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韓国:海賊党議員、「著作権、特許の廃止を」
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海賊がデジタルの海を分捕る

海賊党のアメリア議員、「著作権、特許の廃止を」

キム・ドヨン記者 2010.10.19 22:22

スウェーデンの海賊が韓国の地にやってきた。

『私たちも海賊だ』の招請で、スウェーデン海賊党所属ヨーロッパ議会議員の アメリアが10月18日に訪韓した。

アメリアは同日、ソンミ山の村劇場で開かれた「海賊党、それを知らせます!」 というテーマのトークショーに参加して、海賊党の形成の過程、政策、活動な どについて話した。

『海賊党』は、著作物を媒介として対話する試みも『不法』とされるデジタル 環境に問題意識を持ち、知的財産権を制限し、利用者のプライバシーを保護す るため、2006年にスウェーデンに登場した政党だ。

▲18日、海賊党の説明をするアメリア議員[出処:yuki]

私たちにはまだなじみがうすいが、すでに16か国で政党としての姿を備え、 32か国で準備会が構成されたか、議論されている。

2009年6月のヨーロッパ議会選挙では7.13%を得票、ヨーロッパ議会で二議席を 占めた、2010年4月には海賊党ネットワークの『海賊党インターナショナル』も 発足した。

アメリアはこの日のトークショーで多様な情報人権問題について立場を述べた。

まず問題になったのは著作権だった。彼女は「政治的な力が創意的な活動を妨 害している」が、「著作権などは役に立たない程度ではなく、阻害する状況に 至っている」とし、「オンラインでは著作権と知的財産権を完全に廃止すべき だ」と話した。

特許にも批判的だった。彼女は特許が「初めは良い意図で始まったが、もはや 革新がなされず、防御のためにだけ使われている」とし「完全な廃止」を主張 した。

通信分野には「移動通信社は巨大な権力で使用者を統制しており、国家もプラ イバシーを侵害している」とし「通信インフラはグローバル・コミュニケーショ ンの手段であり、公共財だということを認識しなければならない」と指摘した。

最後に彼女は「地球上のすべての国家に、デジタル問題を扱い、使用者親和的 にする政党が必要だ」と話した。そして「韓国に海賊党があれば移動通信産業 に手を出さなければならない」と助言した。

アメリア議員は20日まで韓国に留まり、さまざまなイベントで海賊党の話を聞 かせる予定だ。

10月20日10時には国会図書館で与野の国会議員と会い、若い政治家の進路につ いて共に考え、午後5時には高麗大学校法学専門大学院で「誰のための著作権か」 という主題で講演する。

「海賊党、それを知らせます!」

スウェーデン海賊党、アメリア招請トーク全文

・司会:キム・ミョンジュン(ミディアクト所長、進歩ネットワークセンター運営委員)
・パネル:アメリア、ナム・ヒソプ(情報共有連帯IPLeft前代表)
・整理:パク・ミョンフン(進歩ネットワークセンター)

司会者:海賊党を紹介してくれ。

アメリア:2009年にヨーロッパ議会で2議席を占めた。2010年には議席を得られ なかった。まだスウェーデン議会には進出していないが、デジタル・セクション への関心を呼び起こせると考える。

司会者:最初に海賊党を始めた主体はどんな人々か。

アメリア:2005年に情報通信の企業家たちが始めた。私は2006年にメンバーになった。

司会者:団体はどんな役割だったか。

アメリア:2003年にパイラシー・ブルーがあった。ダウンロードが不法ではない ことを主張し、共有のための財団も設立された。

司会者:パイレーツ・ベイのサーバーが押収捜索される事件があった。気になる 点は、パイラシー・ブルーとパイレーツ・ベイ、海賊党の関係はどうなのか。

アメリア:ブルーは反海賊だけの問題に対応するために作られた。パイレーツ・ ベイは共有のための実験体で、彼らは組織的な関係はない。もちろん党員が両 プロジェクトを支持することはあっても、直接の関連はない。パイレーツ・ベ イの判決がヨーロッパ議会選挙の直前に出てきたことが私たちにとって多いに 役に立った。

司会者:なぜ『海賊』という単語を使ったのか。そしてなぜ独自の政党を作った のか。

アメリア:誰かがつけた名前ではない。海賊になりたいという意味ではなく、公 開された技術を使っただけなのに、不法と分類された。現在、インターネット で著作権を破らずにできることはほとんどない。民主主義で政党を作るという ことは議論を起こす良い方法だと考える。

司会者:海賊党以前の政策が不充分だったからか?

