米国労働運動 : 全米自動車労組、全組合員投票で直接民主主義を勝ち取る | |
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【解説】レイバーノーツ誌の1月号はまたもや組合民主化の歴史的勝利を伝えている。組合員100万人の全米自動車労組UAWがその本部執行部を全組合員の直接選挙で選ぶことを全組合員投票で決めたのだ。UAWの最高幹部たちが汚職と腐敗により起訴され投獄される、というスキャンダルを跳ね返した一般組合員たちの勝利の物語である。(レイバーネット国際部 山崎精一)
*毎月1日前後に「レイバーノーツ」誌の最新記事を紹介します。 全米自動車労組、全組合員投票で直接民主主義を勝ち取るジョナ・ファーマン(レイバーノーツ・スタッフライター)
全米自動車労組UAWの組合員は、組合執行部を選ぶための直接投票制度(「一人一票」)に移行することを圧倒的多数で決定した。12月2日現在の集計では、直接選挙は有権者の63.6%の支持を得ている。 これは、組合員が何十年にもわたってこの変革を求めてきた、全米で最も重要な組合の一つにおける改革派の歴史的勝利である。 この全組合員投票は、この数年間一連の汚職容疑でUAW幹部が訴追され、UAWと連邦司法省が結んだ和解協定に基づいて行われた。幹部が起訴されたのは、組合の資金を私的に着服した容疑から、雇用主であるFCA社(クライスラーとフィアットの合併会社)から同社に有利な労働協約条件を受け入れる代わりに賄賂を受け取った容疑まで様々である。 郵便投票による全組合員投票には、40万人の現役組合員と60万人の退職者組合員を含む100万人の組合員が投票権を持っていた。そのうち143,000人が投票した。 投票運動今回の全組合員投票の結果は、連邦検察が過去最大の組合腐敗スキャンダルと呼ぶ事件を背景に、2年間にわたり行われた組織化の成果と言える。2019年秋、当時のジョーンズ会長が起訴された後、個々の支部がUAW規約第30条と第32条に基づき、UAWの最高幹部の懲戒を求める決議を提出し始めた。その後、組合員たちは第8条に基づき、臨時大会を開催して、全組合員投票による執行部選挙の実施を検討することを求め始めた。 こうした最高幹部の責任を問う闘いを通じて、一般組合員の組織であるUAWD(注1)が形成された。創立メンバーの一人であるシカゴにある第551支部のスコット・ホールディソンは、最高幹部に対して第32条の倫理規定を適用する闘いの指導者だった。「私たちは長い間、そうしたことを提唱してきた」と彼は言う。「私自身は10年以上前から、マイク・キャノンやビル・パーカーのような(UAWD運営委員会の)メンバーは40年、50年前からです。ほとんどの組合員は、そのような歴史を知らない。ただ、自分たちの労働組合を取り戻すチャンスが今目の前にあることを知り、行動しているのだ」。 このような努力は臨時大会を招集するために必要な要件を越えることはできなかったが、UAWと司法省の間の和解協定により生き返った。 しかし、「一人一票」による全組合員投票を実施するという合意は、結果を保証するものではなかった。結果を出すためには、一般組合員を組織化されなければならなかった。賛成を明確に表明する支部の役員はほとんどおらず、アドミニストレーション・コーカス (注2)は、あたかも全組合員投票が存在しないかのように振る舞った。(現執行部は監視官 からの厳格な命令に基づいて投票について組合員に知らせること以外は拒否していた)。 現執行部は監視官(注3)と協力していることを自慢し、一般組合員が大会代議員(その多くは支部役員)を選出し、その代議員が本部執行部を選出するという現行選挙制度を維持するよう組合員に呼びかけた。 一方、UAWDは数十の支部に対して働き掛けを強めた。現職組合員と退職者はチラシを配り、電話を掛け、テキストメールを送り、5月には悪名高い「陸橋の戦い」(注4)を記念する1週間の行動を実施した。UAWDは全組合員が参加できる会議を毎週開き、「一組合員一票」の賛同署名を回し、ウェブサイトを立ち上げて全組合員投票について広く伝え、ソーシャルメディアを使って全国の組合員に働きかけ、執行部選挙での投票権を求めるキャンペーンを展開した。 次はどうなる?今後どうなるかは、まだ明確ではない。