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米国労働運動:シカゴの労働組合が警察予算の削減と国民皆保険の予算化を要求
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〔解説〕ジョージ・フロイドさん殺害に対する怒りの抗議は収まることを知らず、全米に広がり続けている。各自治体では警察予算の削減、さらに警察そのものの廃止までが要求されている。その中でシカゴ市での運動の広がりが紹介されているので紹介する。一月ほど前の状況が報告されているが、差別や貧困などこれまでアメリカ社会に存在していた問題がコロナ危機により表面化し、多くの社会運動が一つになって立ち上がっている姿が見て取れる。その中でシカゴ教員組合などの労働団体が大きな位置を占めていることにも注目したい。筆者は正看護師で、シカゴ教員組合と全米看護師連合の両組合の組合員である。(レイバーネット日本国際部 山崎精一)
*毎月1日前後に「レイバーノーツ」誌の最新記事を紹介します。
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シカゴの労働組合が警察予算の削減と国民皆保険の予算化を要求

デニス・コスス(正看護師)

*6月27日、シカゴ医療地区にあるイリノイ大学でデモ行進する看護師、教員などの組合員と住民組織の人たち

 シカゴ教員組合は、他の複数の組織とともに、シカゴの公立学校から警察を排除するように要求シカゴの労働組合と住民組織の共闘組織は、「黒人の生命は大切だ、医療正義を直ちに」の呼びかけに応えた団結した。このグループは、警察の人種差別的の取り締まりのために現在使われている予算を、健康を改善するための人的サービスに振り向けることを要求している。

 6月27日の集会と行進には約200人が参加し、組合員、社会主義者、医療の正義と警察の廃止を求める人たちが参加した。集会参加者は医療における人種差別に注意を喚起し、地域住民を傷つける組織から予算を取り上げ、地域住民を支援する組織に予算を投入するよう要求した。シカゴ医療地区から、2012年にレキア・ボイドさんが非番の刑事に殺されたダグラス公園まで行進した。

 参加者の多くは医療従事者であり、差別を目の当たりにし、行政責任者が行動することを求めている。マーティーズ・シズムさんは、多くの地域の病院で正看護師を代表する全国看護師連合の執行委員である。様々な予算が不足している地域に住んでいる医療保険のない大勢の人たちのことを彼女は語り、最後にこう述べた。「今こそシカゴ市は黒人の首から膝をどける時です。今こそ医療の正義の時です。今こそ警察の予算を削減する時です!

 PHNP(全国医療計画を求める医師たち)理事のスーザン・ロジャース博士は、1979年に医師として働き始めた時よりも、人種間の差別が実際には悪化していると集会参加者に語った。

●変化なし

 しかし、市と郡の政府の行政責任者は、警察の不正行為や医療の差別について、いまだに具体的に取り組んでいない。ローリ・ライトフット市長は、苦しんでいる地域への予算配分、公教育の支援、警察の抜本的な改革、銃暴力の削減という進歩的な選挙綱領を掲げて2019年4月に当選したが、これまでのところ、成果を上げていない。6月24日、市長によって任命されたシカゴ教育委員会は、学校から警察を排除するという提案を4対3で否決した。集会で演説したクック郡のブランドン・ジョンソン委員は、警察の予算を削って、黒人とラテン系住民に予算を振り向けるための決議案を提出していた。

 シカゴは国勢調査区域間の平均寿命に30年の格差があり、2019年の分析によると全米で最悪である。市中心部のすぐ北にある裕福な白人のストリートビルでは、平均寿命は90歳である。黒人が多いエングルウッドはわずか13キロほどしか離れていないが、平均寿命は60歳である。この調査はCOVID-19がシカゴを襲う1年前に完了しており、公衆衛生上の緊急事態はその時に宣言されるべきであった。

 COVID-19は、食料品店、倉庫、配送サービス、老人ホーム、病院などの必要不可欠な事業に多く従事するシカゴの有色人種の人たちに壊滅的な打撃を与えた。シカゴの人口の30%を占めるアフリカ系アメリカ人は、COVID-19による死亡者の70%を占めている。ラテン系アメリカ人は人口の29%で、COVID-19感染者の44%を占めている。

 これらの数字は、慢性的な医療の人種差別を示している。COVID-19で死亡するリスクを高かめる基礎的な健康状態と皮膚の色との因果関係はない。複数の査読付き研究によると、十分な住宅、健康的な食品へのアクセス、一次医療と薬の利用可能性、生活賃金を支払う仕事、および人種差別によるストレスが健康状態を規定している。アフリカ系アメリカ人地域にあるシカゴ市の緊急治療室は、このパンデミックの最中に一時的に閉鎖され、その決定に反対する人たちが団結して立ち上がった

●警察は説明責任を果たすか、それとも廃止されるのか?

 ジョージ・フロイドさんの殺害により、アメリカ社会における人種差別の問題がさらに焦点化した。警察部門の運営を監督する選挙で選ばれた組織である「文民警察説明責任協議会」を設立する条例が現在、市議会に提出されている。この条例は、19人の市議会議員と6つの地域の労働組合からの支持を集めている。

 学校に警察が常駐することにより、生徒が傷つき、「学校から刑務所に生徒を送り込む」ことにつながる。シカゴ教育庁は現在、学校に警察官を配置するために年間3300万ドルを費やしている。6月24日に行われたデモではこの予算を生徒のために使うことを要求した。

 秋に学校を再開することをシカゴ教育庁が目指すのなら「安全の確保のためには消毒液だけでは不十分だ」とシカゴ教員組合は警告している。 シカゴ教員組合は学校を内部的に再編成するための予算を要求しているし、警察配置のための3300万ドルを「すべての学校に看護師、ソーシャルワーカー、正義回復のためのコーディネーターと十分な人員配置」のために振り替えることを要求している。生徒の大半が有色人種の人々である地区では、その家族はすでにCOVID-19によって不釣り合いに影響を受けている。

 もう一つの要求は、黒人差別廃止ネットワークなどの組織によって提唱されており、市議会が警察の予算を75パーセント削減し、その節約分を社会サービスと地域社会プログラムに投資することである。シカゴ市は200万ドルの予算削減のために2012年4月に精神科クリニックの数を12から6に減らしているので、この要求は当然である。シカゴ市の2020年の予算では、ほぼ18億ドルが警察に割り当てられている。その予算のわずか1%が精神科クリニック開設に振り向けられたとすれば、単純な計算で54のクリニックに資金を提供できることになる。

 6月27日の行動を企画し参加した組織や個人の多くは、労働組合活動家、地域活動家、社会正義の闘士、警察廃止を求める人たちの間の継続的な協力関係を築いてきた人たちだった。労働組合はこれらの闘いに重要な貢献をすることができる。ライトフット市政の抵抗にもかかわらず、昨年秋に教育労働者がストライキを行ったときの大きな成果を思い出す価値がある。職場が再開され、対面式の学校教育を求める圧力が高まる中、このような共闘はシカゴの安全と健康のために不可欠なものとなるだろう。


Created by staff01. Last modified on 2020-08-01 10:23:15 Copyright: Default

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