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朴槿恵と蔡東旭、そして消えた経済民主化

[寄稿]「左」夢九、「右」健煕...財閥会見後に廃棄された労働公約

パク・ジョンギュ(非正規職ない世の中作り) 2013.09.24 11:26

2013年民族最大の名節の中秋、故郷の家の食卓に話題があふれる。食卓の向かい側に一家親戚、大小の話が終われば何といっても「暮らしの問題」になる。就職、非正規職、高騰する家賃、日本産の水産物…。しかしすぐに沈黙が流れ、すぐ食卓は政治の話に変わる。

今年の秋夕の政治の話は、どの年よりも熱かった。朴槿恵(パク・クネ)、国家 情報院、キャンドル集会、統合進歩党、李石基(イ・ソッキ)、蔡東旭(チェ・ ドンウク)…。それぞれ荷物をまとめて家に帰る時間になれば、世代と地域を 行き来しながら行われた激烈な戦闘も、次の名節を約束して休戦に入るが、 余韻は長く残る。

秋夕の食卓でいつも政治が民生を圧倒するが、この二つはひとつだ。しかし、 いつよりもややこしく複雑な今年、労働者・庶民は政治と民生という高度な 「パズル合わせ」が難しい。朴槿恵と国家情報院が作ったパズルが今年は以前 よりもはるかに巧妙で一枚上手だからだ。

国家情報院から蔡東旭(チェ・ドンウク)検察総長辞任まで、複雑なパズルを 解いていくことは、あるいは思ったよりやさしい。民主化の反対語が独裁だと すれば、経済民主化の反対語は経済独裁になるが、韓国社会を誰が操っている のかを考えると少しはパズルが簡単になる。

秋夕直前に発行されたある時事週刊誌の世論調査で、韓国を動かす最も影響力 ある人物として、朴槿恵大統領が1位、サムスン電子の李健煕会長が2位になった という結果は、国家情報院発の高難度「パズル合わせ」の重要なヒントだ。

秋夕の食卓は政治と民生の「パズル合わせ」

蔡東旭検察総長が「飛んで行った」。8月26日、不法大統領選挙介入と、続く キャンドル集会で窮地に追い込まれた国家情報院が、内乱罪と国家保安法という 「秘蔵の武器」を持ち出して統合進歩党の李石基(イ・ソッキ)議員を犠牲にして 韓国社会をひっくり返した。びっくり驚天した民主党と進歩正義党まで李石基 逮捕同意案に賛成し、李石基議員は監獄に閉じ込められた。

ちょうど10日後、朝鮮日報は蔡東旭検察総長に矢を放ち、朴槿恵がトドメを さした。元世勲(ウォン・セフン)前国家情報院長を選挙法違反で起訴して、 政権の正統性を疑わせたというのが表面的な理由だった。しかし事実が確認 できない「婚外子」の問題で、青瓦台が任期が保障された検察の首長を埋葬 するという危険千万なことを繰り広げた理由は簡単に納得できない。

なぜ朴槿恵は蔡東旭を狙ったのか? 総選挙と大統領選挙に遡り、 パズルを合わせてみよう。

李明博治下の5年はおぞましいものだった。李明博は、法人税の引き下げ、廃車 補助金、高為替レート政策に4大河川事業まで、労働者と庶民の財布を絞り、 財閥と金持ちの蔵をいっぱいにして、パン屋、スンデ店、ビビンバ、自転車事業 など、町内商圏もかっさらった財閥への社会的な怒りが手のつけようもなく 湧き上がった。

朴槿恵大統領とセヌリ党は、敗北が確実だった2012年の総選挙と大統領選挙で、 経済民主化と非正規職を前面に掲げた。朴槿恵候補は「国民のすべてが豊かに 暮らせるようにするためには、解決すべき問題は一つや二つではないが、 非正規職問題は一番深刻で重要な課題」とし、2015年までにすべての公共機関 の非正規職を正規職化すると約束した。朴槿恵とセヌリ党は、総選挙と大統領 選挙で勝利した。

朴槿恵、経済民主化と非正規職を前面にかけて総選挙と大統領選挙に勝利

大統領に当選した直後の12月26日、朴槿恵当選者は財閥の会長らと会い「経営 の困難を突破するために、構造調整や整理解雇から始めるのではなく、勤労者 の雇用を守る知恵と苦痛分担に立ち向かっていただきたい」と話した。彼女は 就任式の日、光化門広場で大型イベントを開き「任期内に必ず非正規職問題を 解決する」と約束した。

