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映画『母たち』を観て〜「東アジア反日武装戦線」母親の実像

堀切さとみ

 『母たち』という八ミリフィルム映画を観たのはもう30年以上前、早稲田のアクトミニシアターだった。松下竜一の『狼煙をみよ』を読み、東アジア反日武装戦線の若者たちに思いを馳せていた頃のことだ。

 この映画を作ったのは国立にある映像居酒屋「キノキュッヘ」のマスター、佐々木健さん。連休中に4日連続で『母たち』を上映するというので、初日の5月2日に観に行った。

 1987年の制作だから、大企業爆破からわずか12年しかたっていない。その時期に、四人のメンバーの母親のインタビューが撮れたというのは凄い。映像や音声の粗さは目立つものの、それ以上に感じ入るものがあった。「爆弾魔」と呼ばれた青年たちの母親は、それぞれに温かく、凛としていることに驚いた。コロナに我が子が感染しただけで自殺する親も出てくる今、「国家や体制に服従している母」から解放されていく、女性たちの姿が眩しかった。

 映画『死んどるヒマはない』の益永スミコさんも、娘の陽子さんと共に出てくる。死刑囚・片岡利明さんの母親になることを引き受けたスミコさんは「家よりも個人」「親である前に人間だ」と語っている。その益永さんも数年前に亡くなってしまい、存命するのは荒井まり子さんの母だけになってしまった。彼女は今公開中の『狼をさがして』の中にも登場し、とても魅力的な晩年をみせてくれている。

「キノキュッヘ」上映情報


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