのか、 あるいは息子や娘が就職する方が重要なのか」と問いかけて戦いの火種をつけた。 「青年失業」を担保に賃金ピーク制、低成果者解雇制度もなどを骨子とする労働市場構造改悪が推進され、 「老後の年金」は世代利己主義に置き換えられた。

果たして政府の言葉のとおり、職場からおい出された既成世代が「お小遣年金」と最低賃金で粗悪な暮らしをすることが、青年世代の人生を豊かにすることだろうか? 昨年8月、経済活動人口調査の付加調査によれば、最低賃金の受恵者は約121万人と集計された。 皮肉にも「低賃金」の果ての最低賃金影響圏に一番密接な年齢帯は、青年層と老年層だった。 最低賃金の影響率は34歳以下の青年世代(19.2%)で一番大きく、 55歳以上の高齢世代(12.2%)がその後に続いた。 その上、青年および老年層は最低賃金も受け取れないことが多かった。 昨年8月基準の最低賃金未達者は227万人だ。 年齢別の最低賃金未達者の割合は、青年が28.1%、高齢者が29.5%で一番高かった。 世代間の茶碗戦いどころか、青年と老年層がどちらも社会的弱者に追いやられているのだ。

[出処:労働と世界ピョン・ベクソン記者]

では、政府の主張のとおりに良質の正規職雇用は既成世代の専有物なのだろうか? 実際に正規職青年層の割合は日々減少している。 韓国非正規労働センターが統計庁経済活動人口調査の付加調査を分析した資料によれば、 2001年の正規職のうち20代の青年の割合は27.1%だったが、昨年8月には17.5%まで低下した。 この14年間、正規職のうち青年の割合は10%ほど減少したわけだ。 問題は、壮年層も非正規職の低賃金雇用に追いやられているという点だ。 雇用労働部傘下機関の韓国雇用情報院が今年1月に発表した「雇用動向ブリーフ」によれば、 非正規職のうち、50歳から54歳の壮年層の割合は2007年の9.3%から2014年には10.9%に増えた。 非正規職の50歳~54歳の割合も2007年に対して2.6%上昇した。

正規職と非正規職の賃金格差も開いており、不安な雇用と低い賃金が広がっている。 韓国雇用情報院は、「非正規職の規模において各年齢帯が占める割合は、 全般的に過去より高年齢階層に移動している」とし 「55歳以上の壮年層が非正規職に占める割合は毎年一貫して増加している様相」と説明した。 2014年8月基準で非正規職の割合が一番低い世代は30代(30.5%)だ。 20代のうち、非正規職は47.2%、40代は38.8%、50代は49.5%、60代は79.7%に達する。 20代で非正規職雇用になった青年は非正規職に固定化され、30代の正規職も40代に入ると非正規職雇用に追い出されているという傾向だ。

最低賃金1万ウォン...雇用も創出し、低賃金もなくす

質が悪い非正規職雇用に追い出された労働者たちは、また低賃金で泣く。 最低賃金の引き上げを要求すれば、財界はいつも「雇用」問題を口にする。 最低賃金制度がすでに最低生計保障という政策目標を達成しており、 最低賃金が上げられると企業の大量解雇や倒産の恐れがあるという主張だ。 だが労働者たちは、もう財界の話を信じることができない。 アルバイト青年労働者のチョ某氏は 「もうこれ以上『企業が栄えれば国が栄える』というスローガンを信じない。 いつも政府と企業は労働者賃金の削減を一番簡単な労働柔軟化方式で活用してきた」とし 「中小零細商人の倒産問題は、最低賃金のためではない。 高すぎる賃貸料やフランチャイズ業者の過度なロイヤリティー問題をまず解決しなければならないのではないか」と反問した。

特に労働界は、最低賃金が上がると低賃金の問題と雇用創出を同視し、解決できると強調している。 民主労総のオ・ミンギュ未組織非正規戦略室長は、6月4日に開かれた最低賃金労働者集談会で 「最低賃金が雇用安定を阻害するという研究があることは知っているが、 事実、統計的に意味のない数値でしかない」とし 「むしろ最低賃金が上がると残業、特別勤務をしなくても良くなり、その場に青年雇用が生まれる。 これまでの労働者に手当てを付けるより、新規入社者を雇用する方が会社としても利益になる。 最低賃金を上げることで、労働時間短縮と青年雇用拡大を同時に狙える」と説明した。

実際に最低賃金労働者たちは、生計のために長時間労働に苦しんでいる。 集談会に参加したソウル高速道路料金所労働者のキム・オクチュ(46)氏は、 まだ未成年の二人の息子を一人で育てている。 時給は最低賃金よりやっと200ウォン多いだけだ。 キム氏は「月給が少なくいので残業しなければならない。 毎日16時間以上、昼も夜も働く。 最低賃金が1万ウォンになれば残業をする必要がない。 この場に労働者を雇用すれば、雇用も創出できる」と説明した。

最低賃金が上がっても、これを遵守しなければ空しいスローガンになってしまう。 すでに多くの労働者が事業主の小細工で最低賃金も受け取れない。 学校の住み込み運転手のオ・ハンソン(75)氏は毎日午後4時30分から翌日午前8時30分まで16時間の労働をする。 だが学校側はそのうち5.5時間に該当する賃金しか支払わない。 オ氏は「それでも労働者たちが勤労基準法を要求するのは容易ではない。 解雇の危険があるからだ」と説明した。 タクシー運転手出身のイ・サムョン(53)氏も 「2010年7月1日からタクシー労働者にも最低賃金法が適用され、 事業主が所定勤労時間を4時間まで減らしてしまった。 浦項の場合、所定の勤労時間は2時間だ。 一日13万ウォンの社納金は変わらない」と声を高めた。

キム・オクチュ氏の場合、賃金は上がったが賃金総額は上がらなかった。 事業主が賃金が上がっただけ手当てを削減するという小細工を働かせていたためだ。 キム氏は「毎年月給が上がるが、それだけ手当てから除外される。 通帳に入金される賃金総額はいつも変わらない」と説明した。 大学生のチョ氏は昨年デパートでアルバイトをして時給5千ウォンを受けた。 最低賃金にも達しない賃金だ。 その上、不当解雇までされた。 幸いチョ氏はアルバイト労組を通じ、不払い賃金を取り戻した。 だが最低賃金違反の事業主を罰するのは至難のわざだ。 昨年、雇用労働部が摘発した最低賃金法違反件数は6414件にのぼる。 だがそのうち事業主が司法処理された事例は16件(0.25%)に過ぎない。 過怠金処分を受けたケースも2件(0.03%)しかなかった。 全摘発事例のうち99.7%が単純な是正指示で終わる。

一方、民主労総をはじめとする労働市民社会陣営は、 最低賃金1万ウォン引き上げを要求して、対政府闘争を続けている。 最低賃金委員会は6月4日に第三回全員会議を開き、本格的な最低賃金の審議を始めた。 委員会は毎週木曜に全員会議を開き、6月29日までに最終引上げ案を議決する計画だ。 アルバイト労働者のチョ氏は 「最低賃金1万ウォンへの値上げには期待が強い。 1万ウォンに上がれば、学生食堂で思いきり白いご飯を食べたい。 1か月に一度は映画もちゃんと見たい」と話した。 キム・オクチュ氏も「最低賃金1万ウォンになれば、 少なくとも暮らしは良くなりそうだ」とし 「その時になれば、(家計簿に)子供たちのお小遣の名目を入れて、 毎月子供たちに小遣をやりたい」と明らかにした。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2015-06-08 15:08:31 / Last modified on 2015-06-08 15:08:32 Copyright: Default

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