2013年1月16日、イーマートの不法査察文書が暴露され、1月24日に雇用労働部 はイーマートへの特別勤労監督を実施した。3月4日、イーマートは1万人の社内 下請労働者を正規職に転換すると約束した。雇用労働部は、ホームプラス、 ロッテスーパーなどの流通業全般に調査を拡大すると明らかにし、大企業を 中心として非正規職・正規職転換宣言が続々と起こった。

2005年2月、労働部が現代車の不法派遣の処罰と要求したが、「容疑なし」とし、 現代車と鄭夢九会長に免罪符を与えると、不法派遣社内下請を全業種と産業に 広げた検察も変わった。

水原地検平沢支庁は、朴槿恵大統領就任式直後の2月27日、京畿・忠清一帯に 20の支社をおいて、31社の無許可派遣業者を運営していた容疑で某グループの 会長など4人を拘束起訴し、名ばかり社長、支社長、職員など11人を不拘束起訴 した。

検察は、「直接生産の工程への派遣そのものが禁じられている製造業で『請負 契約書』を作成、『社内下請』に偽装して労働者を派遣する方法を使い、2年 派遣した後に直接雇用する義務を破り、213社の業者に1230人の労働者を派遣し てきた」と明らかにした。現代車をはじめとする大企業社内下請とそっくり だった。

現代車社内下請労働者の鉄塔座り込みとストライキが続き、イーマートの1万人 正規職転換を始めとする大企業の正規職転換発表が相次ぎ、非正規職労働者の 正規職転換に対する期待と関心はさらに高まっていった。

2013年非正規職正規職転換への高い期待

全国の社内下請労働者が立ち上がり始めた。ケーブル社内下請労働者らが労働 組合を結成し、無労組サムスンの歴史で初めてサムスン電子サービス非正規職 労働者が大挙して金属労組に加入した。社内下請労働者たちが国内最大の財閥 のサムスンを対象に偽装請負と不法派遣の証拠を吐き出し、サムスンの正規職 だという勤労者地位確認訴訟を始めた。あちこちで社内下請労働者たちが労組 を作り始めた。

車椅子に乗って現れた財閥会長を「国家経済」を理由に釈放した裁判所も変わった。 懲役3年、執行猶予5年という財閥肩入れの「正札制判決」が消え始めた。 ハンファ・グループのキム・スンヨン会長、SKグループのチェ・テウォン会長が どちらも1審で懲役4年を宣告されて法廷拘束され、CJグループのイ・ジェヒョン 会長、LIGグループのク・チャウォン会長も法廷拘束された。

不法派遣ではないとして現代車と鄭夢九(チョン・モング)会長に免罪符を与え、 2010年7月22日に「現代車社内下請は不法派遣なので正規職」という大法院判決 の後、窮地に追い込まれた検察は、現代車非正規職労働者、法学科教授、一般 市民による鄭夢九会長への告訴告発が相次ぎ、本格的な捜査に入り始めた。

大検察庁公安部は異例にも9月10日、最高検察庁の庁舎で現代車捜査検事と民主 労総法律院の弁護士などが参加して「社内下請の法的争点と課題」についての セミナーを開いた。続いて大検察庁公安部は、現代自動車不法派遣事件の捜査に 関し、9月13日に蔚山地検で捜査会議を開いた。検察は年末までに捜査を完了 すると明らかにした。

労働部も検察も変わり、非正規職労働者の視線は、最大の財閥で、韓国を代表 する現代車とサムスンに集中した。10年間、不法を行った現代車の鄭夢九会長 の処罰と、現代車社内下請労働者の正規職転換の可否、労働部のサムスン電子 サービス勤労監督の結果は200万の社内下請労働者、さらに900万の非正規職 労働者に途方もない影響を与えるしかなかった。

鄭夢九会長処罰、サムスン電子サービスの勤労監督に「視線集中」

しかし非正規職労働者たちの期待は、8月28日を基点として崩れ始めた。

2013年8月28日、朴槿恵大統領は10大財閥の会長を青瓦台に呼び晩餐を楽しんだ。 サムスンの李健煕会長は、「世界的に経済が難しいが、政府で規制を緩和して もらえると企業には大きな力になる」と話し、現代車の鄭夢九会長は「現代車は 国内の賃金と物流費用が高く、困難が加重している」と大げさに騒いだ。 朴槿恵当選の主役である経済民主化と非正規職問題には一度も言及もされなかった。

