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中国:ポストコロナの中国でストライキ多発 中国労働者の展望は
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〔レイバーネット国際部・I〕

かつて香港の民主派ナショナルセンター香港職工会連盟で活動し、中国国内の労働者の権 利の支援も続け、現在はイギリスに亡命しているアクティビストらで作る香港レイバー・ ライツ・モニター(香港勞權監察 Hong Kong Labour Rights Monitor)のサイトから訳し てみました。景気後退下の山猫ストですから厳しいと思います。なお、死亡した児童が通 っていた日本人学校も文中の珠江デルタの中心にある深圳にありました。合掌。 ============= ポストコロナの中国でストライキ多発 中国労働者の展望は 香港レイバー・ライツ・モニター(香港勞權監察 Hong Kong Labour Rights Monitor) 2024年9月13日 原文 https://x.gd/XKk5o 新型コロナにより中国経済は打撃を受け、製造業は依然として低迷しており、工場は閉鎖 、外資は移転し、多くの経営者らも「夜逃げ」し、経営難の被害を労働者に押し付けてい る。賃金不払い、社会保険の未納、そして強制時短を通じた自主退職の強要(出来高賃金 なので時短=賃下げとなる)などが蔓延する。江蘇省無錫にある電気自動車メーカーBYD 工場の労働者によるストライキは、会社の残業禁止に抗議するものだった。というのも賃 金が低すぎるので、残業代がなくなれば基本的な生活費を維持することが不可能だったか らだ。不幸なことに、中国では頻繁に起こるストライキは政権の残忍な介入によって抑制 されており、特に経済が不況に陥っているときのストライキの気勢を削ぐ役割を果たして いる。 ◇2023年:労働者の集団行動は7年ぶりの高水準に 中国労工通訊(CLB)の統計によると、2023年の中国の労働者による集団行動件数は1789 件で、2022年の2倍以上となり、このうち製造業が最も大きな打撃を受けた分野で、スト ライキだけでも438件で全体の24%を占め、37件だった2022年と比べて10倍以上増加した 。この438件のストライキのうち、60%近くが珠江デルタ地域で発生した。データを見る と、昨年の労働者による集団行動の数は、2015年と2016年の歴史的水準に近かった。今年 もその傾向は続き、1月から8月中旬までに労働者による集団行動は818件に上った。 中国は1980年代の改革開放以来、安価な労働力に依拠して国際市場に参入し、「世界の工 場」として知られるようになった。しかし、いわゆる「経済的奇跡」の背後には無数の労 働搾取が隠されている。20年以上にわたる急速な成長を経て経済が減速し始める中、習近 平氏は2012年に政権の座に就いたが、ちょうどストライキや労働デモの波が押し寄せるタ イミングだった。CLBの記録によると、2015年には2775件もの集団労働者行動があった。 2016年には1月だけで500件以上の抗議活動があり、年間を通じて合計2671件の集団労働者 事件が発生し、2014年の2倍となった。中国共産党は労働者の抗議活動に強硬手段と軟手 段を持ち、抗議活動の参加者を弾圧し、草の根の労働団体を解体し、活動家を投獄する一 方で、企業に対しては紛争解決をするよう圧力もかけた。また労働紛争を背景として中国 の労働法規の改正を進めたことで、CLBの調査だけでも労働者による集団行動は 2016 年 以降大幅に減少した。 ◇コロナ収束3年後も倒産の波止まらず 産業移転で失業者も発生 中国でのストライキの復活は主に、コロナによる3年間にわたる極端な封鎖が中国経済に 深刻なダメージを与えたことによるものだが、同時に外資系企業は「メイドイン・チャイ ナ」に偏重することのリスクに気づいている。コロナの期間中に多くの工場が閉鎖または 移転し、「ゼロ・コロナ政策」の終了後も製造業は回復をみせていない一方で、大手の国 際ブランドは中国に過度に依存するのは賢明ではないと認識している。例えば、2022年に アップル最大の携帯電話生産拠点の鄭州のフォックスコン(ホンハイ)で大規模な抗議活 動が勃発し、フォックスコンの労働者が通称「大白」(白ずくめ野郎)として知られる感 染予防要員と対峙した際、アップルグループは、コロナの影響で鄭州エリアの組立工場の 生産能力が大幅に低下し、その年のiPhone新モデルの発売も遅れたため、アップルは中国 からの生産移管を加速すると発表した。