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米国労働運動 : レイバーノーツ2022年大会 米国の労働者が労働組合を主流に押し上げる
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【解説】レイバーノーツは4年ぶりの大会を6月17日から19日に掛けてシカゴで開催した。スターバックス、アマゾン、アップルなどでの歴史的な組合組織化の勝利を反映して高揚した大会となった。レイバーノーツのウェブサイトには動画が掲載されているが、まだ記事は掲載されていない。そこでドイツの『ドイチェヴェレ』に掲載された記事が良く雰囲気を伝えているので翻訳した。(レイバーネット国際部 山崎精一) *毎月1日前後に「レイバーノーツ」誌の最新記事を紹介します。
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レイバーノーツ2022年大会:米国の労働者が労働組合を主流に押し上げる

  2022年6月22日
テディ・オストロー

*久しぶりにレイバーノーツ大会に登壇したバーニー・サンダース上院議員

 数十年にわたるマンネリ化の後、米国の労働運動は再活性化しているように見える。シカゴで開催されたレイバー・ノーツ大会で、労働運動のリーダーたちは、再活性化を単なる一時的なものではなく、真の高揚にしたいと考えた。

 コロナのパンデミックによって追い込まれ、2020年の警察暴力に反対するデモによって活性化した米国の労働者は、ここ数十年で見たことのないほど経営側に対して自己主張するようになってきている。主流の労働組合の外でも、また米国の最も強力な労働組合の中の改革運動を通じても、アメリカの労働組合運動はますます活発になっている。

 6月17日から19日にかけてシカゴで開催されたレイバーノーツ大会に参加した約4000人の草の根活動家、労働組合の組合員や支持者たちがこの高揚を証明していた。

 スターバックスのバリスタで、スターバックス労働者連合Starbucks Workers Unitedのオーガナイザーでもあるカイラ・クレイは、「『組合』という言葉を、職場で口にするのがためらわれるタブーではなくするチャンスだと思う」と述べた。

 民主党のバーニー・サンダース上院議員などの支持者は、一過性ではない高揚を作り出すことによって、この機会を逃さないよう、労働組合に要望した。

マンネリ化からの脱却

 1980年代以降、アメリカの労働運動は衰退の一途をたどってきた。しかし、この2年ほどの間に、アメリカの労働運動は再びその足場を固めつつあるようだ。

 ニューヨーク市立大学のステファニー・ルース教授は「過去30年ほど労働問題を研究してきた者として、職場で反撃しようとする人々の関心と興奮の度合いがこれほど高かったのは見たことがない」と発言した。

 米国の世論調査会社ギャラップ社によると、労働組合への支持は1965年以来最も高く、米国では組合組織化が新たに伝染しているようである。昨年秋、ジョンディア社、ケロッグ社、ナビスコ社といった企業で起きたストライキの増加(「ストライキの10月Striketober」と呼ばれている)も、労働者が職場行動に参加する意欲が高まっていることを示すものである。バイデン米大統領は、「史上最も組合寄りの政権を率いる最も組合寄りの大統領」になるつもりだと宣言している。

 未組織労働者も前進している。スターバックス、アマゾン、そして最近ではアップルの労働者が、これまで組合はできないとされていた職場で見事な勝利を収めた。本稿執筆時点で、スターバックス労働者連合Starbucks Workers Unitedに所属する労働者は、35州にわたる300近くの店舗で組合認証選挙を申請し、そのうち150以上の店舗で勝利を収めている。

 また、ニューヨークのグランドセントラル駅にあるアップルの店舗の従業員も組合結成の手続きを開始した。

 5月、アマゾンの労働者はニューヨークのスタテン島の配送センター(従業員8,300人)で組合認証投票に勝利し、労働運動全体を驚かせた。その組織化の成功は、米国の労働運動の分水嶺と考えられている。しかし、アマゾン社はこの投票結果に異議を唱えている。

 スタテン島の施設で働くアマゾン労働者で、アマゾン労働組合(ALU)のオルグを務めるウィル・ワイスは、「(投票後)の数週間は陶酔に包まれていた」と話す。

スターバックスとアマゾンでの組合の勝利が、国内の産業全体の労働組合組織化を刺激し、各分野の労働基準を引き上げることを組合活動家たちは期待している。「私たちが労働協約を勝ち取れば、この国の他の労働協約はどれだけ良くなると思う?」とALUのクリス・スモールズ委員長は、レイバーノーツ大会の全体会で数千人の聴衆にこう問い掛けた。

