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韓国:FTA締結、その利益は誰のものになるのか
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FTA締結、その利益は誰のものになるのか

金属労組、韓EU FTAが製造業に及ぼす影響を分析

ラ・ウニョン記者 hallola@jinbo.net / 2008年01月30日13時21分

全国金属労組(金属労組)は1月29日、交渉が進められている韓EU FTA(自由貿易 協定)に関連して「韓-EU FTAが製造業に及ぼす影響」を主題に討論会を開いた。

EU(ヨーロッパ連合)が農業、金融、公共サービスなどの伝統的に強い産業を立 てて、韓EU FTA交渉の勢いを強めている。特にEUは、韓米FTAを基準としてそれ 以上の要求をしていることはよく知らされた事実。韓米FTA交渉に反対した労働- 市民社会団体は、韓EU FTAが追い立てる波及力に憂慮を示しているが、韓米 FTA交渉より分析された内容が少ないのも事実だ。

この日の討論会では、民主労働党のソ・ジュンソプ政策研究員が韓EU FTAの交 渉の背景から分科および各交渉の争点を整理する総論を発表した。進歩政治研 究所のイ・サンホ研究員が自動車分野に関する内容を発表した。討論会に参加 できなかった蔚山科学大のペク・イル教授は資料集で、商品と製造業分野を集 中分析した。

討論では、韓米FTA交渉阻止のために行なわれた金属労働者のストライキへの評 価、韓EU FTAの交渉過程で物流費、関税撤廃効果を計算し、工場の海外投資に 対する対応の論理を開発しようという主張、総連盟次元で産業別ではない、総 体的なFTAへの見解と対応が必要だという主張も提起された。

金属労組は、外部の研究者と韓EU FTA研究会を構成し、2007年9月から研究を進 めてきた。この日の討論会はこれまでの研究の結果を大衆に公開する公開討論 の場だった。この日討論された内容は、研究資料とともに2月中に資料集とし て発刊される予定だ。

▲金属労組は29日「韓EU FTAが製造業に及ぼす影響」の討論会を開いた。

ソ・ジュンソプ政策チーム長は「一部の(韓EU FTAの)恩恵業種である繊維、衣 類、革の場合、全般的な衰退産業であり、自動車の場合も東ヨーロッパを中心 として現地工場が設立されているため、国内生産と連係して長期的に利益にな るのかどうかは疑わしい」と説明した。EUが世界最大の農産物生産国で輸出国 なので、農業と畜産業の被害は不可避で、雇用も一部の業種を除けば効果は大 きくないと分析した。

問題は、なぜ韓米FTAに続いて「なぜ政府が急いで韓EU FTAを推進するのか」だ。

ソ・ジュンソプ政策チーム長は「多国籍企業、韓国の財閥大企業過剰が代表さ れているから自分たちの利益のために政府の政策を変化させ、政府を追求して FTAを推進させている」と分析した。企業の利益がFTAという通商交渉で貫徹さ れるのは、韓国だけの現象ではない。WTOでも超国籍農食品複合体のカーギル交 渉と呼ばれる程に、常に貿易交渉は企業の利益を実現するために進められると いっても言い過ぎでない。

反面、FTAを締結して形成された企業の利益が国民に回るのかという点は疑問が 残る。この日の討論の参加者たちは、企業という特性により、国家全体の経済 的な利益として拡大できないという点で共感を集めた。経営は、国民経済を考 えるより、企業の利益を追求することだけに限られるということだ。これは、 すでに雇用なき成長、輸出記録更新の過程にも国内経済に暖かさが広がらなかっ た過去の過程を例にあげ、説得力を加えた。

同じ文脈で、討論者として参加した産業労働政策研究所のイ・ジョンタク副所 長は、FTAへの接近方式を提示した。イ・ジョンタク副所長は「関税を撤廃し、 市場が開放されれば貿易が拡大するのは極めて正常だ。重要な問題は、利益が 誰に行くのかだ」と強調した。自動車産業が成長することも重要だが、それ以 上に重要なことは、産業の利益が従事労働者、民衆全体の役に立つのかについ て、注目しなければならないという指摘だ。

現在の自動車産業の構造は、従事労働者にとって苛酷な現実を強要している。 正規職は正規職だという理由で、安定した労働条件のために陣営内で孤立する。 自動車産業は成長しているが、成長と同時に労働者を減らす労働排除的設備投 資が進められている。また、外注化生産方式が広がっているため生産が増加し ても完成車の雇用より外注の部分で雇用量が増加する傾向性が目立つ。

そして、社内下請、外注企業等に従事する労働者の賃金福祉水準は、完成車労 働者の50%にも満たない。こうした現実で、韓米、韓EU FTAにより開かれる労働 市場、雇用増加も、まさにこうした外注企業等だ。イ・ジョンテ副所長は、 「部品メーカーの労働者の雇用を増やしてくれること、外注企業がこうした雇 用を増やすことが産業的な側面で意味のある雇用創出なのか」と反問した。

自動車産業の核心でもある部品産業は、現在もきちんと研究投資が行われてお らず、FTAにより技術標準を米国式かヨーロッパ式かを決めることになれば、知 的財産権、産業財産権により国内の部品素材産業は外国技術が移植されるか底 を打つほかはないという説明も付け加えた。

イ・ジョンタク副所長は「自動車産業が世界的なグローバル生産ネットワーク を構成する状況で、韓米、韓EU FTAが(国内の)自動車産業をいかに再編し、構 造を変えていくのかに関心を持たなければならない」とし「関税撤廃、貿易収 支改善ではなく原産地規定、技術規定および標準、サービス、知的財産権、資 本移動に関する問題についてさらに関心を持たなければならない」と強調した。

この日の討論会では「なぜ韓EU FTAに反対するのか」という質問も出てきた。 韓米FTAと比べて、波及力や否定的が影響が小さく思われているのだ。交渉内容 がよく伝えられていないためもあり、それだけ韓EU FTAに関する陣営の準備と 対応が不足しているという理由も提起された。

ソ・ジュンソプ政策チーム長は「韓国社会はすでに韓米FTAの爆弾を受けた状況 なので、それよりもっと衝撃的な韓EU FTAの衝撃が体感できない状況だ。だが、 内容的な面では韓米FTAよりも否定的な内容が多い」と強調した。その例として、 EUが要求している知的財産権の強化、標準および環境基準の混乱、水産業進出 などの公共サービス領域に対する要求、食料品に対する基準緩和などを上げた。

彼は特に「韓米FTAと資本市場統合法の実施、金融ハブ政策の延長、李明博政権 の金産分離廃止政策など、韓EU FTAがEUの金融機関の進出を拡大し、活動を自 由にする内容が含まれ、韓国経済の金融化をさらに加速する」と強調しながら、 「政治的な面で韓米FTAについてのきちんとした検討が行われていない状況で、 韓米FTAを踏み台とする韓EU FTAが推進されるのは、政策的に無責任な交渉であ ることを反証する」と力説した。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳)に従います。


Created byStaff. Created on 2008-02-02 04:14:58 / Last modified on 2008-02-02 04:14:59 Copyright: Default

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