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私たちも生身の人間!/仮放免者の会「こどもの日・絵画イベント」
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私たちも生身の人間!〜仮放免者の会「こどもの日・絵画イベント」

全動画(1時間18分)

 ミャンマー人はじめ多くの外国人が住む街である東京・高田馬場。ここにある暁法律事務所の会議室で、5月5日「こどもの日」に「仮放免者の会」主催の絵画イベントが開催された。

 「仮放免者」とはなじみの薄い言葉だが、現在日本に2217人いるという。1980年代バブル景気のとき、日本の労働力不足を補った外国人は32万人もいた。しかしその人たちは観光ビザで入国したためオーバーステイとなり、国外退去命令が出された。その後、多くの人たちが家族を形成し長期に日本社会に定着したが、扱いは「仮放免」のままだった。そのため就労や社会保障が認められず、生存権が奪われた状態で暮らしている。なかにはインドのシーク教徒で国で迫害され逃れ、日本で難民申請している人もいる。そんな実状を絵を通して、世の中に伝えようとする企画が今回の「絵画イベント」だった。

 コロナの真っ只中のため、テレビ会議システム「ZOOM」を使っての開催となった。7人の子どもたちによる9点の作品が集まった。テーマは「あなたの家族」だった。今回絵を寄せた7人は、フィリピン、インド、ガーナ、ペルーの小学生から大学生で、家族は20年以上日本に住み、全員が日本生まれで日本育ちである。


*小学生ミシェルさんの絵

 絵の紹介に合わせて、ZOOMを通して描き手のメッセージが寄せられた。フィリピン国籍の小学生ミシェルさん(仮名)はこう語った。
 「このチャンスをありがとうございます。私はなやみがあります。お母さんの友達にたすけてもらっています。私はめいわくをかけたくないです。みんなと同じように、お父さんが働いて、お母さんがせんぎょうしゅふみたいになりたいです。せっかく日本で生まれたのに、中1にもなれずにフィリピンにかえるのはいやです。ほんとにビザをください。おねがいします。よろしくおねがいします」


*リアンさんの絵

 ガーナ国籍のリアンさん(仮名)は、
「私はこれまで家族にたくさん支えられてきました。今まで何とかやってこられたのも家族のおかげです。“どんなにつらくてもあきらめるな”と励ましてくれるお父さん、精神的につらい時や、他愛のないお話にいつでも付き添ってくれるお母さん、我が家のコメディアンとして毎日笑わせてくれる妹と弟、みんなかけがえのない存在です。けんかや衝突もあるけれど、この家族に生まれて後悔したことは一度もありません。本当に家族が大好きすきで、一人暮らしを始め、自立しても毎日家族のことを考えています。本当に最高のメンバーです。これからも、家族みんなで力を合わせて、笑顔あふれる日々を過ごしていきたいです」

   

 一人ひとりの言葉から、家族を大切にする思いと、生身の人間として普通に生きていきたい思いが伝わってきた。
 作品の選考・講評をしたのは、中島京子さん(小説家・直木賞作家)、安田菜津紀さん(フォト・ジャーナリスト)、榎並和春さん(画家)、永野潤さん(哲学者)だった(写真上)。それぞれが思いをこめて丁寧なコメントを寄せた。安田さんはミシェルさんの絵について「小さなハートが細かく描きこまれていて可愛らしい。ほっこりする作品だ。虹が家族を守っているようだ。この虹のように日本社会が家族を守らなくてはいけないと思った」と述べた。

 最後に、審査員の各賞・特別賞・大賞の発表があった。大賞には、リアンさんの絵が選ばれた。そして賞品として、全員の子どもたちに「たこ焼き器」とパズル・プラモデルが贈られることになった。この日ネット配信に立ち会った駒井知会さん(実行委員長・弁護士/中央)、指宿昭一さん(弁護士/右) 、宮廻満さん(仮放免者の会事務局長/左)は、初めての試みがうまくいって満足そうだった。駒井さんは、「可視化できてよかった。仮放免者の問題を広く知ってほしい。そのためにもこのアーカイブ録画を見てほしい」と笑顔で語った。(M)

「仮放免者の会」ホームページ


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