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韓国:出国前のアノアル前移住労組委員長
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「場所を移すだけです」

[インタビュー]出国前のアノアル前移住労組委員長

移住労働者放送局 migrantsinkorea.net / 2007年07月24日15時25分

▲7月21日に会ったアノアル移住労組前委員長

7月21日午後、出国を5日後に控えたアノアル同志と移住労働者放送局事務室で 会った。

一か月前、放送録音を依頼されて初めて放送局にきた時も『もうすぐ国に帰る ことになった』と話していたが、その言葉を信じなかった。そして移住労働者 放送局の新しい録音室で『アノアルの世の中を見る』という番組の第一回放送 を録音していた。

一年間、保護所で生活した後遺症で『ちょっと複雑なことを考えると頭が痛い』 と話していた。まだ夜にぐっすり眠れないとも言っていた。11年間韓国で働き、 移住労働者の権利のために闘争をしてきたアノアル同志。一年間の保護所生活 で得た精神的ストレスと憂鬱症で、相変らず努力の一日一日を送っているが、 韓国政府は彼のビザを延長しなかった。

そして今回、国に帰らなければ、さらに『大きなこと』をされると脅迫された と言う。そして労働組合をはじめとする市民団体も『国に返すこと』を決め、 今日22日の午後、アノアル同志の歓送式を開く。

法務部は、一人の移住労働者活動家を一年間保護所に閉じ込め、精神病にさせ た後、きちんと治療もせずに今出国させようとしている。そして市民団体もそ の事情をはっきり分かりながら、そうした現実の前に抗議もせずに彼を送り返 そうとしている。

結局彼は先週の月曜日、『26日の飛行機のチケットを買った』と話した。そして 市民団体が用意した歓送式を一日後に控えて彼と会った。

なぜ国に帰る決定をしたのですか?

いろいろ難しい状況を考えて決めました。家、健康、ビザ問題などです。

健康状態はどうですか?

記憶力がゼロです。少し考えただけでもとても頭が痛くなります。気持が落ち 着かず、睡眠がよくとれません。月曜日にはまた病院に薬をもらいに行かなけ ればなりません。

医師はどう言っていますか?

薬を飲み続け、気を遣わないようにといいます。安心して暮らさなければなら ないといいます。着実に薬を飲まなければならないといいます。簡単には健康 が良くならないと、気持を楽に持って、楽しく過ごさなければならないといい ました。

(前に医師が薬を飲んでも気持が落ち着かなければ、薬はあまり効果がないと いったと言う。)

医師との相談はどれくらいしていますか?

1か月に一回ずつです。

家の問題を聞いてもいいですか? お父さんがの具合いがとても悪いそうですが。

そのためだけではありません。別の理由もあります。個人的な理由です。

長い間、移住労働者運動をして、明洞聖堂座り込み闘争の時もシャマル団長が拉致された時も、座り込み闘争団長をしていました。移住労働者労働組合の初代委員長として一年間保護所で闘争し、結局一時保護解除で出てきたのは移住労働者運動にとても象徴的な意味があります。このようにして国から出て行く気持は?

つらくて放棄するのではありません。違う場所に行って活動を続けるでしょう。 『場所を移す』だけです。前向きに考えたいです。

これまで移住労働者運動をしてきて多くの経験をしました。労組に関心を持っ ている組合員や活動家がいて、労働組合はうまくいくだろうと思っています。

移住労組が直面している最も大きな問題は何だと考えますか?

韓国社会が移住労働者労働組合を認めないことです。移住労働者に対する韓国 社会の認識を変える事だと考えます。運動は、韓国社会の認識を変えるのです。

移住労働者が結婚して暮せる段階ではないと考えます。今は幸福かもしれませ んが、(結婚をしても引続き)移住労働者の状況を変える計画があればいいと思 います。

何よりも人として労働者として暮す権利、文化を伝え、差別のない平等な世の 中を夢見ることが運動の目的です。

これまでの移住労働者運動を通して、韓国社会が移住労働者をさらに多く知るよ うになったし、さまざまな文化に対して関心も多くなりました。

一般の人々の認識が変わったと考えますか?

それは社会組織がもっと頑張るべき問題だと考えます。一日で社会認識が変わ るものではありませんから。でも、労組はぜひ必要だと考えます。

もし、ビザなどの韓国のさまざまな状況が悪くなければ、また戻る約束がない状態で故郷へ帰る決定をしないという可能性はありませんか?

どんな組織でも、ひとりに期待することは良くないと思います。うまく行って いる組織なら、長い観点で次の世代(generation)のために一段階ずつ進まなけ ればならないと考えます。私は移住労働者労働組合が今『安定した』と思って います。責任をとって前に立って労組を率いることは容易なことではありませ ん。そのような責任を引き受け、立ち向かう人々がいてうれしいと思います。 私がいなくても関心を持っている人々、決意を持っている組合員がうまくやっ ていけると信じています。『私だけが最後まで責任を負って行く』という考え は組織をさらに疲れさせます。

移住労働者労働組合も今ではアジア次元の国際連帯が必要です。韓国で働いて 国に帰った人々を再度組織化する仕事をしたいです。そのことを私がする時期 だと考えます。

組合員の責任を負って行くことは容易なことではありません。自身の個人の人 生を犠牲にすることです。

国に帰れば一方では長い間会えなかった家族と会えるようになりますが、うれしくありませんか?

まだ出かける準備も整わず、とても不安です。知りあいの人たちに(私が出か けると)あまり知らせていません。帰ることになって言うべき言葉がありません。

会えなくなる組合員への言葉はありますか?

これまでとても私を愛してくれ、一緒にしてくれ、思ったよりとても残念がっ てくれる仲間たちに申し訳ない気持です。労働組合の掲示板で、組合員の仲間 たちに手紙を書こうと思います。仲間たち、これまでご苦労さま。私を覚えて くれている人は、労組に残って移住労組を助けてくれればうれしいです。

韓国社会に言いたいことは?

多くの人が連帯してほしい。『韓国社会で、移住労働者どう暮すべきか』とい うことを知らせ、移住労働者の権利を取り戻すために連帯してくれるみなさん、 ありがとう。闘争に勝利する、労働者として暮せる時代がくるまで、多くの連 帯と支持をお願いします。

つらい時、苦しい時、活動家に力を貸し、取りまとめてください。頑張れる ように助けてください。活動をあきらめなければ、いつかは会えると思います。

移住労働者放送局に言いたいことはありますか?

大きな役割を果たしていると考えます。私たちが伝えられない現実を、放送で 知らせる機会ができました。全世界に知らせ、たくさんのものを受けられるよ うに、支援してください。放送はいつも『力』があります。永く永く良い仕事 をしてください。

▲二週前「アノアルの世の中を見る」で初放送をしたアノアル前委員長が録音室にまた座った。

(チョンミンソン記者)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンス:営利利用不可・改変許容仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2007-07-28 10:08:37 / Last modified on 2007-07-28 10:08:38 Copyright: Default

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