戦争はどこまでも人間性を貶める/劇映画『ドンバス』 | |
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戦争はどこまでも人間性を貶める〜劇映画『ドンバス』笠原眞弓ウクライナ国内で激しい戦闘が繰り広げられて3か月が過ぎようとしている。レイバーネットTV167号でも紹介されたように、今回の戦争は2014年のマイダン革命のつながりで、起きたことだ。ウクライナのドンバス地域が、ロシア軍の支援を受けて分離独立を宣言し(分離派)、ウクライナ軍と戦闘状態になった。2018年に公開された『ドンバス』は、その時期のドンバス地方を、事実に基づいたフィクションとして描いている。 ところで、時々登場する携帯電話で2000年代の戦争なのだと確認するほど、1900年代の戦争と同じ顔をしていた。「戦争」という暴力行為は、時代が移っても本質的な違いがないのではないかと気づかされる。 ある程度覚悟してみていたにも関わらず、途中で席を立ちたくなる場面があった。それは、単に残酷な場面というよりも、人間性を白日にさらされることによる、自分への忌避感のようだった。それでも立たないですんだのは、しっかりとシートのひじ掛けを握りしめていたことと、戦争に反対するなら見届けなければならないという、なんとも言えない感覚に縛られていたからだ。 この映画は13のシーンで成り立っているが、それぞれ独立したエピソードでありながらつながり、権力(軍や政治家の大きな力)と市民の心理が描かれる。最も衝撃的だったのは、捕虜になったウクライナ兵を柱に縛り、街ゆく人と「話をさせる」というリンチシーンだった。一定の条件下で一般市民がどんどん過激に、残酷になっていく様子が分かる。そして次のシーンでは、そこで兵士をからかっていた若者が、婚姻登録所での結婚祝いの空騒ぎに参加し、縛られた兵士とのやり取りの動画を見せ、新国歌「ノヴォロシア」を合唱する。 大事なのは、トップシーン。ここをしっかり見てほしい。最後のシーンと深く深くつながり、戦争の本質が浮き彫りにされるからだ。今の東欧戦でも取りざたされている事例だ。 日本の配給会社サニーフィルムは、2020年に実力派のウクライナの映画監督、セルゲイ・ロズニツァ氏の3作品を『群像』(『国葬』『粛清裁判』『アウステルリッツ』)として配給した。当時日本初公開の監督である。今回の戦争が始まると、予定していたロズニツァ監督の作品を『ドンバス』に変えて緊急公開した。戦争は単純ではなく、見る角度によって全く違ったものになる。今回の理解のためにも、見てほしい作品だ。 5月21日(土)〜6月3日(金)シアター・イメージフォーラムにて公開。6月3日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国劇場順次公開 以前『群像』の紹介をレイバーネットに書いている。ご参考までに。 『群像』 http://www.labornetjp.org/news/2020/1114eiga
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