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「民主主義への挑戦」をし続けてきたのは誰か

浅井健治

 安倍晋三元首相が銃撃され、死亡しました。一人の人間の不慮の死に哀悼の意を表すること、暴力・テロを断固として糾弾することに私も全くやぶさかではないつもりです。

 しかし、この事件を「民主主義に対する挑戦」とする大合唱には違和感を覚えざるを得ません。歴代最長、3188日にもわたる首相在任期間中、民主主義に対する挑戦・嘲笑・冒とく・蹂躙の限りを尽くしてきたのは安倍晋三その人だったからです。

 定着していた憲法解釈を覆し、集団的自衛権容認の実質改憲を強行しました。基本的人権・表現の自由を奪う秘密保護法・共謀罪法を成立させました。森友・加計・桜を見る会疑惑ではしらを切り続け、118回もウソの答弁をし、近畿財務局職員・赤木俊夫さんを死に追い込みました。自衛隊を「わが軍」と呼び、自らを「立法府の長」と僭称しました。連邦議会襲撃を扇動したトランプ前米大統領とはゴルフ友達です。ウクライナ市民を殺戮し続けているプーチン露大統領とは「ウラジーミル、君と僕は同じ未来を見ている」という仲です。

 たしかに人間の身体に物理的危害を加えるという意味での暴力を煽ってはいないかもしれません。しかし、議会という言論の場における真摯で誠実な、実りある対話とそれを通じた合意形成を一貫して封じてきたのが安倍晋三です。自由な言論の封殺と今回のようなテロ。両者の間にさほど大きな隔たりがあるとは思えません。

 山上徹也・元海上自衛官が放った銃弾は、もしかすると安倍晋三が鋳造したものなのではないか。安倍が築き上げた異論排除・国会軽視・説明責任不履行の政治文化が2発の弾丸の火薬として充填されたのではないか。そんな思いを強くしています。

第2信(7/9)


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