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LNJ Logo 北海道に核のゴミ捨て場は要りません/「さようなら原発集会」に400人
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10月18日、札幌市・大通公園で「さようなら原発北海道集会」が開催され、地元紙・北海道新聞の報道によれば400人が集まった。

この集会は、北海道平和運動フォーラムなどの主催で、福島第1原発事故後は毎年3月と10月に行われている。今年3月の集会は新型コロナウィルス蔓延の影響で中止となったため、約1年ぶりの開催となった。

福島第1原発事故からまもなく10年。北海道は福島から遠いせいか、反原発運動側はもちろん真剣に取り組んではいるものの、どこか違う世界の出来事のような「ある種の余裕」があった。泊原発の廃炉を目指す取り組みや、核のごみ地層処分研究のための施設「深地層研究センター」(幌延町)の話題が中心で、自分たちが当事者という意識は福島や首都圏などと比べて薄かったように思う。

それがどうだろう。この日の集会参加者の表情は一様に硬く厳しい。自分たちがついに「当事者」になったのだというある種の悲壮感が見えた。理由は言うまでもなく、8月13日以降、明らかになった寿都(すっつ)町、神恵内(かもえない)村の高レベル放射性廃棄物地層処分地への応募表明だ。北海道民にとっての「8・13」は、福島県民が味わった「3・11」に匹敵するものがある。

この日の集会では6人が発言した。地質学者の小野有五・北海道大名誉教授は「今の世代が責任を持たなければならないと文献調査に応募表明した2町村長は言うが、私たちは原子力発電をしてくれなどと頼んだ覚えはない。勝手に原発を始め、ごみを作り出した者が後始末をすべきだ」と電力会社・原子力ムラの責任を追及した。

道内最大の生協組織「コープさっぽろ」の麻田信二理事長は「食と観光、北海道にはこの2つしかないのに、核のごみが来たら両方ともダメになってしまう。北海道産というだけで売れなくなってしまうだろう」と懸念を表明した。実際、この懸念は的外れではない。泊原発の運転が始まった1989年、隣接する岩内町から大手乳業メーカーの工場が撤退した事実もある(「幌延=核のゴミ捨て場を拒否する」滝川康治/技術と人間/1991年より)。処分不可能な危険なごみを生み出し続ける原発。事故がなければいいというわけにはいかない。

食糧自給率が下がり続ける日本にあって、自給率が200%を超える北海道は日本の一大食糧基地だ。生乳(牛乳)に至っては、今年か来年にも全国の生産量に占める北海道産の割合が50%を超える見通しだ。北海道でも農家の廃業は続いているが、それ以上に道外の農業基盤弱体化が進んでいる。道内農業界にとって本来なら喜ぶべきことのように思えるが、生乳生産量全国シェアに占める道産50%超えは「分母」が少なくなった結果としての達成に過ぎないのであり、数字の裏には喜んでいられない現実がある。

コロナ禍による自粛ムードが世界を覆い尽くしていた今年4月、WHO(世界保健機関)とWTO(世界貿易機関)は「コロナ禍が長引けば飢餓人口拡大の危険性がある」と警鐘を鳴らしている。食料生産はできても「自粛」で食料流通を担う運送業界の人手が確保できない。人類はそんな恐るべき事態に直面していたのだ。

こんな危機の時代に、日本の食料生産の大半を支える北海道に核のごみを持ち込もうとする自公政権ほどの愚か者は探してもそうそう見つかるものではない。自民党政権やその支持者はすぐに私たちを「反日左翼」呼ばわりするが、何のことはない。日本を破壊し、日本人全体を食糧難に追い込む自民党をこそ国賊と呼ばずして、いったい誰を国賊と呼ぶのか。

大きな拍手で迎えられたのは、核のごみ処分場への応募に揺れる地元からの現地報告だ。寿都町でペンションを経営する槌谷和幸さんは応募に反対する住民団体を地元で急きょ立ち上げた。労働組合活動の経験はあるものの、こうした住民団体をゼロから設立しての運動経験のある人は地元にはほぼいない。「北海道全体に影響を与える大きな出来事を、小さな一自治体の長の判断だけで決めることができてしまうこの国の現実がある。多くの人が国に対して声を上げ、このようなことができなくさせる新たな法律を作らせることが必要だ」と訴えた。同時に、「寿都にはこちらからお願いしたときに来てくれればいい。過剰な取材、要望やアドバイスはありがたいが小さな町ですべてに応えることはできない。ひとりひとりが国策を止めるため自分にできることをしてほしい」と、現地入りよりも各自が自分自身でできること、やるべきことをきちんとやりきる必要性を指摘した。

このほか、室蘭工業大教員で「戦争させない北海道委員会」共同代表・清末愛砂さんから発言があった。日本学術会議の新会員推薦者のうち6名について、菅政権が任命を拒否したが、清末さんは憲法学者の立場から「この攻撃は6人に対してだけではなく、また学者に対してだけかけられたものではない。国家権力に逆らう者はこのような目に遭うのだという全市民への威嚇である」と警告。「1つの考え方だけに染まってしまうことによる過ちから政府を守るために設置された学術会議は税金で運営されなければならない」として、安易な民営化論、新自由主義者から野放図に加えられている「嫌なら税金を返上して民間で勝手に学問をやればいい」論を明確に批判した。

政党からは、道下大樹衆院議員(立憲)と畠山和也前衆院議員(共産)から挨拶。核のごみ処分場阻止への決意表明があった。野党からたった2党だけか、と思う人もいるかもしれないが、北海道では先に行われた立憲・国民の合流で、両党の国会議員は全員が立憲に合流。野党共闘への大きなステップとなった。

なお、寿都から現地報告をした槌谷和幸さんと、清末愛砂さんの発言は、いずれも安全問題研究会youtubeチャンネルにアップロードしたので、興味のある方はお聞きいただきたい。また、この集会後に引き続いて行われた野党共闘実現を求める街宣行動では、この前日(17日)に1億もの法外な税金をはたいて国葬が強行された中曽根康弘元首相の生前の「罪状」を示す立看板が登場した。こちらについても記事にした。併せてご覧いただくと、この国の「巨悪」が戦後、途切れることなく連綿と続いて今日に至っていることがきっとご理解いただけるだろう。

<音声>槌谷和幸さん現地報告(安全問題研究会youtubeチャンネル)
https://www.youtube.com/watch?v=P-bJ8taxhpQ

<音声>清末愛砂さんの発言(安全問題研究会youtubeチャンネル)
https://www.youtube.com/watch?v=dxR6gU8O8r8

<関連記事>札幌市中心部に中曽根「国葬」批判の立て看板登場
http://www.labornetjp.org/news/2020/1603118471922zad25714

(写真・文:黒鉄好)



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