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ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか!

児玉繁信(ウクライナ戦争について、地元のミニコミ誌に書きました) 1) 終わりが見えないウクライナ戦争 ウクライナ戦争は、もう2年半も続いており、終わりが見えません。死んだ人の数は、と てつもない数です。私の立場は非戦です。 普通だったら国際社会のリーダーが出てきて終わらせるのでしょうが、リーダーである アメリカと欧州諸国が、とにかく「戦争だ!戦争だ!」と煽り続けています。これはどう 考えてもおかしいのです。 ウクライナ戦争はアメリカによる対ロシア代理戦争です。ウクライナ政府に戦争を仕か けさせ、他方でロシアに対する経済制裁をすれば、ロシアを潰せると踏んで始めさせまし たが、この目論見が狂いました。これは、1990年代にブレジンスキーから始まり、米ネオ コンが受け継いだ米外交・軍事戦略です。アメリカの力が目に見えて低下しています。 現在の戦況はウクライナの敗北ですが、バイデン政権が敗北だと認めると戦争を続けて きた責任が問われ、大統領選で民主党候補が敗北するので、少なくとも11月までは続け ます。ネオコンは今更、方針を変えられません。2025年1月まではこの状態でしょう。 そうであっても、今やるべきは、話し合い・外交による停戦です。それを誰かがやらな きゃいけないのが、現状です。 2) 混迷する欧州 EU諸国は、アメリカと共にウクライナに武器支援しています。2024年に500億€(=54億 ドル、約8.35兆円)の軍事支援を決めました。戦争を通じて、EUがいかにアメリカに従属 しているかがわかりました。もはやEUは、かつて私たちが憧れた先進社会ではありません。 1980年代90年代に欧州への核兵器配備に反対する平和運動が広がり配備を止めさせまし た。しかし2024年、欧州へのトマホーク、核ミサイル配備を決めてしまいました。 ただEUは、トランプ政権になりアメリカが軍事支援を止めれば、代ってEUが代理戦争を 実行しなければならなくなります。そんな現実に当面しています。それゆえ、EUは今や一 枚岩ではんくなりました。停戦への希望は、欧州の2人の首相の行動に現れています。ハ ンガリーのオルバン首相とイタリアのメローニ首相です。オルバン首相は、「ウクライナ 戦争がヨーロッパの繁栄と国際競争力を損なっている」と言いました。まったくその通り です。2人は欧州への戦争拡大は止めなければならないと、主張し始めました。 ヨーロッパにとって、欧州とロシアの戦争に突入するか、平和を維持するかの死活問題 に当面しています。 欧州各国で現政権に人気がないのは、金融危機以来の新自由主義政策、緊縮財政で教育 や医療予算を削った、中間層が没落し格差が拡大した、それなのにウクライナ支援で多額 の支出をし、ロシア産の安価なガスと石油を止めインフレが高進し、経済は減退した、そ のうえ中東やウクライナから難民を受け入れたことで、社会は不満が鬱積しているからで す。この30年アメリカが中東で自分勝手にやたら戦争をしてきたため、大量の難民が発生 し流入してきました。世界の難民総数は、1億2千万人を数え、桁違いに多くなっています。 ウクライナ戦争をやめろ!支援をやめろ!難民を受け入れるな!という要求を掲げて、 既存の政党ではなく、右派や新左翼連合が支持を拡大しています。 ドイツの社民党、緑の党、キリスト教民主党、フランスの「共和国前進!」(LREM)、仏 社会党など既存の勢力は、アメリカに従い全面的にウクライナ戦争を推進してきました。 反対しているのはフランスのマリーヌ・ルペン率いる国民連合、ドイツではAfD。従来は 右派でしたが、ウクライナ戦争停戦、移民を入れるな!と要求し支持を拡大しています。 これと共に戦争反対の新左翼連合も選挙で躍進しています。 欧州では、従来の右派左派の対立構造が崩れました。欧州社会の政治構造が大きく変わ るでしょう。 3) 停戦を掲げているのはBRICSとグローバルサウス 今や、ロシアに経済制裁しているのは20ヵ国だけ、ウクライナ戦争でウクライナ支援し ているのも、欧米+日本・韓国だけになりました。BRICSをはじめ、世界の大多数の国々 は、ウクライナを支援しない、交渉による解決、停戦を求めています。中国は停戦案を提 示して、100ヵ国の賛成を取り付けようとしています。 ロシアは、一貫して交渉による解決を言い続けています。2022年3月イスタンブール合意 で停戦の可能性があったことを、2024年になってNYT(New York Times)が暴露しました 。アメリカでも戦況からして交渉解決しかない現実を受け入れるべきだとする動きが出て いるからでしょう。2024年6月14日プーチン大統領は和平案を提案しています。しかし、 西側メディアはまったく報道しませんでした。6月15,16日に西側諸国がジュネーブでウ クライナサミットを開催しましたが、BRICS諸国はロシアを呼ばなければ何の意味もない として、宣言に署名を拒否しました。 