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出版ネッツ : 世田谷区史編さんにおける「著作者人格権の不行使」問題についての声明
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*レイバーネットMLから

レイバーネットのみなさま 出版ネッツのフリーライター、松本浩美です。 区史編纂中の世田谷区では、執筆者(歴史家)に対して、著作権譲渡および著作者人格権 不行使を条件とする契約を強要しています。
著作者人格権とは、勝手に改変されない権利を含んでいます。 この権利を使うな、ということは、勝手に改変されても文句は言えないということです。 これまでも、その自治体にとって都合の悪い歴史は書き換えられたり、削除されたことが ありました。
とはいえ、著作権が著者にあるため、闘うことができました。 しかし、最初に著作権をうばってしまう「世田谷モデル」は、あらかじめ歴史家の口を封 じながら、合法的に歴史修正主義を可能にする卑怯なやり方です。 許すわけにはいきません。 そこで、出版ネッツでは本件について抗議声明を出しました。 https://union-nets.org/archives/8500 SNSはこちら https://twitter.com/union_nets https://www.facebook.com/union.nets 拡散してくださるとうれしいです。 また、賛同団体、個人を募っています。 どうぞ、よろしくお願いいたします。 **************** ●世田谷区史編さんにおける「著作者人格権の不行使」問題についての声明 2023年3月18日 ユニオン出版ネットワーク(出版ネッツ)  世田谷区は2016年から世田谷区史編さん事業を開始し、原始・古代から近現代にわたる 史料の収集・調査にあたってきました。ところが、2022年、執筆の段階になって突如、委 員(歴史学者)に対し「著作者人格権の不行使」を求め、承諾しなければ編さん委員とし ての委嘱を打ち切ると通告してきました。私たち出版産業で働くフリーランスの組合であ るユニオン出版ネットワークは、この「著作者人格権の不行使」要求に強く抗議します。
 区史は歴史研究の成果にもとづいて編さんされる公的刊行物です。世田谷区史も「最新 の(研究)成果を盛り込んで編さんする」「各分野の専門家の執筆による、学術的に高い 水準を保ちながら、なるべく平易な文章で区民に分かりやすく、読みやすい区史を編さん する」ことを編さんの基本方針としています(「新たな世田谷区史編さんの基本的な考え 方について」)。
 そのためには、学問の担い手である各分野の専門家(執筆者)の著作者人格権を尊重し 、専門家と区が対等な立場で協力しながら編さんを進める必要があります。ところが区は 、自身の原稿を勝手に書き換えられない権利を含む著作者人格権の不行使、著作権譲渡の 承諾を、編さん委員就任の前提条件として提示しました(2023年2月10日付「4世企第402 号」)。
著作者人格権は「著作者の一身に専属し、譲渡することができない」重要な権利です(著 作権法第59条)。学術的出版はもとより広く出版実務において、著作者人格権はこれまで 尊重されてきました。それを世田谷区が軽視しようとしていることは看過できません。 さらに依頼主が行政、執筆者が歴史学者の場合、「著作者人格権の不行使」は権力による 「歴史修正」へとつながる危惧があります。実際、2005年に、『流山市史』(通史編・近 代史)では2328か所もの無断改変が行われ、学術界と社会を揺るがす事件となりました。 そのときは執筆者が著作者人格権を保持していたため市側が謝罪し和解に至りましたが、 あらかじめ「著作者人格権の不行使」を承諾していたら執筆者が抗う拠り所もありません。 世田谷区は「歴史の改変などしない」と言っていますが、執筆者に無断で改変できるよ うな枠組み自体が問題で、悪しき先例として他自治体に波及する危惧もぬぐえません。 そもそも、区は著作者人格権不行使・著作権譲渡を求める理由に「編さん委員会による編 集(のしやすさ)」と「刊行後のデジタル区史の発刊や図表等の2次利用」をあげますが 、前者は執筆者と編集者との協議・合意によって、後者は利用許諾によって容易にできる ことであり、著作者人格権不行使・著作権譲渡を強要する必要はありません。
そして、こうした自治体史の編さん・執筆には、任期付きの研究員や大学院生が業務委託 を受けてあたることも少なくありません。自らのあずかりしらぬところで原稿が勝手に書 き換えられるおそれがあり、さらには権力による「歴史修正」へもつながりかねない「著 作者人格権の不行使」を条件に契約を交わすことが一般化するとすれば、そのような若手 研究者の自由闊達な調査・研究活動を委縮させ、学術研究の未来にさえ悪影響を及ぼす可 能性があります。
 専門家をないがしろにする区の対応には、区議会議員、研究者、マスコミからも疑問と 批判が相次いでいます。組織に属さない著作権者の権利を守ってきた私たちも看過できま せん。専門家と行政が協力してより良い区史を刊行するためにも、立ち止まって再考する ことを区に強く求めます。 【担当者連絡先】 sugimura09@union-nets.org

Created by staff01. Last modified on 2023-03-20 12:19:26 Copyright: Default

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