本文の先頭へ
韓国:知的財産権対策委、韓米FTA履行著作権法は「違憲」
Home 検索

知的財産権対策委、韓米FTA履行著作権法は「違憲」

「韓米FTA履行著作権法、遡及立法禁止に違反」

チョン・ヨンギル記者 2011.12.06 16:42

韓米FTA協定履行のために改正された著作権法が違憲であり、 不平等な改正だという主張が提起されている。

11月22日、韓米FTA批准同意案が国会で強行採決で通過した後、李明博大統領が この協定に署名したが、協定発効の検証の過程で米国は履行義務を果たさず、 韓国だけに履行義務があるなどの不平等協定の問題が明らかになり、問題になっ ている。

こうした中、「韓米FTA阻止知的財産権対策委(以下対策委)」は12月5日に声明 を出し、22日に通過した韓米FTA協定履行のために改正された『著作権法』には 「違憲的な内容が含まれるばかりか、米国は履行しない内容を韓国側だけが 一方的に履行する不公平な条項が含まれている」と主張した。

対策委は声明で、今回改正された著作権法は、△遡及立法による財産権剥奪を 禁じる憲法13条2項に反しており、△韓米FTA協定の履行に必要な米国側措置が なく、△『一時的複製』の規定が曖昧で、インターネット使用を萎縮させ、 △韓米FTA協定にもないサービス事業者のモニター、フィルタリングを義務化 していると明らかにした。

遡及立法による財産権侵害...「違憲」

著作権法は86年と94年の二回の改正で、各々期間が決められ、△1987年7月1日 から1994年6月30日の間に発生した著作隣接権の保護期間は20年だが、△1994年 7月1日以後に発生した著作隣接権の保護期間は50年を適用する。

ところが、今回通過した著作権法では、1987年7月1日から1994年6月30日までに 発生した著作隣接権保護期間を全く同じく50年に延長した。特に1987年7月1日 から1990年12月31日の間に発生した著作隣接権の保護期間はすでに満了した 状態で、これをまた回復させる措置だ。

これについて進歩ネットワークセンターのオ・ビョンイル活動家は「保護期間 が満了した著作物にまた排他的な権利を与えるのは、逆に該当著作物の利用者 に損害を与えることになり、特に著作隣接権が満了し、隣接権者の許諾なく 該当著作物を利用している利用者にとっては明白な財産的な損害が発生する」 とし、憲法13条2項が規定した遡及立法による財産権侵害禁止に違反したと 説明した。

また、こうした著作権法改正は、事実上韓米FTAとは無関係に改正された。

オ・ビョンイル活動家は「この内容は、初めから2011年3月25日ハン・ソンギョ 議員が代表発議した著作権法改正案に含まれていたが、遡及立法の違憲性問題 が提起されて保留されていた」と説明した。

当時、国会の専門委員検討報告書でも、「改正案は陳情遡及立法による財産権 剥奪を禁じる憲法第13条第2項に違反し、利用者およびオンライン音源事業者等 の財産的地位を剥奪する憂慮がある」、「保護期間を遡及して延長する重大な 公益上の理由がない限り、法治国家の原理に反し、すでに消滅した権利を回復 させず、現行法で形成された法律関係の安定性と信頼を保護する方が望ましい と判断される」と指摘した。つまり違憲の可能性が高いということだ。

その上、韓米FTA協定第18.1条第10項は「この協定の発効日にすでに公共の領域 に属する対象物の保護を回復することを要求されない」と規定しており、すでに 満了して公共領域に属する著作権は必須の改正対象ではないということだ。

オ・ビョンイル活動家は「2008年、政府が最初に発議した韓米FTA履行のための 著作権法改正案には、このような内容は含まれておらず、ハン・ソンギョ議員 の改正案にも韓米FTA協定履行のために必要な立法という言及は全くなかった」 とし「韓米FTA協定批准を機会にして、違憲の可能性がある法律を紛れこませる もの」と説明した。

