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「日本裁判史上最高額」13兆3210億円の弁償命じた東京地裁〜法廷に拍手、鳴り止まず

黒鉄好


動画(裁判所前報告 14分)

 「被告勝俣、被告清水、被告武黒、被告武藤は、東京電力に対し、連帯して、13兆3210億円を支払え」。聞いた瞬間、その想像を絶する金額に、自分が原告でもないのに全身が震えた。朝倉佳秀裁判長は、さらに驚くべきひと言を付け加えた−−「この判決は、第1項〔注:13兆3210億円の弁償〕に限り、仮に執行することができる」。

 勝俣恒久元会長、清水正孝元社長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長の東京電力旧経営陣に、裁判が控訴で継続している間でも、13兆円を取り立てに行ってよいという仮執行が告げられたのだ。


*裁判所前で訴える原告(判決前)

 東京電力の株主が、福島原発事故の責任を問うため、事故当時の経営者に対し、事故によって生じた損害額を東電に弁償するよう求めた株主代表訴訟の判決が、7月13日午後3時、東京地裁で言い渡された。要求額は実に22兆円。民間企業の支払額をはるかに超えるため、東電株の54%を保有する「親会社」原子力損害賠償・廃炉等支援機構から東電に貸し付けられた金額に相当する。きちんとした根拠のある金額だが、東電の元経営者とはいえ、個人としての支払能力をはるかに超える兆単位の巨額の弁償責任を、司法が本当に認めるかどうかは半信半疑というのが、率直な気持ちだった。

 まさか本当に認めるとは−−。あまりの衝撃に以降、読み上げられた判決要旨が頭に入ってこなくなった。それほどの衝撃だった。

 朝倉裁判長は、昨年10月、原発事故担当の裁判官として初めて福島第一原発の敷地内に入った。被害者が損害賠償を求めた民事訴訟で、帰還困難区域を現地視察した裁判官はいる。しかし、福島第一原発構内にまで入ったのは、この裁判長が初めてである。裁判長がこだわった現場検証は、判決の中にしっかり活かされていた。

 原発でひとたび事故が起きれば「我が国そのものの崩壊にもつながりかねない」として、電力会社には「過酷事故を万が一にも防止すべき社会的ないし公益的義務がある」と言い切った。武藤副社長が、津波対策を先送りしたことに対し、他の対策を代わりにとるなら理解もできるが、実際には東電は何もしていなかった、と断じた。研究者の見解について、対策先送りの結論を出す上で都合の良いものだけを見て、都合の悪いものは見ないようにすることにのみ腐心していたとしか思えない、として、東電経営陣4人の「善良な管理者の注意」義務違反を断じた。


*報告集会で喜びの報告をする原告

 福島事故から11年。確かに事故前は半世紀で住民側が勝訴した原発訴訟は2件のみであり、上級審でそれも覆されたことを考えると、事故後の司法における住民側の勝率は大幅に上がった。だがそれでも、差し止め訴訟は上級審で覆され、結局、再稼働を遅らせる以上の効果は持たなかった。被害者が起こした賠償訴訟も、国の責任を認めたものは「2〜3桁少ないのではないか」と思うほど賠償額が低く、賠償額がそれなりに認められたと感じたケースでは国の責任が認められないものが多かった。福島で被害を受けた元県民として、「これで枕を高くして眠れる」と思える納得のいく判決はひとつとしてなかった。

 それが、原子力ムラを一撃で奈落の底に突き落とす画期的判決がこの日、ついに出た。こんな天文学的な額を、経営者が個人の立場で弁償せよという判決が確定すれば、怖くて電力会社の経営者を受ける人などいなくなるだろうと思うが、その重みこそが必要なのだ。福島県民が11年間、1日たりとも途切れることなく抱き続けた苦しみ、悲しみ、怒りを思えば、この判決くらいでちょうどいいというのが、被害者としての率直な感想である。

 午後3時40分、朝倉裁判長が閉廷を告げると、傍聴席、原告席から拍手が起きた。退廷する3人の裁判官に「ありがとうございました!」という声がはっきりと聞こえた。拍手はいつまでも鳴り止まなかった。初めて福島県民、被害者が本当の意味で報われた。北海道からわざわざ上京してまで、聞きに行く価値のある判決だった。11年間、止まっていた被害者の歴史がこの日、ついに動いた。


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