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韓国:撤廃連帯非正規職運動10年展望討論会(2)
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いかにして非正規職を集めるか

撤廃連帯非正規職運動10年展望討論会(2)

キム・ヨンウク記者 batblue@jinbo.net / 2009年11月30日15時51分

「非正規職運動10年の歴史は、非正規職という雇用形態を一般化して正常なも のとして受け入れさせようとする資本と、そうではないことを明らかにしよう とする非正規職労働者たちの闘争過程だった。

非正規法が通過し、日常的な雇用不安定が始まった。大部分の非正規職労組は 生き残りが難しく、生き残っても既存の労働組合の運動秩序に編入され、運動 的な意味が色あせた。しかし政府と資本は完全な勝利をおさめられなかった。 多くの人々は非正規職が誤った雇用形態であることを知っている。」

不安定労働撤廃運動の5つの課題

全国不安定労働撤廃連帯(撤廃連帯)は11月27日、『非正規職運動展望討論会』 を開き、これまでの非正規職運動10年の評価とこれからの10年間、非正規職運 動をどうするかを討論した。

日常的な雇用不安状態でも残った闘争の火種は、非正規職が正常な雇用形態で はないという同意の地盤があるということで、討論会2部の不安定労働撤廃の課 題は提示された。

撤廃連帯のキム・ヘジン代表は基調発表で「10年を準備するために、まずすべ ての労働者に権利があることを示し、闘争の課題にしなければならない」とし 「さらに多くの非正規職組織化、組織化した非正規職の不安定労働撤廃運動の 主体化、正規職と非正規職、非正規職の間の階層を越える共同闘争の組織、さ まざまな単位の対話と連結による反撃の契機作りが必要だ」とし、不安定労働 撤廃運動の5つの課題を提出した。

キム・ヘジン代表は闘争の課題として△使用理由制限と常時業務での継続雇用 の権利、△自律的な団体構成と、交渉してストライキをする権利、△生計費の 原則に基づいた生活賃金、△働かなくても生存する権利のための闘争課題を提 案した。

組織化の課題は、△製造業零細事業場労働者を公団中心で戦略組織化、△非公 式、社会サービス領域労働者の多様な形態の組織化と明らかにした。

主体化の課題では、△労働組合の組織化と連帯を自分の目的にできるように組 織して、△権利を中心に社会的闘争をする地域連帯体構成を提案した。

共同闘争の課題では、△職務職級制と外注化反対闘争を中心に正規職-非正規職 の共同闘争組織、△元請使用者責任の制度化の闘争から同一団体協約適用闘争、 △共同闘争を前提に下厚上薄(下に厚く上に薄い)原則たてることを提案した。

最後の社会化の課題では、不安定労働撤廃を課題とする組織の共同経験を蓄積 するネットワーク構成を上げた。

『労組かどうか』ではなく『どんな方式』か

この日の討論会でキム・ヘジン代表は、非正規職労働者の組織化に対する多く の悩みを表わした。特に『非公式部門、社会サービス労働者を多様な形態で組 織しよう』と投げた組織化の課題は、多様な賛否討論と多くの争点を投げかけた。

キム・ヘジン代表は「製造業などと違い、社会サービス部門は大規模投資が必 要でないため、資本としては利益率を高められる重要な産業だが、まだインフ ラは充分ではない」とし「そのため政府が出て、その分野のインフラを構築す る過程を踏んできた」と評価した。

キム・ヘジン代表は「社会サービス領域は労働者の労働に依存するので、政府 と資本はまず教育機関を設立し、労働者を相互に競争させて、さらに低い条件 とさらに低い賃金、さらに長時間働かなければならなくした」と指摘して「社 会的雇用や社会的企業という名の労働者の労働がまるで正当な労働ではなく、 政府の恩恵であるかのように装い、当初から雇用を低賃金雇用で構造化した」 と分析した。

問題はこうした雇用は、雇用関係が隠されていたり歪曲され、労働者は誰が使 用者としての責任を負うのかが分からないことにある。またサービス産業で期 間労働力を構成したも同然の青少年労働者や自活事業労働者、リサイクル収集 労働者、家事労働者などは、伝統的な労働者の位置から抜け出した非公式部門 労働者で、個別事業場単位では自身の労働権の確保が難しいという。