韓米FTA協定義務履行措置をしない「米国」

対策委はまた、韓米FTA協定の発効のために、米国も協定上の義務を自国の法に 反映させなければならないが、そうしていないと主張する。対策委によれば、 米国は著作権法に関してだけでも、△一時的複製、△技術的保護措置不備、 △刑事手続き義務化適用の最低3分野で協定履行に必要な措置を取っていない。

まず、『一時的複製(保存)』について今回国会を通過した著作権法は協定内容 を反映している。しかし米国の著作権法(第101条)は『一時的保存』を複製とは 認めず、米国法院もバッファメモリへの1.2秒以下の保存は複製ではないと判決 している。米国は著作権法第101条を改正しなければならないが、米国の韓米 FTA履行法はそのために必要な措置は何も含んでいないという。

また、『技術的保護措置』に関し、国内著作権法はすでに韓米FTA協定の内容を 反映しているが、米国著作権法(第1201条)は協定の内容よりもその保護範囲が 小さい。

そして、著作物の不法複製物に対する偽造書類または包装を秘密取り引きする 場合、刑事手続きの適用を義務化しているが、米国刑法(第2318条)は偽造書類 または包装が『著作物の場合にのみ』刑事手続きが適用されることになっていて、 協定文と違いが生じる。

インターネット使用萎縮...『一時的複製』の曖昧さ

今回の改正された著作権法は、第2条で『一時的複製』を著作権法上の複製だと 規定している。ところが、インターネット利用には一時的複製(保存)は不可避 なので、これについての例外規定をおいている。

改正された著作権法第35条の2は「円滑で効率的な情報処理のためで必要と認め られる範囲で、その著作物をそのコンピュータに一時的に複製できる。ただし、 その著作物の利用が著作権を侵害する場合にはそうではない」と規定する。

すなわち、一時的複製を著作権法上の複製と規定(第2条22)し、通常のインター ネット利用行為が著作権侵害にならないように例外を規定(第35条の2)した後、 また例外の例外(但書条項)を規定している。

このためにオ・ビョンイル活動家は「円滑で効率的な情報処理のためで必要と 認められる範囲で一時的に複製する場合、著作権侵害の範囲が具体的に何なの かが分からない」とし「著作権侵害の一時的複製とそうではない一時的複製の 境界がはっきりしていないと、インターネットによる著作物への接近と利用が 萎縮する可能性が高い」と憂慮した。

フィルタリング義務化...プライバシー侵害の憂慮

一方、韓米FTA協定では義務化されず、米国でも取っていない措置を、韓国だけ 措置を取り、公平性に問題がある部分もある。

韓米FTA協定第18.10条30.ナ.7)は、「サービス提供者が自身のサービスを監視 したり、侵害行為を示す事実を能動的に探さなければならないことを条件にす ることはできない」と規定している。つまり、サービス提供者に、サービスの モニターやフィルタリングを義務化していない。

韓国の著作権法は、第104条で特殊な類型のオンライン・サービス提供者(P2P、 ウェブハード業者)は、権利者の要請があればフィルタリング(著作物などの 不法な送信を遮断する技術的な措置)を義務化している。

これは、著作権者の要請によってすでにサービスに登録された不法著作物を 削除するという措置を越え、常に利用者の利用行為をサービス提供者に モニターさせるものだ。

オ・ビョンイル活動家は「11月24日、ヨーロッパ司法裁判所も著作権の保護を 理由とするISPへのフィルタリング義務化はできないと判決をしたこ」とし、 「これは、企業の営業の自由を侵害すると同時に利用者のプライバシーを侵害 しかねないから」と説明した。

対策委は12月5日の声明で「今回通過した著作権法は、条項の意味も曖昧である ばかりか、明らかに違憲だ。即刻廃棄した後、改めて初めから国会で議論しろ」 「不公平で誤りだらけの韓米FTAはさらに手遅れになる前に今すぐ中断しろ」と 強調した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2011-12-07 08:50:26 / Last modified on 2011-12-07 08:50:28 Copyright: Default

関連記事キーワード



このフォルダのファイル一覧上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について