「戦争をしない国」は私が、あなたが作る<これでいいのか着々進む大軍拡!〜杉原浩司さんを囲んで一緒に考える> 2023/6/14 レイバーネットTV186号(報告 笠原眞弓) 今期の国会は重要法案が目白押しだったのに、わずかな審議でどんどん通過していく。そ の中の一つ「軍需産業強化法案」は、一体どんな法案かよくわからないうちに可決されて しまった。その直前、杉原浩司さんは参考人として参議院に呼ばれ「死の商人国家」発言 を保守議員がやり玉に挙げたが、騒ぐ方がマイナスと気づいたのか、すぐに沈静化した。 放送日前後にこの法律が通るかどうかというタイミングでの企画だったが、普通の人たち が、普通に考えてどうなのかをみんなで話したいという企画だった。 「攻められたらどうする?」と言われても「今は戦中ではない。だから、防ぐことを徹底 して考え、実行しよう」と言える私たちでありたいと強く思った。 ・アーカイブアドレス: https://www.youtube.com/watch?v=i0G2asES_xk ・企画・司会 :笠原眞弓 ・出席者 杉原浩司(武器取引反対ネットワーク〔NAJAT〕代表) 植松青児(STOP大軍拡アクション) 比良恵子(武器取引反対ネットワーク〔NAJAT〕) 藤井裕子(平和学ぶ会・台東) 坂口貴満(平和学ぶ会・台東) 谷口初江(幕張メッセでの武器見本市に反対する会) ◆「軍需産業強化法(6/7可決)」「軍拡財源確保法(6/15可決)」てなに? ・杉原浩司:岸田政権は昨年12月、「安保三文書」を閣議決定し安保政策を大転換。軍事 費を5年で総額43兆円とし、敵基地攻撃能力を保有するとした。それを具体化するために2 つの法律を制定した。 この法律、問題が多いにもかかわらず、知る限りではテレビ、新聞とも東京新聞が3回、 共同通信が1回しか取り上げなかった。「ストップ大軍拡アクション」を昨年9月に立ち上 げ、安保三文書の閣議決定、大軍拡予算、今回の軍需産業強化法と軍拡財源確保法案(放 送日は未だ通っていなかった)の反対運動をやってきたが、ほぼ知られないまま「軍需産 業強化法」は6/7に、成立した。 ・「軍需産業強化法」の問題点は3つ 1点目⇒軍事工場を国有化してまで支える(儲からないので、20年で100社程撤退) 売り先が自衛隊限定/共同開発国を除きで輸出実績はフィリピンのみ/利益率3% 2点目⇒武器の輸出に税金を投入(今年度400億円) 3点目⇒民間の軍事産業の従業員にも秘密漏洩の刑事罰を科す。法律としての根拠がない (企業版秘密保護法として批判している) これらの問題を含め、安保三文書による大軍拡を具体化する法律であり、軍拡財源法案と 一体でるのに国民に知らさず、市民運動も取り組めないまま成立した。 ・儲からない武器産業⇒空洞化を恐れ国が助成 兵器産業側は、儲からないけれど国策に協力してきたが、やめざるを得ないのが現状。国 内武器産業が空洞化することの政府の危機感からの法律制定である。 ・アメリカからの爆買いはなぜ 安倍政権時、アメリカから7千億円(今は1兆4千億円超え)の兵器の爆買いをしている。 そのため、国内のシェアが小さくなった。その辻褄合わせの政策とみる。 ◆安保関連3文書を破り捨てるアクション ・比良恵子: 7年前から武器取引反対運動で活動していて、この3月3日に安保3文書をコピーして、それ を破いて捨てる「破り捨てちゃえ安保3文書アクション」をやった。楽しいアクションだ ったのに「破り捨てちゃえ」が過激とメディアの取材が1社、毎日新聞のみ。なぜ過激な のか分からない。 中東に自衛隊が派遣されるようになった時、海外で活躍しているNPOの人たちが活動しに くくなるのではと思ったのが活動参加のきっかけ。日本の企業は、自社製品が軍事に使わ れるのを嫌がっていると聞いた。平和を愛する日本を取り戻したいと思っている。 ◆ 植松青児さんは、たくさんの言葉を示した ・植松さんは、母親が呉の海軍の兵器工場で空襲にあったことを思い出したという言葉か ら始まる。そして次々示される言葉による表現の大切さを示す。 ★「軍拡=必要悪?」⇒「軍拡=(必要ではない)悪」それは、日本を守るための軍拡で はない ★「アメリカの主権(勢力圏・覇権)を守るための軍拡」 アメリカの国民・領土を守る ためではない。結果として「日本を守るための軍拡」という空気になる ★「軍拡より暮らし(これは比較となり弱い)」⇒「軍拡ではなく暮らし」 ◆明文改憲よりひどい実質改憲の実情 杉原:戦後の歴史の中で、弾薬購入費などすべての軍事費が異常な大軍拡であり、それに 反対する市民の声が上がっていないことが最大の危機と断言。 