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LNJ Logo レイバーネットТV詳細報告:政権与党の後退、だか立憲野党が勝利したのか?微妙な結果に戸惑う人々
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 今回の総選挙を振り返ると、もろ手を挙げて保守政権に鉄槌を浴びせたとは言えないのではないか。「どう評価していいのか分からない」というところか。それを見事に斬ってみせたのが政治学者の纐纈厚氏。与野党の差が拮抗する中で、今こそ各自が自分の生活を守るために政治への関心を持ち続けたいと思う。(報告:笠原眞弓)

                 <2024総選挙、そしてその後を考える>
 2024/10/22 レイバーネットTV・第208号
・進 行: ワカメ
・出席者:纐纈 厚(たたかう政治学者)
      柴田武男(レイバーネット運営委員)
  →視聴サイト

◆今回の選挙で問われた国防関係費
・安全保障の問題⇒円安の中で国防費は天文学的数字となる
 予算から見ると、日本は一般会計が112兆円で、そのうち単年度での国防関係費は7兆9172億円。5年間で43兆円。
 アメリカの国防費は年間135兆円(1ドル150円で概算)。軍事費だけで日本の国家予算を越えている。
・軍産共同体が牛耳る国家権力の世界
 纐纈厚氏は、日本は、ローンを含めると60兆円になる。現在円安なので、実際には天文学的数字になるだろう。当然大きな権力が付きまとうから、深刻な問題である。
 アメリカの長官(日本でいう大臣)は、ほとんどが軍事産業出身。ということは、軍産共同体の巨大な権力が世界、ひいては日本が動かされているということ。
・お金自体が権力になってしまうのでは?
その通り。なぜ明日起きるか分からない戦争へ投資されるのか?それは、お金にとりつく権力体があるから。軍拡すれはするほど権力が膨らんでいくということだ。
・軍事費はブラックボックス!法律違反なのに
 軍事予算の不透明性は「予算をとってから何を買うか決める」ことができるから。これは、日本の法律にも違反するのだが、まかり通っているのが実態。
・基本的な危機の原因の議論もなく進める軍事予算会議
 昨年、財政金融委員会に呼び出され、どこから防衛予算をとるかの議論をした。たが、その前提としての日本の防衛(軍事)予算が安全保障に資するかという議論は皆無。中国が怖いとか言うだけで、具体的な話はなく、ただ予算をつければ、理想的な安全が保障されるという話だった。

◆各政党の安全保障論
・自民党の選挙公約「ルールを守る」には笑ったが…
 戦前の日本は、「国防方針」を1907年(明治40年)から1936年までに4回改定したが、全て「敵国」を明記している。陸軍はロシア、海軍はアメリカと。その国に向けて、軍拡が上積みされていった。 その時代が終わった現在、平和憲法がありながら安保三原則に中国を仮想敵国として明記した。これは、平和憲法を自ら否定すること。他国の人たちにも「日本は戦前帰りしたのですね」と言われる。
・”脅威”なのは日本にとってなのか、他国にとってなのか?
 ここで確認したいのは、中国や朝鮮人民共和国(北朝鮮)が日本にとって”脅威”なのかということ。日本はアメリカの指示を受けて、常時中国に武器を向けている。そういう状況下では、やはり日本が”脅威”そのものとなる。
・日本の国家予算とほぼ同額の世界の武器製造費。武器の使われる先は?  国会での私の発言は「脱抑止、脱同盟という基本的な平和方針を掲げ、隣国に与える脅威を削減していけば、相手も軍拡などしない」ということ。
 中国は現在35兆円の軍事予算とか。作られた脅威で、中国もアメリカ、日本も「巨大な軍事費」になっている。世界で304兆円の軍事費のうち、1/3が武器をつくるためと言われる。つまり、日本の国家予算とほぼ同額が世界の武器製造費。
 日本製の武器はアメリカ経由でウクライナに搬送され、韓国はポーランド経由でウクライナに輸出。
 紛争を煽り立てることで守られる「世界の平和」は、真の平和と言えるのか?

