
投稿者 : ジョルディ・オリオラ・フォルチ(カタルーニャ州バルセロナ)
スペイン政府の見事な方向転換:カタルーニャに民主主義の地平?
今日のスペインのナショナリズムは、フランコ将軍の40年にわたる独裁政治に大きな影
響を受けている。国際的な圧力により、ファシズムは多かれ少なかれ民主的な体制に移行
することに同意したため、ドイツやイタリアのように敗北し根絶されることにはならなか
った。スペインにあって、ファシズムは、多かれ少なかれ、軍隊、警察、大企業、国民党
(PPはフランコの7人の閣僚によって設立された)、メディア、司法のもとで存続してき
た。
政権の後継者たちによるこの圧倒的な支配は、最も寛容あるいは左翼的なセクターでさえ
も、異質なものを排除し攻撃的な傾向のある至上主義的ナショナリズムへと傾かせた。そ
して、バスク独立運動の武装闘争との対決によって、それはさらに強調された。そこでは
、あらゆる手段を用いて、どんなコストを払ってもスペインの統一を勝ち取ろうとした。
そして、平和的で民主的なカタルーニャ独立運動も同じように扱い、想定される敵を壊滅
させるために国家のあらゆる手段(警察、諜報機関、メディア、司法制度)を使うことを
正当化した。
PPの暴挙を支持していたスペイン社会労働党(PSOE)は、2018年から政権を担当した際、
「汚い戦争」を続けた。同時に、PP内の極右政治家たちは、フェミニズム、移民、カタル
ーニャとバスクに反対する独自の政党VOXを創設した。結成当初、PSOEはVOXをテレビ討論
会に参加させ、PPに選挙でダメージを与えることを意図したが、彼らは議会外の勢力であ
ったため、適切ではなかった。ほどなくPPはVOXのために票を失ったが、その後、野獣は
大きくなり、今では誰もが後悔している。
2023年の選挙では、PPは勝利したが政権を樹立することはできなかった。一方、PSOEのサ
ンチェスは、PSOEが非人間的なまでに誹謗中傷していたベルギー亡命中のカルレス・プッ
チダモンの独立派政党ジュントの支持を得れば政権を樹立することができそうになった。
プッチダモンは、カタルーニャとスペインの対立を民主的に解決するための「歴史的合意
」(住民投票が見込まれる)を要求している。プッチダモンは、「汚い戦争」の終結、ユ
ーロポールのテロリスト・リストからの独立派の除外、スペイン司法制度によって行われ
た「lawfare法戦」(司法の汚い戦争)によって迫害されたすべての人々への恩赦、スイ
スでの国際調停による交渉、といった条件を設定している。
サンチェスがすべてを受け入れたのは、政権にとどまりたいからだが、同時にそれが合理
的であり、持続不可能となった弾圧の乱舞に終止符を打つ機会でもあったからだ。独立派
が選挙で勝利し、スペインが欧州評議会と国連から非難され、カタルーニャ独立運動が欧
州裁判所にスペインを提訴したことが明るみに出ようとしているからだ。
今後、サンチェス首相は、これまでカタルーニャ独立運動は交渉の余地がない犯罪者だと
言っていたのに、なぜ恩赦を与えるのか、その理由を説明しなければならない。右翼が、
権力欲からUターンしたと彼を批判するのは当然で、PSOEはほとんどどの地方も統治して
おらず、党を維持するためには中央政府からの経済収入が必要だからだ。サンチェスの個
人的な欲求が、スペインとカタルーニャの永遠の問題に対する民主的な解決策を見出すの
に役立つのかどうか、見ものである。
現在、人々は街頭で恩赦に反対するデモを行っている。PPはサンチェスに、ナショナリス
トの主張から自分を切り離した代償を払わせようとし、VOXはサンチェスをクーデター指
導者、独裁者と非難し、ヒトラーになぞらえている。抗議者たちはファシスト宣言を行い
、サンチェスとプッチダモンの死を求める。軍からは、50人ほどの退役軍人が祖国を救う
ためのクーデターを呼びかけているが、誰も彼らに何も言っていない。また、裁判官たち
は、三権分立を弱体化させるという理由で、「lawfare法戦」に言及することに抗議して
いる。彼らは、政治不関与の原則を破って、法衣を着てデモまでしている。最悪なのは、
恩赦の前に最大数の人間を有罪にするよう司法機関に強要し、恩赦の恩恵を受けられない
ように罪をテロにまで引き上げていることだ。
恩赦法制定の手続きは進められているが、実はスペインでは、法律や、ヨーロッパに匹敵
する通常の司法制度に問題があったことはなく、むしろ問題は、カタルーニャの独立支持
者を裁かなければならないときの高位裁判官たちであり、彼らは敵をやっつけるために司
法を利用しているのである。
いずれにせよ、事実として、カタルーニャの強力な独立運動は、スペイン国家に自己矛盾
を強い、4カ月前まですべての国家権力が不可能だと説明していた恩赦を受け入れさせる
ことに成功した。今後の成り行きを見守りたい。
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Last modified on 2023-12-05 09:38:17
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