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米国労働運動 : トヨタのエンジン工場でUAW組織化始まる
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【解説】 全米自動車労組UAWは昨年10月のビッグスリーに対する歴史的なストライキの勝利に満足することなく、直ちにビッグスリー以外の他社の未組織工場の組織化に取り掛かっている。それはフォルクスワーゲン、ヒュンダイ、メルセデス・ベンツなどこれまで組合がなかった外資の自動車工場で、その多くが組織化が困難な南部の州で操業している。今回の翻訳記事はその中のトヨタのエンジン工場での組織化の開始を告げている。組織化はまず組合により代表されることを認める授権カードを労働者から集め、労働者の3割を越えれば、組合認証選挙の申請を行うことができる。しかし、選挙手続きが始まると会社側の妨害、切り崩しが始まるので、3割を大きく超えるカードを集めてから申請するのが普通である。したがってトヨタのトロイ工場では最低ラインの3割を集めたところなので、組織化の第一段階が始まったばかりであり、これからの組織化の長い闘いが注目される。(レイバーネット国際部 山崎精一)*毎月1日前後に「レイバーノーツ」誌の最新記事を紹介します。
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トヨタのエンジン工場でUAW組織化始まる

ルイス・フェリス・レオン(レイバーノーツ・スタッフ/オーガナイザー) 2024年3月6日

*組織化の第一歩、3割の組合支持カードを集めたミズーリ州トロイ工場のトヨタ・労働者たち

 フォルクスワーゲン、ヒュンダイ、メルセデス・ベンツで組織化キャンペーンが発表されたのに続き、世界最大の自動車メーカーであるトヨタのミズーリ州トロイのエンジン工場でも組織化が始まった。全米自動車労組UAW2は1000人の従業員中、3割の組合支持カードを集めることに成功した。

 セントルイス市郊外にあるトロイ工場で働く労働者は、年間260万個のシリンダーヘッドを製造している。この工場がシリンダーヘッドの製造を中止すれば、北米にあるトヨタの全エンジン工場への供給が断たれることになる。トヨタは、新型コロナのパンデミックによる操業停止や世界的なサプライチェーンの混乱を受けて、チップやその他の在庫の供給を増やす努力を続けている。

 自動車のボディにおいて、このシリンダーヘッドは人間の肺のように必要不可欠なもので、燃焼室への空気と燃料の流れを制御し、走行中の自動車が性能を発揮する原動力となっている。

 新しいビデオ「我々がトヨタを作っている」の中で、労働者たちはその性能の代償について説明している。「トヨタのエンジンは長持ちすると言われます。それを可能にしているのは、私たちの手であり、背中であり、膝であり、仕事なのです。その証拠に、私たちは毎日のように、負傷し手術を受け、障害を背負っています。」

休息と回復のための時間

 なぜトヨタ労働者はUAWに加入しようとしているのか? 家族と過ごす時間を取り戻し、休息して負傷から回復したいのだ。「私たちの体がトヨタのエンジンのように長持ちするように」と、別の労働者はビデオの中で語っている。

労働者たちは過酷な作業スピードについて語る。夏は摂氏38度を超える蒸し暑さの中、10時間や12時間のスケジュールで働く。その結果、身体は壊れ、腱板を断裂したりするのが、この工場でよく見られる負傷である。ある女性労働者は頭蓋骨を骨折し、耐え難い偏頭痛に悩まされている。

 「工場は安全ではありません。」とチームリーダとして働くジェイ・フチュリはプレス発表の中でこう証言している。「機械から出てくる砂やシリカの粉塵、化学物質を掃除するために、デッキの下に潜り込まされた。そこは閉鎖空間だった。人工呼吸器と防護服を着るべきだった。与えられたのはKN95マスクだけだった。家に帰ったら、髪にも服にも下着にもホコリがついていた。世界で最も裕福な自動車会社が、どうして基本的な安全対策を守らないんだ?」

賃上げの先制攻撃

 昨年10月、UAWの組織化の機先を制しするためにトヨタが賃上げを行ったと、労働者たちはレイバー・ノーツに語った。アラバマ州ハンツビルのエンジン工場では、最高賃金を32ドルに引き上げ、そこに到達するまでの期間を8年から4年に短縮した。

 ケンタッキー州ジョージタウンにあるトヨタの組立工場で働く労働者によると、同社はそこでも最高賃金までの昇進期間を半分に減らしており、最高賃金はライン労働者は2.94ドル増の34.80ドル、熟練技能工は3.70ドル増の43.20ドルだという。

「会社には好きなスローガンがある、一つのトヨタ」とライン労働者のジャレッド・ウェーデは言う。「ケンタッキー州やインディアナ州と同じように、トヨタの看板をトロイ工場の外に掲げている。でも、私たちの賃金はそこでの賃金には遠く及ばない。トヨタがいくら稼いでいるかは知っている。私たちにもっと賃金を払う余裕があることも知っています」。

 UAWのプレスリリースによれば、9%の賃上げを実施した後でも、組合のないトロイ工場の自動車労働者の時給は、組合のある同じような工場の労働者よりも4ドル低い。

ビッグ3と対等

 「ビッグ3との新しい労働協約を見て、私たちには組合が必要だと気づいた」と、同工場の組合員チャールズ・ラシュリーは言う。「UAW組合員があのような手当や賃金を求めて交渉できたなんて信じられない。私たちの賃金や手当が違うのはおかしい。トヨタはビッグ3よりも稼いでいる。だから、私たちの賃金が低くて良い理由はない。私たちがいなければ会社は成り立たない。それ相応の報酬を得るべきだ」。 トヨタは先月、通期の営業利益予想を9%(330億ドル)上方修正した。トヨタは1月にアメリカで143,241台を販売した。

 UAWが15万人の自動車労働者を組織化するという野心的な目標を発表した昨年11月以来、未組織の自動車メーカー13社で1万人以上の労働者が組合支持カードに署名している。テネシー州チャタヌーガのフォルクスワーゲン、アラバマ州バンスのメルセデス、アラバマ州モンゴメリーのヒュンダイのほか、全国20カ所以上の工場施設で公開の組織化キャンペーンが実施されている。


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