撤廃連帯のキム・ヘジン代表は「こうした社会サービス労働者と非公式部門労 働者を組織するのが重要な課題であれば、既存の伝統的な方式の労組組織化の 構造から抜け出す必要がある」とし「何で組織するのかでなく、どうすれば 組織が可能かが重要だ」と悩みを投げた。

キム・ヘジン代表は「どんな形でも労働者は組織されなければならず、組織と 闘争の経験を通して主体化されなくてはいけない」とし「今の労働組合の条件 はこのような労働者を組織するのは難しく、たとえ組織しても既存の組織秩序 がこれらの労働者の躍動的で異質な労働構造を受け入れ、労働運動全体の課題 にするには、すでに確立された企業別構造が大きな限界として作用する」と評 価した。

キム・ヘジン代表は「重要なことは『労組かどうか』ではなく『どんな方式』 が労働者の組織に力になるかということなので、『療養保護士協会』のような 方式が積極的に摸索される」とし「可能性を作るために多様な実験をしていか なければならない」と付け加えた。

現在、療養保護士は『療養保護士協会』という形で組織され、老人長期療養保 険制度に問題提起をしたり対政府闘争をしている。こうした協会の形でも、現 在の歪んだ雇用構造を越え、政府と資本、使用者団体を相手に自分の権利を勝 ち取る闘争に立ち上がらなければならないということだ。

キム・ヘジン代表は続いてこうして組織化された労働者が、いかにして新自由 主義反対の主体になるかの悩みを続けた。不安定労働撤廃運動が単に多くの組 合員を作り出し、現場で賃金と労働条件をあげる闘争をするだけでなく、労働 者を不安定にし、貧しくする新自由主義に対する抵抗の主体をたてる運動だと いう説明だ。

キム・ヘジン代表は「労働組合運動が労働者たちの分割と階層化に抵抗できな くなっているのは、組織された労働者たちの利害関係を中心にして、賃金団体 協議による組織の安定化に集中しているため」とし「この中で民主性と闘争性 がいくら高まっても、資本の階層関係や分割、全般的な不安定性を越えるのは 難しい」と診断した。

キム・ヘジン代表は現在の限界を克服する代案として「『連帯と組織化』を自 分の課題でする労組」と「権利を中心に社会的闘争をする地域連帯体構成」を 提示した。キム・ヘジン代表は「『連帯と組織化』を自分の課題とする労働組 合の組織化は、不安定労働撤廃運動でもとても重要な主体化の過程になる」と し「非正規職労働者はすでに『組織された単位の賃金団体協議による安定化』 が現実可能な要求ではないことが多いので、それにしばられず、組織化と連帯 を自分の課題にする可能性は大幅に広がる」と述べた。

差別が差異であるかのように変身させた職務給制度と外注化

また、共同闘争の課題として職務職級制と外注化反対闘争、同一団体協約適用 闘争を提案したのは、分割と階層化による統制戦略に対抗しようということだ。 キム・ヘジン代表は「資本構造調整の核心的な部分は、階層化と分割による現 場統制であり、その様相は職務給制度と外注化」とし「ひとつの事業場の中で も互いに異なる雇用形態を持つ人々が他の職務をするので、彼らの間の差別が まるで差異であるかのように変質する」と診断した。

このような労働者の分割と階層化を防ぐことも重要だが、その効果を押し倒す 闘争も重要だという意味で、同一団体協約適用闘争を提案した。キム・ヘジン 代表は、「複数労組時代に自主的に交渉し、非正規職が独立した組織を作って も、正規職-非正規職の団結のための計画を作れなければ二重団体協約になり、 労働者の階層と分割は相変らず維持される」と警告した。金代表は「同一団体 協約適用闘争は、非常に難しい長期的な課題」とし「段階的な課題の第一歩と して『元請使用者責任の制度化』を設定しよう」と提案した。

続いて討論に立った貧困社会連帯のカン・ドンジン執行委員長は、「今の労働 者運動に必要な目標は、『不安定労働撤廃』とだけ言うには組織と主体、社会 化の側面を盛り込めないという感じをぬぐえない」とし「10年後の運動の目標 が何かを十分に議論しなければならず、5つの課題を合わせた統合的で具体的、 明確な目標提示があるといい」と惜しみを表わした。

