
〔レイバーネット国際部・I〕
香港で進む労働組合や団結権の根幹にかかわる政治弾圧について、香港勞權監察(香港レ
イバーライツ・モニター)がSNSで論評していたので日本語に訳してみました。ホームペ
ージにはまだ掲載されていないようですが、そのうち掲載されると思います。
https://hklabourrights.org/
https://hklabourrights.org/?lang=zh-hant
以下、翻訳です。
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香港特別区政府の《職工会条例》改正に関する香港レイバーライツ・モニターの論評
【国家安全を口実とした団結権の侵害を許さない】
香港政府は立法会に《職工会条例》の改正案を提出した。その内容は労働者の団結権を深
刻に侵害し、香港基本法や国際労働規約の履行に対する政府の責任を放棄するものである
。私たちはこの改正案を強く非難し、当局に撤回を求めるものである。
1. 新しい法案によれば、労働組合組織は以下のような厳格な政治的監督の対象となる。
・海外機関の援助を受け入れるには、地方政府への報告と承認が必要。
・労働組合は「外国勢力」組織に参加することを禁じる。(しかし外国勢力の明確な定義
はない。中国政府や特別行政区政府の政策を批判したり、人権擁護活動に従事してきた団
体はいつでもこのカテゴリに含まれる可能性がある)
・労働組合の財務書類、組合員情報、議事録等は少なくとも2年間保管し、いつでも行政
当局への開示や調査を受けなければならない。
・行政当局は、裁判所の令状なしに労働組合事務所に立ち入り、上記の情報を入手、コピ
ーできる。(これによって、いつでも労働組合とその組合員のプライバシーを恣意的に侵
害する権利を有する)
2. 国家安全維持法に違反した者は一生涯にわたり結社の自由の権利を剥奪され、国家安
全維持法を犯した者は、労働組合を組織したり、労働組合の役員になることを永久に禁じ
られる。これは、国家安全維持法の違反者を「黒五類」(文革時の階級的=社会の敵)に
分類し、その経歴に基づいて「不良分子」に分類し、恣意的に公民権を剥奪することがで
きる。
3. 労働組合設立の申請が認められない場合も、不服申し立てはできない。行政当局は「
国家の安全保障」を理由に新しい労働組合の登録を拒否することができ、拒否されても裁
判所に提訴することができない。これは深刻な改悪であり、行政当局の権力肥大を抑制で
きず、法の支配の原則に違反している。
総合的に見ると、香港特別行政区政府が提案した今回の改正案は、労働組合に対する統制
と干渉を大幅に強化し、厳格な治安監視を課すことになり、労働組合の自治権を深刻に侵
害することになる。国家安全維持法の施行〔2020年7月〕以来、香港では200以上の労働組
合がなかば強制的に解散させられた。政治弾圧は労働組合の発展を著しく抑制してきた。
今回の改正案は新たな攻撃であり、労働組合はこれまで以上に敵対的で不安な社会環境に
直面することになるだろう。
香港基本法第27条は、香港住民が結社の自由と結社の自由を享受すると規定している。香
港に適用される国際労働規約第87条と第98条も、労働者が自由に労働組合を組織する権利
を有し、労働組合の活動は政府によって不当に制限または干渉されるべきではないと規定
している。政府は改正案で、国際規約は締約国政府が国家の安全保障を理由に労働組合の
活動と権利に制限を課すことを認めていると主張したが、この主張は虚偽である。現在の
特別行政区政府は「反対意見に対する弾圧」を「国家の安全保障に必要である」とみなし
ており、これは国際基準から大きく外れているからである。国連人権委員会も報告書で、
現在の香港国家安全維持法が反対意見を弾圧する道具になっていると明確に指摘している
。したがって、特別行政区政府が国家の安全保障の名の下に《職工会条例》を改正すると
提案したことで、香港国家安全維持法と国際人権規約の間に深刻な矛盾と衝突があること
を国際社会に改めて明らかにしたと言える。
われわれは、今後も修正案の動向を注視し、様々なルートを通じて国際労働機関(ILO)
や国連規約を監視する機関に訴えていく所存である。
2025年2月20日
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Last modified on 2025-02-20 22:26:45
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