アメリア:包括的な政策を出すところはなかった。

ナム・ヒソプ:知的財産権に関する市民社会団体の意見は最近のものだ。アフリ カでエイズにより多くの死者が出たことを知的財産権とつなげるのにも長い時 間がかかった。

司会者:ヨーロッパ議会では議席を得たのに、スウェーデンでは得られない理由 は何か?

アメリア:問題が足りなかった。それに加え、スウェーデンでは自国の選挙では 大きな政党を、ヨーロッパ選挙では小さな政党を支持する指向がある。

司会者:著作権についての海賊党の公式の立場は何か?

アメリア:著作権と知的財産権についての既存の立場を再検討することだ。いか なる政治的な力も創意的な活動を妨害してはいけないと思う。著作権などは、 それに役に立たないという程度で終わるのではなく、阻害する状況に至ってい る。マイクロペイメントやストリーミングのような新しい方法が必要だ。個人 的には著作権保護の年限などには関心がない。

司会者:主な政策的な争点はどんなものがあるか? どんな政治的な成果を望んで いるか?

アメリア:ヨーロッパ議会は各種の処罰により著作権を保護しようとしている。 パイレーツ・ベイも、知的財産権を侵害したという容疑で3億ユーロもの罰金が 命じられた。インターネットのサービス提供者が著作権を侵害していることは ない。インターネットでの複製を不法にしてはならない。使用者は複製が不法 だという意識を持っていないが、政治家たちは法を作って無理に価値を付けて いる。

司会者:オンラインでの知的財産権は不必要だという立場なのか?

アメリア:そうだ。

司会者:複製だけでなく、流通も考えることができるが、その部分についてはど んな立場なのか?クリエイティブ・コモンズのような代案著作権を考えているか?

アメリア:インターネットでは、タダで情報を得られるが、それに課金する理由 はない。セルビアでは音楽に接する通路が事実上、インターネットしかないが、 この状況を非難することはできない。セルビアは特別なケースだが、ヨーロッ パでもコンサート文化が爆発的に増加している。

司会者:再検討の焦点は何か?

アメリア:個人的には知的財産権の完全な廃止を考えている。著作権保護期間を 5年に短縮すべきだという話をしたが、世界の海賊党が全く同じ立場ではない。 デジタル環境では権利を主張するのをやめようという立場だが、著作権という 問題そのものが最重要というわけではない。

ナム:すでに知的財産権に基づく産業が存在している。これに対する代案と、政 治的な方法は何か?

アメリア:著作権はもう効率的なものではない。国際貿易協定そのものを廃止す る側では考えていない。新しい法案により活路を見出して、創造的な活動を妨 害する政治的な活動に対抗しようと思っている。まだ不足だ。

司会者:討論が進行中だということで、どのように整理されるのかわからないが、 該当産業領域の人々はどのような立場なのか? たとえば巨大企業とその中の労 働者、創作者たちは?

アメリア:二つのグループがある。著作権を保護しようとする人々は、海賊党が 収入源をなくすと考えるのため好まない。しかし、実際に創意的な活動をして いる人々は、収益の創出や配分が過去20年と違っていることを認識しており、 適応すべきだということを受け入れている。独立した小規模な芸術家たちは海 賊党の活動に肯定的だ。高い収益がある人々は批判的だが、レディガガのよう に著作権業界を批判しているケースもある。

司会者:映像分野はどうか?

アメリア:映画については、まだ具体的な例をあげられる程よく知らない。ただ し、テレビの場合は加入者中心に収益を得ているのでモデルが違う。

司会者:特許の完全な廃止を主張している。補充の説明はあるか?

