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韓国:無差別「サイバー査察」、押収捜索と監聴乱発
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カカオトーク、バンドなどの無差別「サイバー査察」、押収捜索と監聴乱発

[サイバー査察討論会]当事者は押収捜索情報を知らされず、個人情報自己決定権無力化

ユン・ジヨン記者 2014.10.15 15:49

チョン・ジヌ労働党副代表のカカオトークを検察が押収捜索し、 3千人にのぼる個人情報とメッセンジャーの対話などを査察した事実が伝えられ、 公権力のサイバー査察議論が拡大している。 批判の世論が広がって、10月13日、ダウム・カカオのイ・ソグ代表と黄教安(ファン・ギョアン)法務部長官が謝罪したが、 全国民的な不安感は静まらない。

特に、以前にもカカオトーク、バンドなどのサイバー上での公権力の無分別な査察が行われているという事実が追加で公開され、 憂慮はさらに高まっている。 民主弁護士会と非正規職ない世の中作り、人権団体連席会議、進歩ネットワークセンターなど8つの人権、法律団体は、 10月15日午前10時にソウル征東フランシスコ教育会館で記者会見と緊急討論会を開き、 サイバー政治査察対応方法を議論した。

カカオトーク、バンドなど無差別「サイバー査察」、押収捜索と監聴あふれる

チョン・ジヌ副代表に対するカカオトーク押収捜索の議論の前にも、 警察のサイバー査察は無分別に行われてきた。 検察・警察は昨年12月、鉄道労組ストライキの時に民主労総指導部のカカオトークとネイバーバンドのアカウントの押収捜索を断行した。 押収捜索の対象と範囲は、 ヤン・ソンユン民主労総首席副委員長、ユ・ギス事務総長、イ・サンジン副委員長などが2013年12月19日から25日の間に利用したカカオトークの対話内容とネイバーバンドの対話内容だ。

ヤン・ソンユン首席副委員長は 「捜査当局は、鉄道指導部の動線を把握する情報を集めるために、 指導部3人のカカオトークとバンドを押収捜索した」とし 「誰でも起きると考える。 押収捜索以後、自ら検閲をするようになって、 別の被害者が生じかねないという憂慮によりSNSをしていない。 まるで公権力の前で裸になったような気持ち」と説明した。

警察は当時、ストライキに参加した鉄道労組組合員にもカカオトークのメッセンジャー内容とネイバーバンドの内容、 対話相手の情報と送受信内訳などを無差別に押収捜索した。 警察は被害者のパク・セジュン組合員のネイバーバンドと、 バンドの対話相手の加入者情報、送受信内訳、カカオトークの対話内容などの押収捜索執行を通知した。

特に9月の警察の押収捜索執行処理結果通知によれば、 警察はパク組合員がバンドに加入した時点から2013年12月までの期間の内容をすべて査察した。 パク組合員が加入しているバンドは、 鉄道労組関連の集まりが5つ、市民社会関連団体の会が2つで、 さらに家族の集まりと2つの親睦の集まりもあった。

パク組合員は「9月に通知された警察の資料を見れば、 バンド加入時点から2013年末まで、すべての内容が押収捜索された」とし 「鉄道ストライキが合法か不法かはまだ裁判中なのに、 それでも捜査当局は一方的に不法と規定して、 組合員と幹部の疎通空間をすべてのぞき見た」と声を高めた。

続いて「私とバンドでつながっている人々は800人程度だった。 彼らも潜在的な捜査の対象者だ。 親睦バンドには一面識もない500人の人が加入しているので、 私のおかげで加入者情報が捜査当局に渡るのはおかしい。 こんな状況がもたらす効果は、自己検閲をすること」とし 「もし親睦を結んでいる人々がこれを知れば、 自己検閲をするだろうし、その空間は死んだ空間になる」と批判した。

労働党のチョン・ジヌ副代表カカオトークの押収捜索過程でも、 政党活動、社会運動、家族や知人との対話、親睦企図など、 数十のチャット部屋に含まれる3千人の対話内容とIDおよび電話番号、 受発信内訳、イメージファイルなどがすべて押収の対象になった。

