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自らの国の奢った姿がみえてくる〜ドキュメンタリー映画『狼をさがして』

根岸恵子

 『狼をさがして』を観た。この映画は70年代中頃、「連続企業爆破事件」を引き起こした 「東アジア反日武装戦線」の首謀者とそれを取り巻く人々を捉えたドキュメンタリー映画 である。監督のキム・ミレは、『土方(ノガタ)』(2005)や『外泊』(2009)といった韓国の 労働者の現状を描いたことで有名だ。韓国人の監督が日本の「東アジア反日武装戦線」に 関心を持ったのは、どうしてだろうか。

 キム監督が「東アジア反日武装戦線」を知ったのは、釜ヶ崎の野宿者からだった。野宿 者の多くは戦後の高度成長期に日雇い労働者として搾取され、オイルショック以降の景気 後退で社会的棄民となった。彼女はその事実から、日本国内で差別される人々に関心を持 ち、強制労働で命を奪われた朝鮮人徴用工の虐殺現場を訪ね、そこがかつてアイヌの人々 の土地であったことを知った。日本の植民地主義はアジアの人々や被差別者、貧困者を踏 みつけて成り立っていることを、キム監督は問題意識として持ち続けた。そして金儲けの ために人々や他国を蔑ろにし、搾取の元凶である企業に対し爆破事件起こした「東アジア 反日武装戦線」に焦点を当て、関係者へのインタビューを行ったのである。

 そこから見えてくるのは、関わった人たちの健全さだ。服役した支援者のある家族は、 事件後、娘を通して多くの本当の友人を得たと語っていた。亡くなった父親の遺影には「秩 父事件」の碑がある。また出所した浴田由紀子さん(写真右)が裁判の最終陳述で語ったことは、心 に沁みた。自分たちは暴力ではなく、考えを広めるために、平和的に仲間を増やすべきだ った。そうすれば社会は変わるだろうと。

 この映画を観て思ったことはいろいろあるが、多くの日本人は自らの国の奢った姿を知 らないのではないかということだ。だからこそ日本人には観てほしい映画である。

・上映館 http://www.imageforum.co.jp/theatre/

・また、新宿のIRA (Irregular Rhythm Asylum) では11日まで「東アジア反日武装戦線関連資料展」をやっています。http://ira.tokyo/


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