◆日米同盟の強化と盛んな中国・ロシアとの交易
・日米同盟に対する否定的立場をとるのは2政党のみ
 現在日米同盟に否定的な立場で安全保障を展開しているのは、社民党と共産党のみ。平和の党と言われた公明党を含め、安保堅持、安全保障は日米同盟の強化と言ってそれ以上は思考停止している。 ・最大の安全保障は日中関係をよくすること
 実は、日本にとって最大の安全保障は、中国との関係をよくしていくこと。軍事面ではなく、経済、政治、文化の面で。そのことを政党トップが理解していない。「同盟を強化しないと明日のウクライナになる」というのが岸田の言い回しだったが、なぜウクライナと日本を同じ土俵に上げて論じるのか?愚の骨頂である。日露戦争が英露戦争の代理戦争だったが、それをここで繰り返すわけにはいかない。

◆普天間基地の辺野古移設が沖縄の基地負担軽減になるのか
・沖縄で社民党と共産党が各1議席確保できたことの意義
今回沖縄の4議席中、オール沖縄が社民党と共産党で各1議席確保できたということは、大きい。それは「辺野古基地は作らせない」という意思が沖縄の有権者の中にあることを表明している。
 有事に嘉手納の基地では不足と辺野古に基地を作ろうとしているが、ここには出来ないだろうし、アメリカですら必ずしも必要と言っていない。それでも作っているのは、与党等の一部の人たちの大きな利権が絡んでいるから。その犠牲を沖縄の人々と本土の人たちが被っている。
・日本は本当に独立国?―アメリカのための政治をやっている日本政府
 ドイツも韓国もアメリカとの地位協定を変えた。ところが日本はそのまま。沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落した時(2004年)あの地域が突然外国になったことでも分かるように、日本列島、基地あるころに人権被害、治外法権が戦後80年も続いている。アメリカのための政治をやっている日本の政治の限界である。
 石破さんは地位協定の見直しを言ったが、問題は内容。自衛隊基地をグアムに(会場失笑)などとんでもないことを言っているが、具体的なものは何もない。権力基盤も弱くなった今、一言も言えないのでは?

◆国民民主の立場は?国民の生命財産を守るつもりはない
・「安保堅持」の本質→アメリカに従属すれば……
 国民民主、立憲民主が、安保堅持、カッコつきながら専守防衛を守ると言っている。ところが安保は「日本の国民をアメリカの軍事戦略の生贄にする」ということをしっかり押さえるべきだ。
 国民民主は「抑止力」を高めれば安全が担保されると言う。つまり「アメリカに従属すれば、カッコ付の安全が担保される」こと。これは党としての公約なので、彼らに国民の生命財産を守るつもりはないと解釈している。
・「抑止力」という言葉の真の意味
 柴田さんは「抑止力」という言葉のインチキさを指摘。抑止のためにこちらが軍拡をすると、相手国も軍隊を強化することを全く考えていない。「反撃能力」を強める=先制能力も強める。終わりのない軍拡競争になると。
・戦場域が宇宙空間にまで広がる―自衛隊も宇宙戦に参画
 世界の戦場域が地上から海上、空中、海中と広がり、ついに宇宙空間にもミサイル発射基地を作るという。自衛隊もそれに備えた動きをしている。
 南極は地球上のどこへでもミサイルが撃てるため1国の占有を避け、国際条約で共同の基地にした。そのため1国だけでは使えない。そこで、日本もアメリカと共同で宇宙空間に基地を作ることになった。膨大なお金がかかるのに。

◆各党の国防路線は?
・今回安全保障の問題は出てこなかったのは難しいから
 自民党と国民民主の国防路線は、全く同じ。れいわ新選組、社民党は「非武装中立非同盟」と明言しない。支持者の中の「いくら何でもそれは……」という人たちへの配慮だろう。今回の選挙で、唯一言い切っているのは、国政に議席はないが新社会党だけ。

◆乱鬼龍の川柳コーナー
 ホンモノの総括こそが明日拓く   乱鬼龍
 朝令暮改いろいろ変わる新総理   八金
 纐纈さんのコメント「政治家は何枚もの舌を持っている。1枚舌、2枚舌、3枚舌。どれが自分の舌か分からなくなっている」