型破りな組合活動

 米国では、大規模な組合による組織化キャンペーンは、一般的にトップダウンの取り組みであり、未組織労働者は組合のスタッフ・オーガナイザーの指導に従うことになる。最近、最もエキサイティングな勝利は、この関係を逆転させたものである。労働組合のスタッフは、職場の中心的なオルガナイザーである職場労働者を支援し、その指導に従う。

 スタテン島のアマゾン施設での組合の勝利は、労働者自身が 「労働者と一対一で対話し、反組合攻撃のために会社側が開催した全員集会を潰したこと」によるとワイスは説明した。

 反組合攻撃のための全員集会には、従業員は強制的に参加させられ、会社が労働組合に反対する主張を行い、多くの場合、雇われた組合潰しコンサルタントの援助を受けて行われる。労働者がこの会議で発言して、情報の不正確さを指摘したり、組合支持の意思を表明したりしたことが、組合勝利に大きく貢献した。

 ワイスはまた、オルグが休憩室に入れることの重要性を強調した。「労働者と話をし、組合を支持しても解雇につながるものではないことを明確にする機会を与えてくれたのです」。

 ALUやスターバックスの多くのオルグと同様、ボストンで最初にスターバックスで組合結成したカイラ・クレイは自分の店を組織化する前に、スターバックス労働者連合の取り組みについてほとんど何も知らなかった。「ある意味、未経験で本当によかったと思います。それは、私たち全員が今やっていることであり、労働者や同僚とどう話をすればいいか、直感に従っているのです。」

 スターバックス労働者連合は単独組合ではなく、上部組織はSEIU加盟のワーカーズ・ユナイテッドであるが、ワーカーズ・ユナイテッドは意識的に支え役に回り、労働者を指導するのではなく、資財を提供することに徹している。

古いものが新しくなる

 レイバーノーツ大会の参加者たちは、米国で最大かつ最も強力な2つの労働組合の変革を祝うことができた。

 2021年11月、チームスターズ労組の組合員は、反主流派の会長候補のショーン・オブライエンを会長に選出した。オブライエンは、130万人の組合員を経営側との譲歩から抜け出させ、一般組合員による組織化を優先し、2023年に労働協約が切れるUPS労働者などの団体交渉を強力に推進することを約束した。

 レイバーノーツ大会で発言したオブライエン新会長は、UPSに対して「譲歩は絶対せず」、必要なら同社を「屈服」させると述べて、大会参加者を熱狂させた。

 全米自動車労組UAWも2021年12月、その87年の歴史で大きな転換を迎えた。長年にわたる組合指導部による一連の汚職容疑に触発されたUAW組合員は組合役員選挙を「組合員1人1票」の直接選挙で行う方針を一票投票により圧倒的に可決した。これまでは、大会での代議員による投票が行われていた。

 この新しい直接選挙制度は、約40万人の同労組の大きな方向性や団体交渉について一般組合員が大きな発言力を持つようになることを意味する。

前途多難

 労働運動には明るい兆しがあるものの、米国の労働組合は依然として相対的に弱く、政治的・経済的な課題に数多く直面している。労働統計局によると、組合組織率は減少を続けており、ピーク時の1954年の35%から2021年には10.3%へと低下している。

 米国の労働運動の希望の星である「団結権保護法」案は、団体交渉権の拡大、組織化への障壁の撤廃、組合認証選挙への労働組合の関与を強めることにより、組合結成への水門を開くものである。バイデン大統領はこの法案を支持しているが、法案を支持する議員は議会で可決するには足りない。

 ステファニー・ルース教授によれば、アメリカの労働法は弱く、しかもちゃんと執行されないので、労働者にとって困難な状況である。「だけど今起こっているのは、労働者たちがついに我慢できなくなり、もううんざりだ、と声を上げ出したのです。」

 そして、レイバーノーツ大会でスタンディングオベーションを受けて、アマゾン労働組合のスモールズ委員長は今年の夏は 「熱い労働の夏」になると挑戦的に宣言した。


Created by staff01. Last modified on 2022-06-30 17:40:28 Copyright: Default

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