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「人をモノとして扱うのが許せない!」〜いすゞ自動車の派遣切りに抗議の声

動画(10分)

 「職場の仲間に挨拶もできず、即日解雇された。人をモノとして扱っているのが許せない!」。千葉哲也さんの怒りは深かった。23年間、いすゞ自動車藤沢工場でトラックのエンジン設計をしてきた千葉さんは、2019年12月2日、突然「派遣切り」にされた。26歳から23年間、人生の大半をいすゞに尽くしてきた。それがいすゞ上層部の意向で突然、派遣契約終了が告げられたのだ。千葉さんは派遣会社(株)テクノプロの社員であるが、現在、横浜支店で「待機扱い」になっている。*写真=千葉哲也さん

 3月19日、東京・大森にあるいすゞ本社前に「神奈川シティユニオン」の旗が翻っていた。とにかくビルがでかい。いすゞが超大企業であることを誇示しているようだ。しかしそんな大企業だが、生産現場では「派遣」など間接雇用を最大限活用している。千葉さんの設計グループでも40人のうち20人が「派遣」だ。「派遣」ならコストを抑えられ、いらなくなったら「契約終了」で簡単に切れるからだ。

 千葉さんは、派遣切りに納得いかず「神奈川シティユニオン」に加入し、いすゞとテクノプロに団体交渉を求めてきた。しかし正当な理由もなく拒否された。そのため2020年6月に神奈川県労働委員会に救済申立をして、現在、係争中である。組合の要求は「派遣契約の継続か直接雇用」である。

 外国人労働者が7割という「神奈川シティユニオン」。この日も中南米日系人やパキスタン人など、約60人が集まった。チリの革命歌「不屈の民」や「ベンセレーモス」など国際色豊かな歌と踊りでにぎやかだった。

 千葉さんは会社に向かってマイクでこう訴えた。「いすゞのコンプライアンスには“従業員の尊重”という項目があり、こう書いてある。『従業員が能力を最大限発揮できるように人格・個性を尊重し、安全で働きやすい環境を実現します。これに反するような事態が発生したときには、経営トップ自らが問題解決・原因究明にあたり、再発防止ならびに社会の迅速かつ的確な情報の公開と説明責任を遂行します』と。いすゞの上層部はこれを実行しているのでしょうか? 甚だ疑わしいです。私は組合も派遣法のこともまったく知らずに途方にくれ、泣き寝入りするところだった。でもわらにもすがるつもりで神奈川シティユニオンに加入し、いまこの場に立っている。私はこのようないすゞのやり方に断固抗議します!」と。

 千葉さんの派遣契約終了の理由を会社側は、「ヒューマンスキルの問題=コミニュケーションがとりづらい」と個人の資質のせいにしていたが、本当は別の理由があるようだ。神奈川シティユニオンは、今回の派遣切りは、2020年4月1日に施行された改正労働者派遣法の「同一労働同一賃金」に関係があると考えている。同法では「派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇」がうたわれており、この基準をクリアするためには、千葉さんの月給を13万円以上あげなくてはならないからだ。

 「派遣は人間ではないのか? 単なるモノなのか」。23年間働いてきた千葉さんを平然と追いだしたいすゞ自動車への怒りのシュプレヒコールが、巨大ビルを包んでいた。(M)


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