4) ウクライナはどうするか? ゼレンスキー大統領の任期は2024年5月20日まででしたが、戒厳令を理由に大統領選挙を 延期し、居座っています。ゼレンスキーの支持率は20%程度にまで落ちています。ザポリ ージャ原発は、開戦当初からロシアが占有していますが、原発に攻撃がされています。ウ クライナ軍しかあり得ませんが、西側の政府も脱原発運動もこれに触れません。事実は事 実として把握しなければなりません。ゼレンスキー政権がどんな政権か、自分で判断しな ければなりません。 すでにウクライナ兵士は50万人以上が死に、戦傷者を含めれば150万人に達しています。 ウクライナで強制徴兵――街中で男性を拉致して徴兵するウクライナ発の映像がyou tube で多数流れています。 戒厳令下にもかかわらず「東部4州を譲り渡しても、停戦すべきだ」とするウクライナ世 論が30%程度にまでなりました(孫崎享)。選挙をすればゼレンスキーは敗北します。そ のためアメリカの指示通りに戦争を続け、ウクライナ国民は犠牲にして、アメリカ、ヨー ロッパと日本とからずっとお金を出し続けてもらう、これしかありません。 そもそも、東部のロシア系ウクライナ人をウクライナ軍が攻撃し内戦状態にしたのです から、今となっては東部住民の意思で帰属を決める以外にありません。 戦況は、監視衛星による位置情報をもとにした長距離のミサイル、大砲、ドローンの撃 ちあいとなっています。その火力比は、ウクライナ1に対してロシアは5〜10。死傷者数は 火力に比例しており、ウクライナ兵の被害は一方的に拡大しています。戦争方法にゲーム チェンジが起き、戦車や戦闘機は役に立たなくなっています。 ウクライナ国民は戦争を継続する状況にありません。 5)  決めるのはアメリカ しかし、戦争を継続させているのはアメリカ政府です。ウクライナではありません。 2024年11月の大統領選挙までは、米民主党、ネオコンはやめるにやめられません。大手メ ディアを握っていますから、偽情報を流しても続けるでしょう。アメリカの支配層である 金融資本、軍産複合体、イスラエルロビーはネオコンと米民主党を使って、戦争政策を推 し進めてきました。そのせいで、金融資本に富が集中し、米社会の格差拡大が進み、社会 が荒廃してしまいました。アメリカの力は確実に低下してきました。 ただ、今の情勢だと、トランプ政権になりそうです。トランプ政権だと、停戦の可能性 は大きくなります。彼の支持層は中西部の白人、没落しつつある白人層です。アメリカの 支配層であるネオコンや金融資本、軍産複合体、イスラエルロビーからは遠いところにい ます。ただ、実際に停戦になるかどうかは、不確定です。 6) 今後の世界 現状がまずいことは、欧米、G7の政府は分かっていますが、止める者がいません。G7首 脳は、岸田さんも含めアメリカの顔色を窺うるばかりです。ちなみに、国際社会で日本政 府、岸田首相は、アメリカのマリオネットだという評価が定着しています。トランプ政権 に変われば、トランプに従うのでしょう。 今の国際社会の狂った状況です。別の言い方をすると、欧米が支配してきた世界秩序が 終わろうとしています。覇権を失いたくないと欧米首脳が悪あがきをしているのです。 欧米の秩序にはついていけないグローバルサウスの政府と国民が、BRICSやSCO(上海協力 機構)に結集し、脱米の方向にすでに踏み出しています。 私たち市民運動は、このような動きをきちんと把握しておかなくてはいけません。戦争 を支持する市民運動は、必ず崩壊します。戦争にどういう態度をとるべきか、事実を把握 し、自身の態度をいつも確認しておかなくてはなりません。ウクライナ戦争は止めろ!停 戦せよ!と常に声高に主張しなければなりません。 7) 最後に、追加して きちんとした情報を自分で入手しなくてはなりません。特に、海外情報については、日 本の主要メディアは信頼できません。アメリカ政府が戦争をすすめているので、米メディ ア、戦争研究所(ネオコン)は偽情報であふれています。彼らは謀略戦も戦争の一つだと 位置づけています。日本のメディアは、この種のアメリカ情報ばかりで信頼できません。 知識人の大半もひどいレベルです。 大切なことは、一次情報を手にすること、情報の出所を常に確認すること、その上で自 分の判断を確立することです。例えば、プーチンの演説であれば、演説そのものを読み自 分で判断すること、評者の解説から情報を得るのはダメです。 孫崎享さん、浅井基文さんのブログを推奨します。元外交官らしく一次情報を入手し、 まとめています。 ジェフリー・サックス/コロンビア大学教授、ミアシャイマー/シカゴ大学教授の論評を 読むべきです。英文でも、AI翻訳すれば読むことはできます。 「耕助のブログ」(https://kamogawakosuke.info/)、「寺島メソッド翻訳News」
(http://tmmethod.blog.fc2.com/)などで欧米の論者の論文を翻訳し紹介し ています。(2024年8月2日記)

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