和解協定によると「2022年6月に開催される次回のUAW大会以降に行われる本部執行委員選挙の前に、同選挙に関して一人一票の原則を取り入れるようUAW規約を修正すること。その場合、監視官は速やかにUAWと協議し、次回のUAW大会でUAW規約に盛り込むために『一人一票』原則を確認するUAW規約改正文を起草する 。 さらに監視官はUAWと協議の上、監視期間中の本部執行委員選出のためのすべての選挙規則と方法を策定すること"。」 一部の組合員は、この文言の曖昧さと、UAW(ここでは直接選挙への反対を公言している現組合指導部を意味する)が規約文言の修正について監視官と協議し、選挙規則と方法について監視官と相談することが適切であるか懸念している。 ほとんどの組合員は、執行委員に立候補するのに大会代議員の推薦を必要とする仕組みを求めている。例えばチームスターズ労組では、大会代議員の少なくとも5%の支持を得なければ執行委員に立候補できない。その他のモデルとしては、大会で予備選挙を行い、一般投票に参加できる候補者を決定する全米港湾倉庫労働者組合ILWU、立候補するためには一定数の支部からの推薦を受ける必要がある全米鉄鋼労組USW、または全組合員からの推薦投票手続き(チームスターズでは大会で推薦されるための前提となっている)などが考えられる。さらに、選挙規則では電子投票を認め、選挙運動費用を制限することも考えられる。 いずれにせよ、組合員は2022年6月の大会で、指名そのものや選挙の実施方法、その他組合員が求める規約改正をめぐって、対決することになると予想される。今春に行われる可能性が高い大会代議員選挙は、熱い戦いが繰り広げられるだろう。 この全組合員投票によって、組合の最高幹部を決める選挙が行われることになったが、これは長い間求められていたことだ。問題は、誰が立候補するかだ。現職のレイ・カリー会長をはじめとするアドミニストレーション・コーカス幹部は、数十年にわたって組合の交渉・代表のすべての役職を占めてきた自分たちが最もふさわしい候補者であることを組合員にアピールすることになりそうだ。レイバラーズ労組LIUNAvが1990年代に汚職スキャンダルを受けて和解協定に基づき役員の直接選挙への移行を決議した際、組合員は一票投票で現職会長の再選に票を投じた。 一方、1991年にチームスターズ労組で初めて直接選挙が行われ、「民主的労組を目指すチームスターズ」TDUの改革者ロン・キャリーが会長に選出されたように、UAWの組合員は、UAWDが支援する新しい指導者を選び、「ろくでなしを放り出す」こともできる。これまでほとんど沈黙を守ってきた大きな支部の指導者たちが、勇気を出して改革を訴え、闘いに参加してくるかどうかが注目される。 バッファロー近郊のゼネラルモーターズ社トナワンダ・エンジン工場で働く第774支部組合員のレイ・ジェンセンは、労働者であることを忘れない指導者を選出することを優先する、と述べた。「その人がどの部門出身であるかは気にしない。職場の現実に知っている人が欲しいんだ。UAWは素晴らしい。しかし、その指導部が恥さらしなだけだ」とジェンセンは言う。「ゲイリー・ジョーンズ元会長のような公認会計士は必要ではなく、ブルーカラー労働者が執行部に入って欲しい。」 2年前に結成された改革ネットワークであるUAWDにとって、闘いは続いているが、今ははるかに有利な情勢である。投票率の低さは、組織化作業がまだ終わっていないことの表れだ。 何万人ものUAW組合員が、現状を打破するために投票を行ったばかりだ。この結果は、「組合員が選択肢を求めている」ことを示している。自分たちが組合費を払っているUAW本部の運営方法について、発言権を持ちたいのだ。今、その選択が組合をどこへ導くかは、いよいよ組合員の判断に委ねられることになったのだ。 【訳注 ここに至る経過、とくにUWA幹部の汚職スキャンダル及び法務省との和解については、2021年2月の翻訳記事『全米自動車労組、民主化への道が開く』http://www.labornetjp.org/news/2021/0201us/を参照して下さい。】 注1)Unite All Workers for Democracy(UAWD)「全労働者を民主主義めざして結集しよう」という名称の一般組合員による独自組織(コーカス) Created by staff01. Last modified on 2022-01-05 09:22:50 Copyright: Default |