真の愛国心を求める若者たちは〜『愛国の告白―沈黙を破るPart2』
笠原眞弓
最近戦争が身近になり、単なる想像の世界から現実を帯びてきたと感じるのは、私だけ
ではないだろう。そんな中でのこの映画は、兵士というものの本質をむき出しに見せて、
13年前に上映された『沈黙を破る』を観た時以上に強い恐怖を覚えたのだった。
「命令」というハンマーを持てば、打つ釘をさがすように迷わず無抵抗のパレスチナ人
の家を破壊し、夜中に民家に押し入っては、子どもまで起こしてクローゼットの中身まで
確認するという嫌がらせをする。井戸を壊し、通りを封鎖して人々を追い出す。発電用燃
料タンクを壊されたガザでは、頻発する停電で人工透析も命がけ。それなのに入植地の大
きな鶏舎には煌々と灯りがともり、パレスチナ人の農園は“合法的に”入植者に召し上げ
られていく。それは、自国の一握りの入植者を守る名目で「誰がお前たちの支配者か」を
示すためだったと元イスラエル兵士は言う。
一部の兵士の間で入隊直後は誇らしかった作戦成功も、相手の人権を認めない行為であ
り、自分の価値観との乖離に悩み、”愛国心”から国の間違えを正したいと2004年にNPO
法人「沈黙を破る」を立ち上げる。それは、兵士のしていることは何かを知ってもらうた
めだった。講演会やツアーを組んで、兵士の現実をイスラエル市民に伝え始める。
でも自国内で順調に受け入れられたわけではない。先ず家族の反対にあう。そこにはユダ
ヤ人の持つ負の歴史が色濃く滲む。国の愛し方もそれぞれの体験によって違い、そのため
の対立も窺える。
いまや彼らの活動は、国内で知られるようになったが、決して受け入れられたわけでは
ない。それは活動をまとめた本を出版したため、活動に対して政府や右派の人々からの激
しいバッシングを受けるようになったからだ。
翻って、先の大戦での日本兵は中国や東南アジアでどうだったのかと、胸がえぐられま
す。そして今、台湾有事が意図的に叫ばれ、世界各地に銃弾が飛び交う中、戦争の本質を
じっくり考えたい映画です。 (消費者レポートより加筆)
監督:土井敏邦
170分(第一部100分・第二部70分)
11月19日(土)より新宿K’s cinemaにてロードショー
ほか全国順次公開
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staff01.
Last modified on 2022-11-17 09:02:02
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