◆争点だった賃金の低下
・統計に表れる賃金の低下 柴田さんの解説
 実質賃金が下がると、不足分を補うために家族全員で働くことになる。つまり短時間労働者や時給の低い人が統計に入って来る。それによって、統計に実質賃金が安く表れてくる。一方、大企業で下がっていないところもある。生涯賃金が2億3〜4千万円が普通だが、いま7億という商社もある。れいわが失われた30年間と言い、実質賃金の低下を言っている。
・自民党の人材の流動化を進める
 自民党は、非正規雇用はだめだとは言わず「労働市場の円滑化」と言う。つまり企業本位に不必要な人材の首切りができるようにするということ。
 岸田政権は「分配なくして成長なし」と言ったが、すぐ「成長なくして分配なし」と、不必要な人材は首を切れる制度にした。「首を切られた人は、本人が悪い」と、スキルを上げて再挑戦せよということになった。
・「同一労働同一賃金」は間違え
 「同一労働」ではなく「同一価値労働」といわなければ、意味をなさない。本格的に正規・非正規の格差を考えるなら「職務評価表」を作って、正規と同じ仕事をしている、あるいは正規の80%の仕事をしているということを可視化し、それだけの賃金を支給しなければならない。
 もう一つは、男女差別。会計年度任用職員の80%は女性、つまりジェンダー問題である。そのことも正規・非正規の賃金格差に現れてくる。 ・産業構造の転換を見据え社会人向きの再教育をする。
 これは、就職氷河期時代なので、40〜50代の人への再教育は、難しい。それしかないところに自民党の賃金政策の貧弱化がある。

◆比例に見られる政党得票数
 比例の得票を見ると、国民、れいわ、立民が票を伸ばし、自民、維新、公明、共産、社民が減らしている。前回なかった参政党(187万)、日本保守党(114万)も得票している。
 それら等を踏まえて、会場や視聴者とのやり取りをしたい。

◆会場とのやり取り

・会場1 若者に聞くと、社・共は「古い、硬い、年寄りばかり」とのこと。それを聞いて、戦後民主主義の終わりに来たと思った。それを担ってきた社・共の衰退し、戦争したいところが伸びている。私たちの問題として考えないと、来年はもっと悪くなるのでは。 れいわは伸びたが、社・共的原則がない。政府は悪いが、変えていく勢力があまりにもだらしない。

・会場2 今回2つの民主党と名の付く党があったが、比例での党名処理は納得してのことなのか…。(納得しての略称使用では。)
・会場3 軍拡が無かったら日本はどうなるのだという議論に、国民は騙されている。それより治山治水対策は完全に崩壊している。そして米不足もアメリカの属国としての間違った食料政策のつけが来ている。戦争が始まったら、どの政党も挙国一致で戦争に向かう。それらについてよく話し合う必要があるだろう。

纐纈:1番への答えの前に、国民民主の617万の票は3割り方自民から流れたとしても、玉木さんの価格と賃金との関係を「価格弾力性」という言葉を使って生活第一的なことをSNSで主張している。かなり若者から幅広い中間層をゲットしたと思う。4倍(7議席が28 )になったのは出来過ぎだか、他の政党も学ばなければならない。

纐纈:1番へのコメントだが、共産党が伸びなかったのは、裏金問題に特化しすぎたと言える。赤旗のスクープは大きかった。立憲の幹部から共産党の幹部に今回の選挙の重要人物は共産党だと言った。「桜を見る会」のスクープも新聞赤旗だ。民主主義の根幹にかかわる裏金は大事だが、それだけでなく、生活(経済)問題も言わなければならなかった。公明党も同様に、立候補者の高齢化問題もあった。来年夏の参議院選挙で頑張ってもらわないと「凋落」という言葉がちらつくと個人的には思っている。

・国民民主が力を入れたのが「手取り額を増やす」103万円の壁の撤去
柴田:税金免除の金額の103万円の壁を取り払い、178万円にするというのは、分かりやすい政策で、一見素晴らしく見えるが、小手先のこと。対象者はほんの一部で、この金額では生活できない。だが、雇用者から見ると、年収を抑えるためのバイト撤退が減り、雇用しやすくなるし、働く側は賃金が増えるという効果がある。だが、これを推してくる国民民主に情け無さを感じる。

ワカメ:れいわの政見放送見たが、とても分かりやすかった。れいわの街頭演説で、最後に「記念写真撮りましょう。この写真をSNSにアップして」という。これは若者にアッピールする。それに比べて共産党や社民党は正論過ぎて、頭に入ってこない。

会場1:れいわは街宣のトップで「質問ありますか?」から入る。これまでは上から目線ではじまるが、れいわは違う。民主的。若者をつかむ方法としてはいいのでは?