アメリア:初めのうち特許は良い意図で始まったが、もはや革新がなく、防御の ためだけに使われている。19世紀にも特許によって保護される人為的な独占に は批判があった。製薬業者は特許に好意的だが、臨床実験の費用が大きいから だ。そのようなケースは、国家が臨床実験費用を助成すれば状況を改善できる。 現在、大製薬業者が中小規模の企業を買収する形で成長している。

司会者:プライバシー問題への立場はどうか?

アメリア:議会がプライバシー関連の立法に関して注意が足りない。政治家たち は個人が自由ではないことを望んでいるようだが、個人のデータは個人のもの で、情報を管理する権利は奪えないと思う。私が誰と対話したか、何に乗って どこに行ったのかが記録で残るというが、これをなくすには莫大な費用がかか る。他人が私の情報に接近しないことを望むのも容易ではない。一言で成熟し ていない。

司会者:通信分野に関する立場は何か?

アメリア:9か月、力を注いだ。今はインフラが整備され、民主主義的な参加も とても良くなった。しかしインフラ、経済、使用者情報などのすべての側面で きちんと管理されていない。移動通信社は巨大な権力を持って使用者を統制し ており、国家もプライバシーを侵害している。FaceBookやGoogleのような企業 も、インターネットサービス提供者も、使用者の情報に接近できる。通信イン フラはグローバルコミュニケーションの手段であり、公共財だということを認 識しなければならない。

司会者:私企業の公的規制を意味するのか? あるいはインフラ自体を公的に管理 すべきだという意味か?

アメリア:ネットワークを利用する費用がとても高く、統制にも露出している。 ドイツテレコムがスカイプを排除して自社のインターネット電話を使わせるこ とができるように。スウェーデンでは多少状況は良い。米国でのネットワーク 中立に関する問題がドイツやスペインなどでも話されているが、スウェーデン ではそれほどではない。だが、二重課金などの問題がある。

司会者:公正競争側に焦点が合わされているようだ。韓国では、移動通信社が巨 大化し、メディア産業全般に影響力をおよぼしている。スウェーデンの状況は どうか?

アメリア:スウェーデンではそのようなことはない。しかしコネクションバンド リングが試みられている。使用者は、望むサービスを選択する権利がある。当 局は、一企業がさまざまな分野で影響力を持つ状況を防がなければ問題が起き るだろう。日本では三つ会社しか基地局を所有できないという報告書を読んだ ことがある。基地局が多くなりすぎるという理由だったが、所有とサービス提 供が分離したためインフラの乱用を防ぐことができる。ヨーロッパで似た方法 をとっているのはルクセンブルグ程度だ。

司会者:今までの問題を政治的にどう貫徹させるか? また、デジタル環境問題以 外のことについては立場を表明しないことについても話してほしい。

アメリア:ドイツでは政策拡張を議論している。しかし直接的にすべての問題を 扱すべきだとは思わない。スペイン、チェコ、カタロニア等の海賊党では、既 存の政党の間で小規模政党として位置を獲得する意志がはっきりしている。た だし、行政的な優位を得るためにグリーン・グループと協力している。ヨーロッ パ議会では、左右にまたがるグループと協力している。外交に近いと思ってい る。広い意味での協力としては、ACTAがある。

司会者:海賊党の構造や、政策決定の過程は他の政党と比べ、どうなのか?

アメリア:水平的な関係を維持している。Three Pirate Ruleというのがある。 積極的に活動する機会が多く、想像力を発揮することができる。選挙の時など は中央集中的な構造を活用する。

司会者:国ごとに違うという話があったが、4月に海賊党インターナショナルが 設立された。

アメリア:海賊党に関心がある人々が接触し、意見を交換する組織だ。公式的な 目標は、シンクタンクのようなものを組織することだ。新しく始める小さな海 賊党を支援する役割だ。ネットワークを通じて情報を共有し、直接民主主義の 発展などを議論している。

司会者:個人的にはどんな方法で活動しているのか?