市民のイ・ヨサン氏は 「市民500人が集まって、さまざまな知らせを共有する団体チャットルームがあって、 誰かがチョン・ジヌ副代表を招いた。 チョン副代表はこの部屋で一回ほど文を書き込んだが、 警察は500人の情報をすべて持って行ったということに驚いた」とし 「ダウム・カカオが何の検討もせず、 一般市民の情報を出したことに人権侵害の要素がないのかをはじめ、 すべての被害補償と再発防止対策などを要求する」と明らかにした。

押収捜索、監聴の法的区分は曖昧に...押収捜索要件の強化を要求
当事者は押収捜索の情報が分からず、個人情報の自己決定権が無力化

ダウム・カカオ側が明らかにした資料によれば、 会社を相手とする捜査機関の押収捜索令状の要請件数は2013年上半期の983件から、 下半期には1693件と大幅に増えた。 2014年には上半期だけで何と2131件の押収捜索要請があった。 このうち、会社が捜査に協力する割合は約77~88%程度だ。 また、捜査機関が会社に収監令状で要請した情報は、 2013年上半期に36件、下半期に50件、今年上半期には61件に増えた。 処理率は91~95%程度で高いほうだ。

今回の事態以後、ダウム・カカオ側は捜査機関の監聴要請は拒否するが、 押収捜索には応じるという立場を明らかにした。 だが問題は、監聴と押収捜索の境界が曖昧になったという点だ。 すでにカカオトークは147件の収監令状を受けて執行に協力したが、 それは対話をリアルタイムで収集する「監聴」方式ではなく、 数日分の対話内容を集めて捜査機関に提供する方式だったことが分かった。

西江大法学専門大学院のイ・ホジュン教授は 「対話の内容がサーバーに保存され、一週間後に事後的に情報を提供したとすれば監聴ではなく、事実上の押収捜索で法違反になる」とし 「メッセンジャーサービスが発展し、監聴と押収捜索の区別が曖昧になっている状況で、 法制度的に監聴と押収捜索を区別するのが正しいのか疑問を感じる。 押収捜索を監聴に準じる要件に強化する必要がある」と強調した。

刑事訴訟法では、被疑者または弁護人が、押収捜索令状の執行に参加する権利が保障されているが、 慣行的にこれを無視してきたことも問題だ。 チョン・ジヌ副代表の場合、押収捜索の対象になったチャットルームと対話内容、 知人の情報がどのようなものか、今まで全く通報を受け取っていない。 チョン副代表は「当事者は、押収捜索の過程で防御権がない。 警察が保管している原本が署でどう利用されているのか、 どんな方式で内部照会ができるのかも確認できない」とし 「この情報がもうひとつの情報機関に再転送され、まったくビッグデータのように作られる可能性もある」と強調した。

イ・ホジュン教授も 「私のどんな情報を、どう保管して、誰に提供するのかさえわからない状況だ。 私的な内容、政党活動内容、個人のクレジットカード暗証番号などの敏感な対話内容も持って行かれるが、 直接の当事者は全く把握する手段がない」とし 「憲法上の個人情報自己決定権さえ捜査の過程で完全に無力化されている」と憂慮した。

続いて「押収捜索の直後に対話内容を封印し、被疑者が参加して犯罪と無関係な情報を選び出して、 犯罪と関係があるものだけを押収捜索する方式で乱用を統制する必要がある」とし 「また、事後通知は押収捜索があった後、基本的に『即時通知』の規定をおくことが妥当だ」と説明した。

民主弁護士会のチョ・ヨンソン弁護士は 「カカオトーク押収捜索の最大の問題は、無差別かつ広範囲だということだ。 現在、加入者は1千万人だが、一人当りの対話相手は数百人だ。 数人の情報さえ集めれば、すべてのカカオトーク使用者の政治的指向、一定の動線、指向を把握でき、蓄積できる」とし 「こうした情報を国家が管理するようになれば、 少なからぬ弾圧も十分に予想できる」と強調した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2014-10-16 10:32:04 / Last modified on 2014-10-16 10:32:05 Copyright: Default

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