カン・ドンジン執行委員長は、「今の時点でまず測らなければならない権利は 『戦う権利』だ」とし「労働柔軟化により、労働者どうしの階層、序列、分割 をたくらむのも、労働運動で実利主義京郷が最も早く放棄するのも、『戦う権 利』だ」と重要性に言及した。また「生活賃金運動は、地域社会の水準で企業 に対して賃金、労働条件、契約形態などを強制し、企業単位労組組織化の支援、 公共サービスの質を向上させることで、大衆の参加と支持を増加させることに 意味がある」とし「『生活賃金運動』を特定の時期に限った闘争から脱し、日 常的で戦略的な水準で接近しなければならない」と述べた。

カン・ドンジン執行委員長は「提案発表文に提示した5つの闘争の課題も、労働 の問題だけでなく地域社会の問題、社会公共性の問題、権力と資本に向かう政 治の問題だと言うことに同意する」とし「これを総合すれば『連帯労組、平等 労組』が目標ではないだろうか」と提案した。

続いて討論に立ったキム・ソヨン金属労組キリュン電子分会長は「非正規職を 非正常と見ることに労働運動に敗北して、今非正規職を正常と見るのが不可避 だという意識、非正規職運動が労組運動の革新も闘争の成果を出せなかったと いう評価、非正規職運動が既存の労働組合運動の秩序に編入され、運動的な意 味がないという評価を前提とした問題提起は過剰ではないのか」と反問した。

キム・ソヨン分会長はまたキム・ヘジン代表の組織化方式の提案について、 「労働組合でない領域の組織は、さらに利益組織化したり政治組織化される憂 慮がある」とし「労働組合に意味があるのは、労組により私たちが労働者階級 性を確保すること」と評価した。また企業のシステムを越えなければならない という問題意識の組織化方式にも「現場がない労働組合、労働者協議会は、果 たして根元がある労働運動になるだろうか?」と問いかけ、「現場の労働者が組 織家にならなければならない」と述べた。

キム・ソヨン分会長は、戦略組織化のために、△闘争勝利のための連帯と支援 体系の強化、△中長期的次元の現場に入った活動家の現場労働者化、現場労働 者の組織化・意識化、△未組織、組織力量のない所へのインフラ構築、△必要 なら動員する連帯ではない社会政治的な対応態勢の強化を提案した。

最後に問題提起した全国非正規労組連帯会議のオ・ミンギュ政策委員は、「連 帯と組織化を自分の目的にするには、当然の課題設定でなく、経験を通して大 衆自らが強い必要を感じる過程が要求される」とし「自分の条件で必要によっ て進むすべての方向にのびる運動が自然に出てこなければならない」と述べた。

オ・ミンギュ政策委員は、提示された共同闘争の課題について「現場の非正規 職労働者にとっては、とても遠い」とし「解雇反対など、一緒にできるものな どに修正しなければならない」と指摘した。特に「同一団体協約適用闘争は、 間接雇用非正規闘争の最も高い水準で、元請使用者責任の認定闘争さえ苦しい 現在の状況で、同一団体協約適用闘争は意欲も出ないのが現実」と指摘した。

オ・ミンギュ政策委員は「階級的団結のために現場で展開できる共同闘争の核 心的な課題は、『あらゆる形態の解雇に対する闘争』にならなければならない」 とし「解雇を防げれば、そこから非正規労働者の躍動性と想像力が大きくなり 始める」と主張した。

オ政策委員は続いて正規職と非正規職共同闘争の可能性を高めるため、『労働 強度緩和』、『人員補充』闘争なども提案した。

オ・ミンギュ政策委員は「10年の展望を描く組織化の概念は、組織された正規 職と非正規職の役割を明確にする組織化戦略を出すべきで、組織された非正規 職が自然にできる組織化運動でなければならない」と明らかにした。

この日の2部の討論会は、3時間30分ほど、これから10年の非正規職運動に対す る青写真を討論する場だったので、さまざまな問題提起と争点が発表者だけで なく、参席者からも出てきた。

特に組織化方式をめぐっては、発表者が提案した領域がブルーオーシャンだか らやろうというのか、資本の不安定労働の量産に対する部分なのかという争点 の中で、労組を迂回したり労組を越える形の組織化に意見の差と憂慮、批判が あった。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2009-11-30 22:44:23 / Last modified on 2009-11-30 22:44:25 Copyright: Default

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