アメリア:現在は議会議員としてネットワーク関連の活動に力を入れている。人 と会って意見を交換することにほとんどの時間を使っている。

司会者:韓国には海賊党がないが、関心がある人がいる。情報技術産業が進んで いると言われるが、助言はあるか。

アメリア:地球上のすべての国家に海賊党が必要だと思う。デジタル問題を扱い、 使用者親和的にするような政党が必要だ。韓国での要件などはわからない。こ の電話機はバンドリングされた電話機-フィーチャーフォン-だ。事業者ごとに バンドリングされた電話機を取り扱っているようだが、当局が競争を管理する 必要がある。使用者が製品を変えようとすると、とても面倒だ。権力がカルテ ルに集中している。韓国に海賊党があれば、移動通信産業に手を出さなければ ならないだろう。

司会者:国連で未来社会のビジョンを扱う会議があった。国家、企業、市民社会 領域があったが、市民社会側の専門性や、していることは、とても不十分だっ た。緑の党系列が役割を果たしたが、その時に海賊党があったらどうだっただ ろうかと思う。ところで、あえて海賊という単語を使う必要があったのか。

アメリア:いつも『海賊』という名前について質問される。だがこのような形で 関心を引けるではないか? 私たちが決めた名前でない。われわれは正しいこと をする海賊で、私はそれが邪魔にはならない。

[質疑応答]

質問者1:ビーマイナーからきた。学校でも映画館でも著作権に関しては、情報 不足で苦心している。スウェーデンではどうなのか?

アメリア:国家が介入して、障害者の味方をしている。企業が費用を請求するな どとんでもない。貪欲がかくれている。これに対抗するためにも海賊党が必要 だろう。

質問者2:大学生だ。代案を提示できるか?

司会者:マイクロペイメント・システムのような代案がすでに提示されている。 個人的にはビジネスモデルより規制が人々の妨害をしていることに集中している。

質問者2:図体が大きな参加者が必要なようだ。たとえば米国から始めるのが効 率的ではないか?

司会者:ヨーロッパ、南米、インド、中国も十分な規模がある。米国以外の領域 を考えたい。韓国の場合も、米国の代わりに他の輸出対象を探せるだろう。中 国と米国は、政治体制の違いで進入が難しかった。

質問者3:オルタナティブ教育雑誌タンポポからきた。関係のない質問かもしれ ないが、高校の時にどんな教育を受けたか。また一生懸命に働ける原動力は何か?

司会者:生まれつきの性格的な部分があって、スウェーデンの『若い海賊』コー ディネイターとして1年間活動していた。適切な時期に適切な場所にいたようだ。 高校の時は数学が好きだった。問題がうまく解けて、友だちに自慢すると気分 が良かった。中学の時に政治に関心を持ち始め、高校の時には政治の代わりに 数学、科学などに関心を持つようになった。以後、海賊党を知って吸い込まれ ていくことになった。大学の時から海賊党活動が増えて、現在に至っている。

質問者4:メディアオヌルからきた。世界的メディアグループに有料化の傾向が 現れている。新聞産業の退潮による対策だと思うが、これに対する意見は?

司会者:有料化に反対する。私は新聞が好きだが、メディアの没落は自分のせい だと思う。自分たちの洞察力を見せるためなのか知らないが、オピニオン-社 説-がとても多い。それを維持するために事実報道が少なく思われる。私の場合 は客観的な情報で充分だと思い、オピニオンは望まない。

質問者5:利用者は、自分たちの権益に関する活動には関心がない。海賊党が人々 と関係を結ぶ方法があるのか。

司会者:海賊党の党員が全てインターネットの消費者だ。ツイッターとオンライ ンコミュニティを活用している。オフラインでも毎週コーヒーの集いを開いた り、いろんな活動をしている。10〜12万人規模の小規模都市での事だ。

質問者6:健康社会のための薬剤師会からきた。特許制度の代案や対応の方案が 議会で議論されているのか。

司会者:残念だが特許を保護する側の議論が主だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2010-10-20 22:37:49 / Last modified on 2010-10-20 22:37:50 Copyright: Default

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