乙と乙の涙
移住労働者の死とセリ田小作農民
ヨン・ソンノク記者 2015.02.11 11:40
2月5日、蔚山蔚州郡青良面のあるセリ田で働いていたネパール移住労働者が自ら命を絶った。
移住労働者を雇った社長は、土地を借りて栽培する小作農民だ。
小作農社長は低い単価でセリ田農作業を続けるかどうか悩む。
単価400ウォンのセリ一束は、消費者の買い物カゴには1400ウォンで入る。
セリ田で働いたネパール移住労働者の死
腰までつかって働き、湿疹
病院で診療を受けたが医師の言葉が信じられず故郷に帰りたい
2月5日午前8時50分頃、蔚州郡青良面ヨンジ村のあるセリ田農場で働いていたネパール移住労働者が首をくくって死んだ。
亡くなったネパール移住労働者ライ・ザア・グマル氏(35)は、働いてかかった湿疹に悩み、
これを重病だと誤解して身辺を悲観していたが、
作業場のすぐ裏にある40mの送電塔の一番上に上がり自ら命を絶った。
▲蔚州郡青良面にあるセリ田[出処:蔚山ジャーナル ヨン・ソンノク記者]
グマル氏は腰まで水につかるセリ田で働いていた。
セリ田農場は11月から4月までの真冬に水の中で一日12時間作業するので、股に湿疹ができる。
亡くなったグマル氏はこれをエイズだと思った。
農場主はグマルのために大きな病院でエイズ検査までした。
単純な湿疹なので、医師の処方のとおりに薬を塗れば良くなるといったが、
グマルは故国に帰って正確に病気を確認しようとした。
農場主は2月16日のネパール行飛行機を予約し、彼の帰国を助けた。
農場主はグマルが亡くなる前日に賃金も払った。
事故当日の朝、グマルが送電塔に上がるのを他のネパール移住労働者が止めたが、
誰も送電塔に上がって彼を引き下ろすことはできなかった。
送電塔には高圧電気が流れていた。
救助隊と警察が出動したが、韓電職員が到着して死体を収容した。
▲蔚州郡青良面ヨンジ村セリ田[出処:蔚山ジャーナル ヨン・ソンノク記者]
共に働いていた同僚と農場主は当惑した。
警察は鬱病やホームシックと推測した。
蔚州警察署はグマルの病院診療記録と医師の診断、月給通帳などを確認したが、
農場主の苛酷な行為は発見できなかった。
遺体は火葬せずにネパールまで運ぶ。
運送料はネパール政府が負担する。
韓国は自殺すれば国家から何の保護も受けられないが、ネパールは移住労働者が自殺しても運送料はもちろん、国家が家族に慰労金まで支払う。
遺体運送料はウォン換算で500〜600万ウォン、家族の慰労金は800万ウォンだ。
遺体を安置する6〜7日間の医療費は農場主が払うことにした。
グマルの死に驚いた農場主は、家族に別途の慰労金を渡すことにした。
駐韓ネパール大使館の担当者は2月7日午後に事故現場を訪れ、経緯を聞いて遺体引渡の手続きを取った。
8日の午後には京畿道のある工場で働いているグマルの実兄も現場に来た。
亡くなったグマルはネパールに妻と子供3人がある。
グマルは金を稼ごうと韓国語を学び、ようやく韓国に農業研修生としてきた。
せり一束400ウォンなら、掘ることもせず耕し返す
若い韓国人1人もなく70代の老人だけが働き手
移住労働者をもっと使いたくてもとても不足な人員市場
不法労働者を使ったとして記者を詐称した詐欺師に金まで取られる
蔚州郡西生面一帯のセリ田には、ひとつの農場で25人が働く。
移住労働者は6人程度だ。
移住労働者は水が張られた田に入り、セリを根元から掘り出して洗う。
ビニールハウスでセリを手入れして包むのは、ほとんど70代のおばあさんの役割だ。
▲蔚州郡西生面にあるセリ田農場作業場[出処:蔚山ジャーナル ヨン・ソンノク記者]
土地を借りてセリ農作業をするA氏は、20年間セリ農作業をしているが、いつやめるかわからない。
それだけ働く人を見つけるのが難しく、収支勘定が合わないからだ。
セリの販売価格は20年前とほとんど差がない。
「おばあさん」が小遣稼ぎに来るが、労働者は見つけるのも難しい。
セリを掘る作業には移住労働者を使う。
主に70代のおばあさんたちは一日8時間働いて一人4万2千ウォンを受け取る。
農村移住労働者は3年の許可でくる。
彼らには最低賃金を支払う。
農業ビザで入ってくる移住労働者は、数が限られている。
労働者がいなければ時には不法滞留労働者を採用するが、
それさえ見つけるのは難しい。
移住労働者を採用するために、農家は地域雇用支援センターにまず内国人就業者を申請する。
内国人申請者がいなければ14日後に外国人労働者を申請する。
産業人員公団や農業中央会を代行業者に選定した後、
外国人標準勤労契約書作成代行費として1人当り36万5000ウォンを納付する。
標準勤労契約書作成後、70〜80日が過ぎれば外国人労働者を紹介される。
A氏は二か月前に記者を詐称する詐欺師に騙された。
