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坂本龍一氏の「神宮外苑再開発反対」を無視したNスぺ

2024年04月09日 | メディアと日本の政治・社会
   

 7日のNHKスペシャルは「Last Days 坂本龍一 最期の日々」と題し、昨年3月28日亡くなった坂本龍一氏について、「希代の音楽家はどう死と向き合い、どう人生を締めくくったのか」(NHK公式サイト)を描きました。

 坂本氏は、がん闘病の苦痛の中でもスマホで日記を書き続けていました。
 主治医には「副作用で音楽活動に影響がでることは絶対にやめてほしい」と申し出て治療(延命)より音楽活動を選択しました。

 死の床にあっても、自らが作曲した曲の音楽会をスマホで見ながら、腕を挙げてタクトをとる姿は壮絶でした(写真中)。

 音楽家としての生を貫いた人生、また、がん治療に対して「クオリティ・オブ・ライフ」を選択した最期は示唆に富み、がんサバイバーの1人としても強い感銘を受けました。

 しかし同時に、番組には重大な欠陥があったことを指摘せざるをえません。

 それは、坂本氏が死の直前の昨年2月24日、小池百合子東京都知事に宛てて書いた「手紙」(意見書)について、まったく触れなかったことです。

 その「手紙」は、小池知事が強行しようとしている神宮外苑(写真右)再開発の中断・見直しを求める「意見書」でした(2023年4月4日のブログ参照)。

 「意見書」には、「目の前の経済的利益のために先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません」「これらの樹々を私たちが未来の子供たちへと手渡せるよう、現在進められている再開発計画を中断し、計画を見直すべきです」と記されていました。

 「意見書」を書いた動機を坂本氏は共同通信のインタビューでこう述べていました。

「現在がんの闘病中で、音楽制作を続けるのも難しいほど気力・体力ともに減衰している。手紙を送る以上の発信や行動は難しい。市民一人一人がこの問題を知り、直視し、それぞれが声を上げるべきだ」

 まさに最後の力を振り絞った渾身の「意見書」だったことがわかります。坂本氏の「最期の日々」「どう人生を締めくくったのか」を描くなら、この「意見書」に当然触れるべきでしょう。

 神宮外苑問題だけではありません。坂本氏は「戦争法(安保法制)」にも強く反対し、憲法九条・前文の平和主義が蹂躙されることにも強い危惧と批判を持ち続けました。日記にはそれらの問題についての記述は何もなかったのでしょうか?

 政治・社会問題に対する坂本氏の考え・主張にまったく触れないのは、坂本氏に対する冒とくであり、同氏の業績・人生の評価を一面的なものにすると言わざるをえません。切り捨てた番組(NHK)の意図が厳しく問われます。

 坂本氏だけではありません。いかに優れた芸術家でも、いや、優れた芸術家であればなおさら、その人生、最期を知るうえで、政治・社会問題についての考え・主張・行動を振りかえることは必須です。

 それがタブー(政治的思惑)なく描かれ、肯定・否定両面から学び、生かしていく。芸術家・芸能人も生前から政治・社会問題について自分の意見を忌憚なく述べる。そんな社会にしたいものです。

Created by sasaki. Last modified on 2024-04-09 07:12:08 Copyright: Default

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