まさにこの日、不法大統領選挙介入で窮地に追い込まれた国家情報院は内乱罪 と国家保安法違反で、統合進歩党の李石基議員など10人の自宅と事務室18か所 を押収捜索した。世の中がひっくり返り、9月4日に李石基議員逮捕同意案処理、 9月5日には水原地裁の李石基議員への拘束令状発布につながった。

8月28日、朴槿恵の財閥会見と国家情報院の内乱発表の翌日、言論は国家情報院 の資料で新聞を塗りたくり、大統領と財閥会長の出会いを短信で処理した。8月 28日、国家情報院と共に朴槿恵候補大統領当選の1等功労者である経済民主化と 非正規職の公約は「公安」の風と共に消えた。

すぐ9月6日、朝鮮日報は蔡東旭検察総長の婚外息子疑惑を爆発させ、青瓦台と 法務部は監察を公表して検察総長を追い出した。蔡東旭検察総長は、9月13日に 辞表を出した。

蔡東旭は青瓦台の反対にもかかわらず元世勲(ウォン・セフン)前国家情報院長 と金用判(キム・ヨンパン)前ソウル警察庁長官を選挙法違反で起訴した責任者 であるばかりか、16年ぶりに全斗煥(チョン・ドゥファン)・盧泰愚(ノ・テウ) 前大統領の未納追徴金の完納も引き出した。CJグループのイ・ジェヒョン会長 を裏金造成で拘束し、李明博の超大型犯罪でアキレス腱でもある4大河川事業を 捜査していた。

蔡東旭は2006年、最高検察庁捜査企画官だった時、現代車の裏金事件を担当し、 鄭夢九会長を拘束した検事だった。

鄭夢九会長を拘束した蔡東旭

蔡東旭が退陣した後、朴槿恵政権による最初の事件はサムスン電子サービスの 不法派遣に免罪符を与えることだった。9月16日、雇用労働部は6月24日から8月 30日まで、サムスン電子サービスとA/Sセンター、下請企業の労働関係法違反に ついての勤労監督を行った結果、不法派遣ではないと発表した。

雇用労働部は就職、技術訓練、修理、出張などすべての業務に対してサムスン 電子サービスが指揮命令をして、電算システムと業務マニュアルのとおりに 働かせ、修理費もサムスン電子サービスに入金され、労働の結果までサムスンが 評価したが、下請企業は独立性があると主張した。

サムスン電子サービスの服を着て、サムスン電子サービスの指示により、三星 電子の製品を修理して、サムスンの監視を受けてサムスンが払う賃金を名ばかり 社長の通帳を通し、サムスンのために青春を捧げて働いてもサムスン職員では ないと発表した。

不法派遣を正規職に転換すると約束した朴槿恵政権が、全国のすべての財閥と 使用者に社内下請の名で思いきり不法派遣をしても良いと宣言したのだ。

蔡東旭が退いた後に朴槿恵政権が行った二つ目の事件は、整理解雇の要件を 強化しろという国家人権委の勧告を拒否して使用者の主張を認めることだった。 人権を1990年代に回帰させたと非難されてきた国家人権委員会さえ「緊迫した 経営上の必要」となっている整理解雇要件が解雇を量産すると見て、「経営の 悪化で事業を継続できない緊迫した経営上の必要がある場合」に具体化しろと 勧告したのだった。

これに対して朴槿恵政権は「整理解雇要件を厳格に制限すれば景気不況の時に 企業の回復手段を制限するようになって、非正規職を乱用する副作用を生みか ねない」と財閥と同じ論理を展開し、解雇対象者選定ガイドラインを用意しろ という勧告にも「すべての事業場に一律に適用されるガイドラインを作るのは 現実的に限界がある」と反対した。

解雇要件を強化すると約束した朴槿恵政権は、経済危機が深刻になっている 状況で、財閥と使用者に双竜車でしたように自由に整理解雇しろと宣言したのだ。

不法派遣正規職転換、解雇要件強化の公約も廃棄

国家情報院は、統合進歩党と李石基議員を犠牲として刀の舞いを舞い、鄭夢九 を拘束した蔡東旭検察総長は飛ばされ、雇用労働部はサムスンと企業に花束を 持たせた。これで残されているのは10年間、不法を犯してきた現代車と鄭夢九 会長に免罪符を与えることだ。

8月28日、朴槿恵大統領の左には現代車の鄭夢九、右にはサムスン電子の李健煕 会長が座っていた。博通と「左」の夢九、「右」の健煕、複雑なパズルは 少しずつ解け始める。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2013-09-24 18:50:32 / Last modified on 2013-09-24 18:50:33 Copyright: Default

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