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コロナ禍で苦しむユニクロのサプライチェーン労働者たち
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コロナ禍で苦しむユニクロのサプライチェーン労働者たち


*組合から食料パッケージを受け取るバングラデシュ労働者

 新型コロナウィルスは、世界中で一番弱い立場におかれている人々を直撃した。一番の犠牲者は海外、国内からの移住労働者だが、アパレル・スポーツ用品のサプライチェーンで働く女性労働者の窮状もメディアにしばしばとりあげられている。

 世界の労働・人権NGO、労働組合は対応に動き出し、声明や要請を次々と発表している。クリーン・クローズ・キャンペーン(CCC)も国際的ネットワークからの情報の収集、抗議行動への支援、緊急支援金の設置、ブランドへの支払い要請をいち早くスタートさせた。また、サプライチェーン労働者の惨状を伝えようと、支援に取り組んできたユニクロのサプライチェーンであるジャバ・ガーミンド(JG)労働者の現状、「ユニクロの元下請け労働者たち、新型コロナ下の苦境」をウェブサイトに掲載し、この報告を各国で翻訳してほしいという呼びかけをおこなった。この要請に応えて、JG争議の支援をしている和田智子さんが報告を翻訳したので、一読してほしい。
http://www.y-ar.org/images/PDF/20200500-CCC.pdf


*バングラデシュ・チッタゴンEPZ(輸出加工区)の医療センターで診断を待つ女性労働者たち

 CCCによる報告の背景を解説してみよう。
 アパレル・スポーツ用品のサプライチェーンは、当初は武漢封鎖を実施していた中国から生地などの原料が調達できないことから混乱が生じていたが、3月半ば以降、ヨーロッパ、アメリカの都市封鎖により深刻な事態に襲われた。欧米のショップが次々と閉鎖されると、一部のブランドは生産国のサプライヤーへの注文をキャンセルしたり、支払いをストップしたため、サプライヤーは労働者の解雇や賃金なしの一時帰休をおこなった。コロナの感染は生産国であるバングラデシュ、インド、インドネシアなどにも広がり、都市封鎖や外出制限が実施され、労働者は賃金も得られず、働きに行くこともできなくなった。社会保障が不十分な国で収入の道がたたれてしまったのだ。


*ロックダウンでEPZ(輸出加工区)から故郷へ帰るバスを待つスリランカの労働者

 インドネシアでは3月2日に日本人から感染した母娘が、初めてのケースと確認された。その後、感染者は増え続け、医療体制への不安もあり、市民はパニック状況におちいったという。4月10日から流行の中心となっているジャカルタ首都特別州、その後、周辺の州で事実上の「都市封鎖」にあたる「大規模社会制限」を実施。4月24日から5月23日のラマダン期間中も帰省が禁止された。WHOの統計によれば、インドネシアの5月20日現在の感染者総数は19189人、死亡者数は1242人。東南アジアでは、感染者数はシンガポールに次ぎ第2位、死者数では第1位となっている。5月20日には感染者数は最多693人を数えた。

 4月の末にJG労組幹部のヤヤットさんとZoomで話をした。JG労組のメンバー1500人はフェイスブックでつながり、故郷に帰った人もいるがお金がないので引越しもできず、多くのメンバーが工場の周辺に住み続けている。年齢が高くなると正規労働者としての再就職が難しく、日雇いの仕事あるいは食べ物を調理して屋台で売るなどして、日々の糧をえている。居住している地域が「大規模社会制限」に指定されたため、JG労働者はこうしたインフォーマルな仕事もできず、借金を重ねている。「以前は1日2食でしたが、今はおかずのないご飯だけの1食で飢えをしのいでいます。」

 ユニクロの親会社、ファーストリテイリングの柳井正社長の資産は3.4兆円。フォーブスによれば昨年は世界富豪ランキング27位、日本一の富豪である。そして、ユニクロの服を作っていた労働者たちは1日1食。コロナ禍がつくりだしたこの現実に、私たち日本人はどう向き合っていけばいいのだろうか。(遠野はるひ・CCC東アジア/横浜アクションリサーチ)

*写真上=労働者への食品パッケージを配布するCCCインドネシアメンバー

*関連記事:
http://www.y-ar.org/ja/m-action-jp/2017-09-09-05-52-21/m-uniqlo-campaign.html


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