〔週刊 本の発見〕『わたしもじだいのいちぶですー川崎桜本・ハルモニたちがつづった生活史』 | |||||||
Menu
おしらせ
・レイバーフェスタ2024(12/25) ・レイバーネットTV(11/13) ・あるくラジオ(10/10) ・川柳班(11/22) ・ブッククラブ(10/12) ・シネクラブ(9/1) ・ねりまの会(10/12) ・フィールドワーク(足尾報告) ・三多摩レイバー映画祭 ・夏期合宿(8/24) ・レイバーネット動画 ●「太田昌国のコラム」第96回(2024/11/15) ●〔週刊 本の発見〕第368回(2024/11/21) ●「根津公子の都教委傍聴記」(2024/11/14) ●川柳「笑い茸」NO.157(2024/9/26) ●フランス発・グローバルニュース第14回(2024/10/20) ●「飛幡祐規 パリの窓から」第95回(2024/9/10) ●「美術館めぐり」第4回(2024/10/28) ★カンパのお願い ■メディア系サイト 原子力資料情報室・たんぽぽ舎・岩上チャンネル(IWJ)・福島事故緊急会議・OurPlanet-TV・経産省前テントひろば・フクロウFoEチャンネル・田中龍作ジャーナル・UPLAN動画・NO HATE TV・なにぬねノンちゃんねる・市民メディア放送局・ニュース打破配信プロジェクト・デモクラシータイムス・The Interschool Journal・湯本雅典HP・アリの一言・デモリサTV・ボトムアップCH・共同テーブル・反貧困ネットワーク・JAL青空チャンネル・川島進ch・独立言論フォーラム・ポリタスTV・choose life project・一月万冊・ArcTimes・ちきゅう座・総がかり行動・市民連合・NPA-TV・こばと通信
|
毎木曜掲載・第151回(2020/3/26) 「なかよくしよう」と訴えるハルモニ『わたしもじだいのいちぶですー川崎桜本・ハルモニたちがつづった生活史』(康潤伊・鈴木宏子・丹野清人編著 日本評論社 2019年1月 2000円+税) 評者:佐々木有美川崎市に桜本という街があります。桜本は、5年ほど前、ヘイトスピーチデモの標的になりました。戦前から朝鮮人のコミュニティーがあり、戦後も多くの朝鮮人が移り住みました。この街には「ふれあい館」という多文化共生をめざす施設があり、その中に識字学級があります。本書は、そこに通う在日のハルモニ(おばあさん)たちの作文集です。ハルモニたちは現在、80歳台後半から90歳台。子ども時代に教育の機会を奪われ、日本語を聞くこと、話すことはできても、読むこと書くことができません。実はこの識字学級とヘイトスピーチとは、直接の関係があることが、読み進むうちにわかってきました。 朝鮮半島から日本へ、日本からまた朝鮮半島へ、そしてまた日本へ。植民地支配と朝鮮戦争、差別のはざまで、命からがら生き延びてきたのがハルモニたちでした。ランドセルを背負って学校に通うことが彼女たちの夢でした。そのハルモニたちが文字を持つことで、かけがえのない歴史の一コマ一コマを蘇らせています。徐類順さんは、朝鮮での子ども時代に日本人の家に行った記憶を書いています。「わざと10えんだまをあちこちにおいてもっていくかみはっていました。そのころほかのいえでもにほんじんはおなじことをしていました」。呉琴ジョさんは、お米を庭に隠したお父さんが日本人の警官によって「あしに松の木をはさんですわらされた」と拷問の場面を書いています。日本の植民地支配の実態が素朴な文章の中から迫ってきます。 でも書けないこともたくさんあります。金文善さんは、戦後焼酎を作って売り、三人の子どもを育てました。警察に摘発されて刑務所に入ったこともあったそうですが、そのことは、作文には書けませんでした。在日の人々に健康保険が一律に認められたのは1986年。それまでは医療機関にかかることができませんでした。金芳子さんは、炭鉱で働く父親がけがをして職場を追い出され、一家が飢えに直面したと書いています。
そんなハルモニたちが2015年9月「戦争反対」の声を桜本で上げました。政府が安保関連法案を提出したときのことです。国会前には行けないハルモニたちは地元で手作りデモをしました。戦争で、さんざんな体験をしたハルモニたちの思いは強かったのです。でもそれがその後のヘイトスピーチデモの発端になってしまいました。「朝鮮人は出ていけ!」と押し寄せるデモに金芳子さんはこう書いています。 「・・・いまさらかえれっていわれてもかえるところはありません。もう日本にきて81年にもなるんですよ。かんこくには私のうちはないここにしかいるところはない。子どもやまごに、そんないやなことばをきかせたくない。もう、そろそろそんなことやめにして、なかよくしましょうよ、とにかく一トラヂ会(筆者注 在日高齢者サークル)にあそびにきてください。いっしょにしょくじをしてうたったり、おどったりしましょう。」ヘイトデモをする人たちに「なかよくしよう」と訴えるハルモニ。何もかも抱擁する姿は彼女たちの過酷な体験を逆に映し出しているかのようです。 *「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美、根岸恵子、杜海樹、ほかです。 Created by staff01. Last modified on 2020-03-26 15:26:44 Copyright: Default |