本文の先頭へ
ドキュメンタリー映画『裸のムラ』(五百旗頭幸男監督)を観て
Home 検索

ドキュメンタリー映画『裸のムラ』(五百旗頭幸男監督)を観て

森 健一

 石川県の石川テレビが「なぜ保守県として変われないのか」を取材したドキュメン タリーだ。同じ、五百旗頭の富山市議会汚職を追及したチューリップテレビの」『は りぼて』と相通じる作りだ。7期27年にわたる谷本正憲・前知事と元プロレスラーの 前文科大臣・馳〔はせ〕浩の新・知事就任(2022年)を保守県政の過去との〈連続〉と して描く。

 五百旗頭が馳知事に、新しい石川の誕生、というが県政を引き継ぐとの公約に何が新 しさなのかと詰問、馳も核心を衝いていると応じはする。女性秘書課員らは知事の機 嫌を損ねぬように動きまわる。女性の活躍をあげるが、登壇するだけですぐに老男性 陣から降ろされる。石川県に保守基盤をもつ森喜朗の半世紀の姿、女性蔑視や「神の 国」発言に如実だ。選挙は互いに「日の丸・必勝ハチマキ」で保守どうしの一騎打 ち、巴争い。雪の舞う金沢の神社で神主の祝詞の出陣式だ。マスクをしたままでエ イ・エイ・オーが境内に響く。

 これと対極なのが、石川県に家族移住してキャンピングカーでバンライフを美しい 能登半島の自然のなか堪能する、もとソニーの技術者らしい夫と妻、娘のややすれ違 いのある会話のシーンがある。また、金沢市内で初めてモスクを開いた松井氏が、イ ンドネシアで知り合った女性との結婚からイスラム教徒となった経緯、地元の反発な どが織り込まれている。子ども、とくに娘たちはスカーフ、ヒジャブを学校でつける かの悩みを五百旗頭から聞かれ、涙するシーンは観ていて辛かった。一様さを第一に する日本では帰化しても意味はないと妻はインドネシア国籍のままだと言う。

 松井氏が公安調査庁からイスラム教徒の内部情報を提供するスパイを要請され、 「日本のためでもない、アメリカのためだと言われ、さらに断った」との証言が映像 に記録された。私の関心は、アメリカから日本へ、政府から保守県政へと権力が委譲 されていく重層構造の解明にある。ポレポレ東中野で観たのも前日、10月25日が、石 井紘基代議士が察するに「闇の勢力」に殺害されて20年目のしのぶ会に出席しての帰 路であったからだ。本作はオムニバス風でジェンダーの問題に未整理の感があるが、 シーン一つ一つは興味深かった。 


Created by staff01. Last modified on 2022-10-27 15:01:04 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について