某報道機関の記者だと言って訪ねてきた詐欺師は、この農場に不法滞留労働者雇用申告があったので調査に来る予定だとし、もみ消しの代価を要求した。
A氏は詐欺師に30万ウォンを渡した。
A氏はなんとなく気まずくて記者協会に電話したところ、登録された記者ではないという答を聞いた。
警察に申告したかったが、しばらく不法滞留労働者を使っていたのが気になり、申告もできなかった。
農業直払い制も問題だ。
土地を持たない小作農のA氏は賃貸契約書を書かなければ恩恵が受けられないが、
地主は自分が直払い制の恩恵を受けるために賃貸契約書の作成を敬遠する。
契約書がなければ雇用労働部を通じた移住労働者も使用できない。
幸いA氏は地主と賃貸契約書を書いたが、周囲に賃貸契約書のために頭を痛める小作農が多い。
A氏が農協を通じ、ソウル市可楽洞の農水産物市場にセリを売ると一束で400ウォンを受ける。
400ウォンのセリは消費者には1200ウォン以上で売れる。
生産者と消費者の間に大型流通業者が入り、さらに多くの流通マージンを取る。
A氏がセリ50束を2万ウォンで売れば、車に積む費用が308ウォン、
運送料2500ウォンを払い、可楽洞農水産物市場に販売手数料4%を、
農協にも手数料0.5%を払う。
ここから人件費、資材費、土地賃貸料を取れば何も残らない。
それでも続けるのは、盆暮れの名節特需の時に突然値段が上がり、50束の価格が2万ウォンから7万ウォン以上に暴騰する時があるからだ。
この暴投がなければセリ田を掘り返す。
A氏は土地を持たない農夫のための農政を期待している。
農業を放棄した韓国農業政策の現住所
蔚山だけで124人が一日12時間労働
国内の農畜産業に移住労働者が入ってきたのは2003年からだ。
政府は農村の高齢化で労働力の空白ができ、農業部門産業研修制を導入した。
初年度は923人が外国人農業研修生として入ってきて、2004年に雇用許可制に変わって農畜産業分野雇用許可クォーター制ができた。
農畜産分野での移住労働者は2007年には3600人、2014年には6000人が配分された。
雇用労働部は2012年までは、事業主に先着順で移住労働者を雇用する機会を与えた。
農畜産業の事業主は、移住労働者雇用許可書を受け取るため、雇用センターの前で長時間待機した。
2013年からは評価指標による点数制に変えて移住労働者を配分している。
だが農村の労働力は不足で、移住労働者雇用の需要は高く、人員は足りない。
▲蔚州郡青良面と西生面のセリ田には多くの移住労働者が零下の寒さの中、水に入って朝6時から晩6時まで働く。[出処:蔚山ジャーナル ヨン・ソンノク記者]
法務部の統計を見ると蔚山には2014年12月に2万5885人の外国人が登録されていて、
そのうち農業部門の従事者は142人と申告されている。
2013年、国家人権委員会が農業分野産業研修生の実態調査をした。
調査の内容によれば、農業分野の産業研修生の宿舎はビニールハウスやコンテナなど、
仮設建物の形態が67.7%にのぼる。
雇い主から暴言(75.8%)や暴行(14.9%)を受け、女性は性暴力を受けた例は30.8%にもなった。
移住労働者が雇用主の負担で病院での治療を受けたケースは18.5%に過ぎなかった。
病気にかかり病院に行きたかったのに行けなかったという応答は43.5%だった。
病院に行けない理由は費用のため(57.1%)、時間がない(54.3%)、雇用主が認めない(18.6%)だった。
「労働災害補償保険法」は、原則的にすべての事業場の使用者に保険加入を義務化している。
だが施行令は「農業、林業、漁業および狩猟業のうち、法人ではない個人の事業で常時勤労者数が5人未満の事業」を適用対象から除外させた。
例外として事業主の申請により勤労福祉公団の承認を受けた場合には任意で加入できるが、
雇用主が労災保険に加入するケースは殆どない。
移住労働者の健康保険加入率は27.3%だ(国家人権委2013年実態調査)。
これは製造業を含む移住労働者全体の健康保険加入率70%(2009年12月末基準)と比べ、はるかに低い。
移住労働者と小作農民の間で、誰が甲なのだろうか。
流通市場を握る大企業も、土地を貸す地主でもない。
農業を生かすことができない政府の農業政策と社会構造を変えられない社会構成員全体が甲だ。
原文(チャムセサン)
翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可( 仮訳 )に従います。
Created byStaff.
Created on 2015-02-12 15:15:27 / Last modified on 2015-02-12 15:15:29 Copyright:
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