会場4・賃金は「実質賃金」は30年前の2分の1、国立大学の学費は40倍に。数字でごまかされないように。
・産・軍(官僚)・学が一体となっている体制で私たちの命や平和は守れないことを堂々と言うべき。
・社民と共産が伸びないと問題だが、何しろ対話が大事。皆さんも知人・友人に話しかけているか?
・税金をみると、デンマークは日本の60倍。しかし、保険料ナシで医療費無料。具体的な話をしなければ、票は伸びないと思う。 柴田:高齢化で増える社会保障費の問題では、経済学者は増税論だけで、だめなのですよ。

会場5・今回当確がなかなか出なかったことと、投票率が伸びなかったこと。いつも投票している人しか投票していないということ。つまり、関心が低い。
・立憲が伸びているように見えるが、投票率が伸びていない。つまりこれまで自民に入れていた人たちが、裏金問題などで立憲と国民とれいわに流れたのとSNSの使い方が上手なところが伸びているだけ。
現在103万円まで非課税の上限を178万円にするというのも、その金額では生活できない賃金なのに、まるでいいことのように言っていることに疑問を持つ。
・消費税を下げると言っているが、例えゼロになっても使うお金がないので、自分の生活は変わらない。つまり、「安心して働ける賃金を出せ」といいたい。

会場6:地元の市民連合にかかわっていて県の市民連合の「振り返り会」では元気がなかった。県内で2か所しか統一候補が出来なかった。街宣のスピーチに生活実感がないのが問題で、こちらの工夫が必要。今選挙に行っていない人たちが、選挙に行きたくなる呼びかけをしていきたい。足が地についた運動をどう育てていったらいいか知りたい。

纐纈:山口で市民連合を立ち上げ、熟議を重ねてきた。2016年の参議院選挙の折、既成政党でない人をと自分が推薦された。その時、神輿に乗るのは嫌だ、みんなが前で歩かせてくれたらと引き受けた。学者生活しか知らなかった人間が、3か月間さまざまな立場の人たちと話し合い、18万3千票を頂いた。負けたけれども学者だけでは得られなかったこの経験は、貴重なものだった。

会場6:その後、野党共闘が今後出てくると期待感を持っていたが、どうですか?今回、ほとんどできなかった。来年の7月の参院選はどうか?
  纐纈:政治は多党政党制の時代に入り、生活実感を持っている労働者や市民がかかわっていかなければ政治は変わらない。つまり野党共闘、連立政権の成否にかかっている。その時、市民運動(市民連合)が主役になって行ことが大事になるだろう。そういう意味での総括もやるべきだと思う。

チャット1:今回自民・公明・共産・維新と上意下達のイメージを持たれている党がそろって後退したことは、党内民主主義の在り方が問われた選挙だと思ったが?

チャット2:れいわと国民が強い傾向が見られた。どちらもSNSの効果ではないか?

柴田:これまでは2大政党の連立政権だったが、これからは乱立になり、どう連立を組み、どんな政策をするかが政局の在り方となる。有権者に「利権でくっつきます」とは言えない。「こういう政策を実現したいからやる」という。その時市民側が逆にこういう政策をしてほしいと、市民運動側の力量を発揮する。その時に、問われるのは生活と労働だ。103万ではだめ。正規と非正規、家父長制に基づいた労働形態など、社会の在り方を根本的に問うべき。選挙が終わったから、市民運動の出番があると思う。
ワカメ:新ししい政党が伸びていくのは悪い話ではないと思う。見張っていくのが市民の責任だと思う。

◆纐纈さんの近著紹介
 抑止力、同盟の問題など、否定的立場で述べてきたが、それらについて書いた本を紹介する。『戦争をする国日本と反戦・護憲運動のこれから』『ウクライナ停戦と私たち』『リベラリズムはどこへ行ったか』『自衛隊加憲論とは何か』『文民統制―自衛隊はどこへ行くのか』など。

★次回は11月13日19時30分「マイナ保険証について」


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