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〔週刊 本の発見〕『東京電力の変節ー最高裁・司法エリートとの癒着と原発被害者攻撃』
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毎木曜掲載・第336回(2024/3/7)

司法の腐敗、ここに極まれり!

『東京電力の変節ー最高裁・司法エリートとの癒着と原発被害者攻撃』(後藤秀典・著、旬報社、1500円+税、2023年9月)評者:黒鉄好

 <「国に責任はない」原発国賠訴訟最高裁判決は誰がつくったか−裁判所、国、東京電力、巨大法律事務所の系譜>と題した記事(月刊誌「経済」2023年5月号掲載)が、法曹界を中心に静かな波紋を呼んでいる。この記事は今後、確実に日本法曹界を揺るがすだろう。本書はこの記事をベースに、司法と国・東京電力の癒着をえぐり出す力作である。

 最高裁判事には裁判所内部からの登用の他、行政官(官僚)出身、検事出身、弁護士出身などいくつかの「枠」がある。かつて「レフェリーが一方のチームのユニフォームを着てプレイしているようなものだ」として「判検交流」(裁判官と検事との人事交流)問題がクローズアップされたことはある。その一方で、弁護士枠の裁判官には「人権擁護の最後の砦」だという漠然としたイメージを持っている市民も多いのではないだろうか。そのようなイメージは本書を読めば粉々に打ち砕かれるに違いない。

 第1章では、原発事故以降、表向きとはいえ「謝罪」を口にし、平身低頭だった東電が、2020年以降、法廷という公の場で、出廷した原告・被害者を白昼堂々「攻撃」する様子が暴露される。13年経った今なお苦しみ続ける被害者に向かって投げつけられる内容の下劣さは、まるで「Yahoo!ニュース」のコメント欄のようだ。私は読んでいて吐き気を覚えた。事故被害者、避難者の方はもちろん、読んで身体に変調を来す方は、第1章は無理して読まなくていいと思う。吐き気を催してでも知らなければならない事実があるという強い精神力を持つ方にはもちろん読んでほしい。

 第2章以下が、冒頭で紹介した雑誌記事に新たな事実を加え再構成した部分に当たる。大手法律事務所に属する東電の代理人弁護士が最高裁判事に次々と送り込まれる衝撃の実態が暴かれる。その中には東電の代理人弁護士を数多く擁する大手法律事務所の代表経営者だった人物まで含まれているのだ。民間企業であれば利益相反として排除されて当然の人物が「審判」を務める非常識がなぜ司法の場でのみまかり通っているのか。普通の感覚を持った人なら誰しも怒りと疑いを抱かずにはいない。

 国の責任を否定し、原子力損害賠償法の無過失責任原則に従って東電にのみ賠償を命じた2022年「6.17不当判決」。書いたのは法衣の下に東電のユニフォームを隠し着た判事たちだった。

 私も関わっている東電刑事裁判では、勝俣恒久元会長ら旧経営陣が1審・2審とも「無罪」となった。検察官役の指定弁護士の上告によって、現在、この裁判が帰属している最高裁第2小法廷には元「代表経営者」草野耕一判事がいる。福島原発刑事訴訟支援団は、草野判事に対し、みずからその任を退くよう求める署名を3月8日、最高裁に提出する。 6.17不当判決から1年後の2023年7月。この判決を乗り越えようと、全国の原発事故被害者が一堂に会した「原発被害者訴訟原告団全国連絡会」の会場で著者・後藤さんとお会いした。最高裁の腐敗を世に知ってもらうため、判検交流ならぬ「判電交流」という私の考えた造語を広めたいと提案したら「いいですね」と賛同してくれた。日本の恥ずべき「判電交流」の酷さをぜひ本書で知ってほしい。


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