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●レイバーネットTV159号(2021年5月19日放送)報告

削られていく労働者の権利〜労働界に新しいルールを


<特集:スーパーホテル「安さの代償」〜「雇用によらない働き方」のリアル>
「スーパーホテル」は、安くて人気。その安さを支えているのは、無茶苦茶な働かせ方だった。まるで中世のようなシステムで、労働者性があるのにそれを認めない会社。そればかりか労働基準局も法律の文言に縛られてか認められない。しかもこのような働かせ方はたった一つのこのホテルの問題ではなく、さまざまな業種に広がっていると聞くと、この中でも労働政策研究者の呉学殊さんが述べているように、労働界の新しいルール作りが早急に必要だとつくづく思った。何だか大きな宿題を負わされた感じがする。(報告=笠原眞弓)

アーカイブ録画(80分) https://www.youtube.com/watch?v=8pa02DKoXoY

進行:北健一・北穂さゆり

◆今月の1枚(レイバーネット写真部):夜の川崎工場地帯

◆動画ニュース:悪法が次々つくられる 堀切さとみ編集

 最優先のコロナ対策を差し置いて、衆議院憲法審議会で次々提案され、国民投票法改正、デジタル監視法など、可決・成立していった。かろうじてウィシュマさんの死を知った市民の力で入管改悪法が廃案となった。しかしスタートラインとして、まだ入管にいる多くの人のために……という。

◆特集:スーパーホテル「安さの代償」〜「雇用によらない働き方」のリアル

話す人:渡邉亜佐美さん(スーパーホテル上野入谷口店副支配人)
    原田仁希さん(首都圏青年ユニオン委員長)
    呉学殊さん(労働政策研究・研修機構〔JILPT〕統括研究員)
    吉岡雅史さん(朝日放送ラジオ・スタッフユニオン委員長、オンライ ン出演)

◆カウンターを乗っ取る本社社員の動画はやくざと見まがう

 初めに今日話してくださる渡邉亜佐美副支配人の勤務する上野入谷口店の映像が流れる。お客さんに対応しているときに、会社本部から来た数人の男性にカウンターを占拠される様子が映し出される。通常のホテルは、支配人は社員なのだが、ここでは「業務委託」という形をとっている。ところが勤務状態は過酷で、アルバイトを雇えば、その費用は支配人側の負担になり、業務委託とは程遠い。支配人の休憩時間は認められていなかった。明らかに、雇用関係があると言えるのに、それがなかなか認められないという。

◆占い師に助けられてユニオンへ〜労働問題のオンパレードと驚かれる

 渡邉さん(写真上)は役所や弁護士などあちこち相談してもらちが明かず、ついにこの先自分たちはどうなるのか、死んでしまうのかと占い師に相談したところ、適格なアドバイスを受けて首都圏青年ユニオンに行きついたとか。

 首都圏青年ユニオンの委員長・原田仁希さん(写真下)は、話を聞いて「低賃金・長時間労働・安全・衛生的にも問題があり、まるで労働問題のオンパレードだ」と思ったという。最も驚いたのは、本人が知らないうちに渡邉さんたちが防火責任者として登録され、しかも、深夜は二人がそれにあたることになっていたこと。つまり、夜の睡眠時間は無いということなのだ。ホテル火災の恐ろしさをどう考えているのか。消防署に訴えても、担当部署は憤慨こそすれ、何もしなかった。

◆スーパーホテルの格安料金は低賃金から生まれる

 このホテルは4550円以上の宿泊費で儲けが出る(他の系列ホテルは約7000円)。それは業務委託することで、人件費を抑えているからで、搾取構造なのだと原田さんはいう。研修や分厚いマニュアルもあるのに、労基署は労働者性を認めなかった。それでも会社側と話し合いを1回持ったが、会社はそれを非公式なものとして認めず、二人を解雇するとホテルから追い出した。彼らは質問状を出したが、返事はなしのつぶて。

◆大問題の雇われなくて働いている人の処遇、気がつけば国家が貧困に

 ここで労働政策を研究する呉学殊さん(写真下)が登場し、解説してくださる。このような働き方を「雇用類似」といい、そういう人が世界的に増えていて大問題だという。
 この「雇用類似」の一番の課題は、
 ・労働者としての保護を受けることができない
 ・全生涯にわたって不安定な生活を強いられる
である。つまり、最賃の保証、労働時間の規制、残業代、解雇規制、雇用保険、労災不適用、産休・育休なしなのである。

 雇用年金に加入できないので国民年金になり、老後も不安定になる。すると、国としても福祉費用が税金から支出することになる。 問題は、1985年以降に働き方が多様化したにも関わらず、国の制度がその変化について行けていないことだと指摘する。

◆最低限のセーフティーネットを作るべき

 呉さんは社会全体が、費用の安くなる働き方にシフトしていっているのが問題だという。国はこの状態を野放にしないで、現在、安い働き方をしている人たちにも、コストがかかるようにしていかなければならないという。つまり、最賃や労災、雇用保険を適用して、最低限のセーフティーネットを作るべきという。

◆ラジオは非常時のライフラインだが削られる経費

 もう一つ、労働者性の有無の問題で、朝日放送ラジオのニュース原稿を書く仕事をしていらした吉岡雅史さん(写真下)がオンラインで登場。ニュース原稿のほとんどを書いていた。社員以上にこき使われた挙句、「名ばかり」派遣社員ということで、一方的に解雇されたという。いくらラジオは非採算部門とはいえ、非常時には最も頼りになるライフライン。そこを派遣社員だからと、契約を切るという暴挙に出たのである。現在、彼らは労働組合を作って団交を申し入れているが、拒否されている。

◆日本の年収はG7のなかで最下位、脱却するには

 呉さんは、OECDが出しているG7各国の年収を見ても、日本は2000年から上がっていない。しかも、今や韓国、イタリアより低くなっていると指摘。これを是正していかないと、景気全体が回復しないとか。そのためには、標準契約書制度が必要ではないか。韓国では俳優などがそれを取り入れて、交渉力が上がってきている。日本は標準契約書制度がない。

◆業務委託の労働者性、スーパーホテル裁判に労働者の未来が託されている

 労使関係としては、業務委託が今急速に広がってきている。ただの受付の仕事や美容師なども業務委託になっているが、実態は「労働」。ところが労基署は、判断しない。90%黒でも10%が業務委託の可能性があれば、動かない。労基署が動かないと会社にお墨付きを与えることになるので、労基署にすらうっかり頼れない。このスーパーホテルの裁判に勝たないと、全労働者の労働環境はさらに悪くなるから負けられないと、原田さんは決意を語る。

◆労働問題の裁判は一人ではできない、ユニオンを頼ること

 渡邉さんは、経験から、裁判しか方法がなくなった場合、書類の用意や弁護士の事など、一人では無理なので、労働組合に相談してほしいと勧める。

◆闘いを通して知る寄り添うこと

 吉岡さん4年目に入ると心身共に疲労している。でもブラック企業は許すわけにはいかないので、少しずつでもいい世の中を作っていく礎を作っていきたいと決意を述べるとともに、この闘いを通して、そばにいる人の大切さ、寄り添うとは何かを知ったと語る。

◆ブレイクタイム:ジョニーHの歌と乱鬼龍の川柳 動画ココカラ

 ジョニーHさんの歌は、スーパーホテルを風刺したものだった。 「働き方変えて命まで搾り」(乱鬼龍)

スーパーホテル事件の裁判情報


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