ガザの恒久的停戦とパレスチナの和平を求める声明

日本の支援団体、ヨルダン川西岸地区の深刻な状況も報告

竪場勝司

　パレスチナで人道支援活動に取り組んでいる日本の市民団体が３月２８日、東京都千代田区で記者会見を開き、「ガザの恒久的停戦とパレスチナの和平を求める」声明を発表した。各団体から、現地の状況の報告もあり、ヨルダン川西岸地区で入植者による攻撃が激化している実態なども明らかにされた。

　会見は日本国際ボランティアセンター（JVC）など、パレスチナで医薬品や農業の支援などを行なっている市民団体でつくる「パレスチナの和平を求めるアクション実行委員会」が主催した。

　発表された声明は「パレスチナの平和と人道支援に関わり続けてきた日本の団体として、人質・被収容者の無条件の解放と、イスラエル軍のガザからの完全撤退、そして恒久的停戦を実現するよう、両者に強く訴えます」としたうえで、ガザだけでなく「ヨルダン川西岸地区でのイスラエル軍や入植者による攻撃が激化している事実も看過できません」と指摘。１１２団体と約２６００人が声明に賛同しており、5月１５日まで賛同を募る活動を続け、首相や外相などに提出する予定だ。

　会見では、最初にNPO法人ピースウィンズ・ジャパンの内海侚子さんが、3月１８日以降のイスラエル軍による攻撃で、７００人以上が死亡し、停戦合意が破棄された状態になっていることを報告。現地からの情報として「ガザ内の食料の備蓄はほぼ枯渇し、残っている物資は価格が高騰し、ガソリンも不足している。安全水の確保も大きな課題となっている」などと窮状を訴えた。

　続いて登壇したJVCの酒寄静流さんは「ガザの人道危機は深まり続けている。3月１８日、突然、停戦が破られ、真夜中に攻撃が繰り返された。女性や子どもを含む何十万人もの市民が今も命の危険にさらされている。２０２３年１０月以来、少なくても５万人が命を落とし、そのうち１万５千人以上が子どもだ。避難を続けるガザの人々にとって、毎日を生き延びることは闘いた。病院は患者であふれかえり、医師は麻酔なしの手術を余儀なくされている」などと語った。

　NPO法人パルシックの糸井志帆さんは、戦争前からガザ地区南部で乳製品の加工を行なう女性組合の活動を支援してきたことを紹介。女性組合はラファ県に加工工場を設立してチーズなどを生産していたが、工場は２０２４年５月のイスラエル軍のラファ侵攻で、使用できなくなっている。組合員は全員避難をしたが、一部の女性は「飢餓が蔓延するガザで、子どもたちに栄養のあるものを食べてほしい」と仮設の作業場で、チーズなどの加工食品を作り続けているという。

　糸井さんはパルシックの活動のもう一つの柱として、ハン・ユニス県で羊農家７０世帯の畜産支援を行なってきたことに触れ、「２３年１２月のイスラエル軍の地上侵攻で、多くの農家が避難を余儀なくされたが、『自分たちの生業を奪わせない』という強い思いで、今でも３９世帯が羊の飼育を続けている」と語った。報告の最後に、羊農家の男性が破壊されてしまった家の前で「戦争の前と同じように、普通の生活に戻りたい」などと語る動画が紹介された。

　NPO法人APLAの野川未央さんは「ヨルダン川西岸地区における入植者による組織的暴力・犯罪のエスカレート」のテーマで報告した。APLAは２００４年から西岸地区を拠点とする農民支援団体からオリーブオイルを日本に輸入、販売することで、日本とパレスチナの市民の連帯を進めてきた。野川さんによると、２４年の１年間に西岸地区で５９カ所の前哨地（入植地の基になるもの）が建設され、過去の数字（年間平均７件）から明らかに激増している。

　APLAに届いた現地NGOからの報告によると、今年３月７日夜、ジェリコ県の遊牧民の集落に、約２００人の武装した入植者が大規模な攻撃を仕掛け、羊１５００頭が盗まれるなどの被害があった。攻撃にはイスラエル軍による軍事的支援があったことが明らかになっている。国連人道問題調整事務所の報告によると、この集落に対する暴力は２４年１月以降、急速にエスカレートしている。

　野川さんは「西岸地区にある入植地や前哨地はすべて国際法違反だが、イスラエルは１７年以降、羊やヤギの放牧を行なう前哨地を、政策として推進してきている」と指摘した。