本文の先頭へ
「闘っている同世代がいることを知って衝撃だった」〜311子ども甲状腺がん裁判第13回口頭弁論
Home 検索

堀切さとみ

 3月5日、東京地裁103号法廷で、311子ども甲状腺がん第13回口頭弁論が行なわれた。冷たい雨にもかかわらず、前回を上回る200名が傍聴の列に並んだ。

 この日は愛知県立大学の学生4人が、この裁判のことを知って駆けつけた。東日本大震災の時は保育園児で、何の記憶もなかったという彼ら。甲状腺がんの若者が多数いることも知らなかったが、今回はじめて福島に行き、報道とあまりに違うことに驚いたという。
 「がんになっただけでもつらいのに、闘っている人がいることを知って衝撃的だった」と、自分達より少しだけ年上の原告たちにエールを贈った。

 黒い雨訴訟で全面勝訴した84歳の高東征二さん(上写真)も広島から駆けつけ、報告集会で、27歳で亡くなったお姉さんのことを話してくれた。当時小学校六年生だった姉は、その後、被爆者の救護に関わっていた。
 「内部被ばくしたのでは」。そう確信するようになったのは、征二さんが2000年に黒い雨訴訟に関わるようになってからだと言う。
 ヒロシマの被爆者は高齢化しているが、フクシマの被爆者はこんなにも若い。これ以上被爆者を生み出さないためには、皆さんが手をつないでいくことだと、力をこめて訴えた。

 被爆と甲状腺がんに因果関係があるのかどうか。これがこの裁判の肝だが、弁護団は法廷で毎回スライドを使って丁寧なプレゼンを行なっている。そして、傍聴できなかった人たちのために、日比谷コンベンションホールで報告集会が行われている。この日は岡山大学の津田俊秀教授の意見書がベースだった。

 これに対して被告・東電側は、放射線科医の中川恵一ら三人の研究者の意見書を出し、「100mシーベルト以上浴びなければガンは発生しない。福島の子どもたちはせいぜい10mシーベルト」と主張。そして「もともと子どもは甲状腺にガンを持っている。スクリーニングしたから見つかっただけ」という「潜在がん論」に明け暮れている。
 膠着状態が続くかにみえる中、この日の法廷では裁判長が「福島県で甲状腺がんが多発しているかどうかが、この裁判の最大の争点だ」と告げた。これはまさに原告側の主張を後押しするものだ。

 結審まであと三年は続くとみられるこの裁判。良識ある裁判長が、この年月の中で異動させられてしまう可能性も否めない。しかし、傍聴に足を運ぶ若い世代がどんどん増えている。大手メディアはまったく注目しないこの裁判が、草の根でじわじわと広がっている。そんな手ごたえを感じる。

 次回口頭弁論は、6月25日(水)、9月17日(水)と続く。


Created by staff01. Last modified on 2025-03-06 21:56:25 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について