明文改憲なら、国会の審議・国民投票が必須だが、明文改憲しなければできないことを、 国民に示さず、国会でもほとんど審議なく決めていく。 ◆「死の商人」発言 杉原:参議院で行われた軍需産業強化法の参考人質疑の経緯を示す。武器輸出に税金400 億円つけ、9年かけてフィリピンに三菱のレーダーしか輸出していない。つまりコストの 論理であり、平和の倫理を駆逐する瞬間でもあった。その批判の言葉として「死の商人国 家」という言葉を使ったところ、出席議員の中から批判が起きた。それに対して、あなた 方が使わせていると反論。 ◆2部はフリーディスカッション 藤井:スタンディング中、道行く人は横目で見る視線は感じるものの、目を合わせず、チ ラシも受け取らない。海外からの旅行者は反応して下さる。 坂口:一人で浅草の雷門の前でスタンディングをしている。きっかけは、とんでもないこ とが知らないところで決まっていくことに驚いたからと。 フリップの紹介もあり、英語で書くと外国人に分かってもらえていいと。 藤井:「攻められたらどうする」と言われるが「お孫さんが戦争に行くのは?」と訊ねる と、黙る。でも、最近はその質問が減ってきたとか。 谷口:スタンディングでは「攻められたらどうする?」と言われる。なんでそう思うのか 疑問。武器を持たないことが「抑止力」だと思う。 特定秘密保護法(2013年)のとき、もやもやしていてSNSをしていたが、2015年の安保関 連法の時に国会に一人で行った。そこで幕張メッセで武器の見本市があることを知り、ス タンディングに参加。今年の3月、4回目が行われてしまった。 今回の法律は日本が武器輸出をするためのもので、ショックだった。 ◆言葉の綾に騙されるな! 植松:こちら側は「武器見本市」だけど、国は「防衛…」という言葉を使う。「防衛」と いうとあたかも必要悪のトリックにはめ込まれる。元祖はアメリカで、軍事の最高機関は 、国防総省。戦後作られた言葉だが、アメリカは一度でも自国民と領土を守るための「防 衛」をしたことがあるか?常に他国で戦争をしている。自分たちの勢力圏を守るために発 明された言葉ではないか。 ◆幕張メッセの武器見本市への抗議 杉原:かなり前から武器見本市はやられてきたが、政府(防衛省、経産省、外務省)が公 然と後援するようになったのは、武器3原則が撤廃されて、「防衛装備移転3原則」になっ た2004年から。会場内には、追い出されては入るを繰り返して内容を見てきたが、外国の ブースは武器の展示だった。 ◆出展自粛のお願いを受け入れた企業もある 杉原:前回の見本市では400人、今年3月は300人でダイイングなどの抗議の声を上げた。 我々が出展自粛をお願いしたソフトバンクは、出展も後援も一切取りやめた。 武器見本市は、憲法9条の下ではやってはいけないもの。しかも幕張メッセは千葉県の施 設で、千葉県は非核平和千葉県宣言をしている県。紛争を武力で解決しない県なのに貸し ている。粘り強く反対をしていかなければならないと取り組んでいる。 ◆教育・メディア・労組の力の衰退 松原(会場):若い人たちと繋がりにくくなったのは教育現場が「ルールを守る」しか教 えなくなったからとある教師に言われた。 今や日教組が目指した「2度と子どもたちを戦場に送らない」、マスメディアの「戦争の ためにペンを執るな」が消えた。 考える力⇒教育 知る力⇒メディア 闘う力⇒労組 その3つが崩壊した。 しかし、若い人たちは感性を持っている。話し合う場が必要だと思う。 ・本当に若者は運動に参加していないのか? 藤井:勉強会の参加者は年齢の高い方が多い。だが3、40代の女性たちも、職場でのジェ ンダー問題や入管法に関して怒っていることは事実。 坂口:今の社会は、マジョリティー(多数派)に合わせたものだが、自分はそれなりの考 えをもって一人でも行動している。 比良:入管法もLBGTもマジョリティーの安全が守られていることが大事だったりする。で も入り口はいろいろで、重たい石を急に渡されても引き受け難いが「お茶飲みませんか? 」なら入りやすい。だが、軍事はその入り口が自分でも分かりにくい。 谷口:沖縄の米軍機の部品が落ちてきた保育園の母親の話を聞いたが、リアルな話は他人 事とは思えない。如何に自分事としてとらえるかが大事。 松原:体験した人の話を聞くのが大事だが、もう我々は戦争を体験していない。そこで、 映画などを通して学ぶことは大事ではないか。 ◆植松:当事者は年齢に関係なく活動する 「若い人は参加していない」と言うが、それは東京の事。2015年に軍事に関する大きな変 化があって以降、沖縄の南西諸島では全ての世代が自分事として運動をしている。一方、 東京では「総がかり」がスローガンに取り上げるのに8年もかかっている。 ◆杉原:市民運動は独立性を失ってはいけない 琉球弧の軍事化は進み、ミサイル配備まで来ている。東京の平和運動は確かに動きが遅い 。5月3日の憲法集会のスローガンに入れるように2年提案し、やっと今年採用された。立 憲民主党がかつて南西諸島の軍事化を推進したので、党として反対できないと躊躇したの では?軍需産業強化法案も、立憲が早々に賛成してしまった。おそらく総がかりも平和フ ォーラムもそのため何一つ行動をしなかった(軍拡財源については、いま毎回取りあげて いる)。 集会に来た野党議員は当たり前に「反対」をいうが、主催者は全く無視して触れない。 市民運動で大事なのは、独立性を失ってはいけないということ。土地規制法の時、立憲は 政府案よりひどい修正案を出そうとした。それを一部立憲の議員と市民が引き戻した。 政党が変なことを言っても、市民側がきちんと引き戻すことが大事! 今や、ただ「野党頑張れ」では変えられない。_批判すべきことは批判しながら、つなが る_しかない。 今琉球弧の人たちが大変なのはわかっているのに、なぜ動けないのか? 市民が声を上げていかないと、ズルズルと政府の思うままになると危機感を持っている。 ◆植松:政党の顔色をみなかったから大きくなった入管法反対の運動 入管法の場合は、政党の顔色を見ないで「こうでなければいけない」という一点で運動を 進めたからあのように大きくなった。暴力を突き付けられる側から考えることが大事。 平和運動も ・台湾と琉球弧の平和(と自己決定権)を第1キーワードにすべき。 ・あえて「憲法第9条」を第一キーワードにしない この2つがキーとなっていくだろう。 ◆「誰の子どもも殺させない」を原点に 谷口:「人としてどうなのか」ということだと思う。ママの会の合言葉は「だれの子ども も殺させない」。殺すのも殺されるのも否定する。それを訴えていきたい。 藤井:沖縄の保育園であった、空から軍事部品が落ちて来る危険な思いをしないでいいよ うにしたい。 比良:自分の子ども、孫が…というより、関係ない人でも、戦争反対と思ってほしい。そ うでないと運動が広がらないのではないか?周りの人に興味を持ってもらうには、どうす ればいいかが課題。 植松:民主主義も平和主義もズタズタに引き裂かれていることを認識すべきだと思う。そ のキーワードとして谷口さんの「人としてどうなのか」という言葉が響いた。 ◆made in Japanを平和産業の代名詞に! 杉原:今の日本、技術力は一時より落ちぶれてきているのは確か。だから大谷翔平をテレ ビで 毎日見たいと安易な方向に流れる。例えば、原発の復活だったり、軍事産業強化法 や岸田さんのやっているコストの論理で市場拡大の方向で武器を海外に出そう(輸出)と する。それを他国の人は受け入れるのですか?未来があるのか?と問いたい。 ナジャットを作った時のスローガン「made in Japanを平和産業の代名詞に!」を進めていくしかない。行政が平和に舵を切り、今の軍 事産業を平和産業に転換していく仕組みを、市民と野党、特に立憲民主党と一緒に作って いきたい。 ◆これからの運動は「最悪を回避」すること 杉原:今は平和運動にとって厳しい時期で、最悪の事態を回避することが重要。海外の邦 人を助けるのに、自衛隊機を飛ばすという自衛隊法改悪があり、反対闘争をした。その闘 争が終わってある方が「ロビイングは最悪の事態を回避するため」という言葉があった。 今我々のやっていることは、それではないか。法律を作るときに、殺傷能力のある武器は 最低でも国外に出させないなど、何らかの歯止めを入れる。今回立憲は賛成したけれど、 我々の働きかけで、衆議院議員に3人の反対者がでた。そういう人を増やしていくことで 自分たちに力を付けていかなければならない。一つの組織を大きくすることもそうだが、 入管法や気候危機、貧困など、様々なテーマの人たちが、つながって一緒にやっていくこ とが大事と締めくくった。 休憩タイム「ジョニーと乱の5ミニッツ」 川柳 大軍拡死の商人は高笑い 乱鬼龍 戦争に進む日本に地が震え 芒野 ジョニーHの替え歌 ビクトル・ハラ 「平和で文化的に生きる権利」(死の商人 編) 次回は6月28日 リニア新幹線について