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ガザのジャーナリストが会見、ジェノサイドの実態語る

竪場勝司

 ガザやロンドンを拠点に活動するパレスチナ人ジャーナリスト、ユーセフ・アルヘルーさん(43/写真)が来日、12月16日、東京都内で記者会見し、イスラエルによるジェノサイドの過酷な実態などを訴えた。

 会見は在日パレスチナ人のグループが主催した。ユーセフさんはガザで生まれ、ジャーナリストとして20年ほど活動している。約10年前にイギリスに移住した。ジャーナリスト、ドキュメンタリー映画監督であると同時に、政治アナリストでもあり、イギリスのメディアなどにも出演。今回のジェノサイドが始まってからは、14か月間ずっと、ジェノサイド関連の報道を続けている。

イスラエル軍により199人のパレスチナ人ジャーナリストが殺害される

 会見したユーセフさんによると、これまでパレスチナ人のジャーナリスト199人が殺されている。「イスラエルが行なっているのは、ジャーナリストの口を封じることで真実を伝えないようにすることだ」と語気を強めて批判した。「私たちジャーナリストには大きな責任がある。真実を伝え、現場で何が起こっているかを報道する。特にガザにいるパレスチナ人ジャーナリストたちは、声を持たない人たちに声を与える役割がある」と語った。

 これまで、ガザには外国からのジャーナリストは立ち入りを許されていない。イスラエルが、現地での戦争犯罪を報道しようとする外国人ジャーナリストの入国を阻んでいるからだ。

ガザの人々に対する集団懲罰と民族浄化 武器の実験場にも

「ガザにいるすべての人は集団懲罰の対象となっている。2023年10月7日に起こったことに対しての罰を科されている状況だ。ジャーナリストも例外ではない。イスラエルは『ジャーナリストたちがハマスを支援しているから、攻撃の対象にする』と言っているが、実際にジャーナリストたちが行なっているのは真実を報道することだ。新しい現象として、ガザでジャーナリストになりたいという若者たちが増えている。なぜかというと、ほとんどの西側のメディアがイスラエルを支持しているからだ」


「今回の戦争でイスラエルは、ガザを絶滅収容所のような場所にしている。誰も出ることができず、囚われた250万人が、自分たちの死を待っている状況だ。ガザは実験場のような形で扱われてきた。イスラエル軍はアメリカ製やドイツ製の武器をパレスチナ人の上に落として、どんな結果が出るのか、実験をしている。パレスチナ人をモルモットのように扱っている。こういった残虐な行為を、世界が黙認していて、そういった状況が1948年から継続している」

 23年12月、ユーセフさんの妹と妹の7人の子どもがいた建物に爆撃があり、1発の爆弾で全員が死亡した。8人の遺体はまだ瓦礫の下に埋もれている状態で、今も遺体を回収できていない。同じようにガザでは何千もの人々が瓦礫の下に埋もれたままだ。

「今ガザで起こっていることは、人がつくり出した飢饉だ。イスラエルは『支援物資を入れている』と言っているが、それは海に一滴水を落とすような行為で、実際には意味がない。イスラエルは強制的に人々を居住地から追い出している。200万以上の人々に避難命令を何回も出し、人々はテントの中で暮らしたりしている。雨が降ると洪水になり、 悲惨な状況になってしまう。避難している人たちはどこにも行く場所がなく、飢餓状態だ」

「ガザで行なわれていることは民族浄化だ。イスラエルは住宅地域一帯を破壊して、人々を強制的に立ち退かせ、ガザの人口構成を変えようとしている。この14か月間、ガザの人たちには電気が通っておらず、夜になると真っ暗だし、寒い。人々は浄化されていない水を飲んでいる。衛生状態もすごく悪く、病気にかかる人もとても多い。ジェノサイドの影響として、人々はゆっくり殺されている、ゆっくり死んでいる」

 ユーセフさんはヨルダン川西岸地区も攻撃の対象になっていることを指摘したうえで、「イスラエルは『10月7日のハマスの攻撃に対する復讐だ』としているが、ハマスのいない西岸地区が攻撃対象に入っていることから、イスラエルの主張が通用しないのは明らかだ。イスラエルの攻撃対象となっているのは戦闘員ではない。パレスチナの人々が攻撃されている。これは集団懲罰であって、行なわれているのは民族浄化だ。イスラエルは和平交渉についても積極的に参加していないし、占領下にある人々に対して、何の責任も負おうとしていない」とイスラエルの姿勢を厳しく批判した。

ガザを美しかった場所として記憶するためドキュメンタリー映画を制作

「イスラエルは平和が達成されるチャンスをすべて握りつぶしている。ネタニヤフ首相はパレスチナ国家の存在を認める素振りは全くない。パレスチナ人の存在自体が『イスラエルの脅威』だという扱いをしている。ヨーロッパでの弾圧を逃れてきたユダヤ人たちを、私たちパレスチナ人が迎えていたこともあったが、そういったことを無視して、私たちを裏切っている状況だ。パレスチナの人々は平和を求めている。イスラエルの犠牲者として私たちがおり、イスラエルが犠牲者であるかのように主張しているのは間違いだ」

 日本に求めたいことについて、ユーセフさんは①パレスチナを国家として認める②UNRWAへの資金提供を再開する③イスラエルへの武器の提供を止める④和平プロセスを後押しする⑤パレスチナ人の帰還する権利について後押しする、などを挙げた。「日本はグローバルサウスの中で、主要な役割ができると思っている。パレスチナと日本は友好関係にある。私はパレスチナの人々を代表して、日本のみなさんに感謝したい」と述べ、日本の果たす役割に期待をにじませた。

 「23年の夏、私はガザを訪れ、美しい場所、歴史的な場所、娯楽の場所などを撮影した。こうした素材を基に、今ドキュメンタリーを制作している。ガザを戦争地帯のように描くのではなく、美しかった場所として、記憶したいからだ。ガザは『牢獄』ではあるが、それを私たちは美しくつくりかえた。そういった場所に再建する希望としても、ドキュメンタリーを意図している」

 ユーセフさんは「この映像は宝物だ。これから育っていく新しい世代は、この美しさを経験することができない。すべての街並みが破壊され、跡形もなくなっているからだ。これが、暴力的でとても残酷な占領政策の結果だ。この状態から美しさを取り戻すために、日本の助けを必要としている」と訴え、「世界の自由、並びに日本の自由は、パレスチナの人々の自由なしには、不完全だ」という言葉で会見を締めくくった。

 この後、ユーセフさんの新作ドキュメンタリー映画『The Phoenix of Gaza(ガザの不死鳥)』の予告編が上映された。25年1月にアルジャジーラでオンライン公開の予定だ。日本を含め各国での上映に関しては詳細未定だという。


Created by staff01. Last modified on 2024-12-18 09:59:13 Copyright: Default

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