今年5月にはフォックスコンが徐々にベトナムに 事業を移しているとの報道があった。また、かつて5万人の従業員がいたフォックスコン 南寧工業団地(広西チワン族自治区)は徐々に衰退しており、数年前に従業員で賑わって いた状況とは全く異なっている。 報道によると、2020年の第1四半期だけで、中国では約46万社が倒産したと報告されてお り、第一財経研究院〔報道メディアのシンクタンク〕は昨年3月、「デジャヴュ:世界産 業チェーンの東南アジアへの移行に関する分析」と題した報告書を発表し、コロナが産業 チェーンの東南アジア諸国への移転を加速させたと報じている。多くの工場が閉鎖される 中、労働力の供給が需要を上回っているため、例えば加工産業が発展している広東省東莞 市では時給9元の臨時工の募集にも多くの労働者が争うように応募している〔同市の2021 年の最賃時給は18.1元〕。 ◇ 姑息な手段でリストラ費用を圧縮する資本 CLBの報道からは、景気後退時には雇用主が経営コストを労働者に転嫁することが多く、 その結果、深刻な搾取が発生することがわかる。中国の労働法によれば、雇用主は従業員 を解雇する際に退職金を支払う義務があるが、この数年は多くの「経営者の夜逃げ」のニ ュースが報じられてきた。経営者が〔倒産前に労働者にわからないように〕設備を密かに 持ち去ったり失踪してしまい、週末の休日を終えて労働者が工場に戻ってくると、経営者 はすでに夜逃げしたあとで、そうなると未払い賃金や未加入の社会保険料の補償を取り戻 すことは大変むずかしい。 もちろん、ほかにも退職金を節約する「合法的な」方法はある。最も典型的な方法は、労 働者に「週 5 日、1 日 8 時間」の労働時間を遵守させることだ。労働者の賃金は一般的 に非常に低いため、普段は長時間の残業をしてなんとか生活できる賃金を確保しているが 、雇用主が残業を減らしたり廃止したりすると、〔生活ができないので〕実質的には労働 者が自己都合で退職の道を選ばざるを得なくなる。このような半ば強制された「自己都合 退職」によって退職金を支払う義務から解放される。 ◇当局の弾圧が労働者の孤立化を招いている さまざまな搾取が労働者を立ち上がらせている。たとえば、「週休二日、法定労働時間順 守」の強制〔=手取り収入の減少〕に反対したり、賃上げを要求したり、残業代に頼らな くても生活できる賃金を要求したり。労働者の集団行動は活発化し、ストライキ、集会、 座り込み、工場封鎖など、さまざまな戦術を用いて経営者に圧力をかけている。労働者ら はまた、複数の行政部門に介入を求めたり、一部の闘争では紛争が数カ月続いたこともあ った。しかし、これらの行動はほとんど成功していない。その理由は次のように要約でき る。労働者が分散していること、景気低迷時にはストライキによる交渉力に限界があるこ と、政府による厳しい弾圧が続いており中国の労働組織が声を上げることが困難であるこ と。製造業の労働者数が減少するにつれ、最近の工場ストライキの規模は数人ないし数百 人となっているが、2016年以前のストライキは数万人規模になることが多かった。 また2015年以降、広東省の資本が東南アジアに移転したことにより、広東省の工場閉鎖が 相次ぎ、多くの労働者が補償要求者〔原文:維権者〕の隊列に参加することになった。労 働団体は、労働者と雇用主および政府との三者の交渉において労働者を支援し、法的助言 を提供してきたが、そのことが地域における矛盾を拡大すると非難されている。中国政府 は労働運動への弾圧を強化しており、例えば、2015年12月3日には、広東省の広州市や仏 山市で労働NGOの責任者やスタッフら25人余りが警察に連行された。また2018年7月には、 深圳ジャシックテクノロジー社〔深圳佳士科技〕の一部の社員が労働組合を組織しようと したとして会社から解雇され、地元の警察に逮捕され、4人の労働アクティビストが「国 家安全危害罪」で逮捕された。2023年に多発したストライキにおいて、これら労働NGOの 関与は全く見られなかった。むしろ政府と雇用者が結託して労働者の抗議を弾圧すること も珍しくなかった。ポスト・コロナ以降、中国の経済回復は不透明で、雇用状況はますま す困難になっており、社会紛争は急速に激化しているため、中国政府は起こり得る労働者 の抗議活動に対して徹底して鎮圧することが予想される。 Photo credits: @https://x.com/YesterdayBigcat Follow @HKLabourRights

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