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報告 : レイバーネットTV第147号「フクシマ・コロナ・介護現場」に迫る
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何が起きたってしっかり地に足つけていこう!

 レイバーネットTV 第147号放送
<どうなっているの? フクシマ・コロナ・介護現場> 報告=笠原眞弓

●アーカイブ録画(91分)

 日本中がガタガタしている感じのする昨今、3カ月ぶりのレイバーネットTVが3月18日放送された。司会はジョニーHと尾澤邦子のコンビです。ジョニーHさんが、新型コロナウイルスの正式名を披露。コロナウイルス自体は以前からあり、新型であることを明示しなければならないということだ。つまり「CORONAVIRUS DISIES-2019」訳すとコロナウイルス疾患2019というところか。略称はコビット19(COVID-19)ともいう。
 今回の放送は、特集は盛りだくさんの3件



◆特集その1 ここがおかしい「オリパラ2020」
――どこがアンダーコントロール?  *聖火リレーJビレッジ現地報告
 聞き手=五輪忠司 語り手=堀切さとみさん




 7月24日に迫った東京五輪(放送当時)。オリパラ反対を発信し続けてきたレイバーネットも、この問題山積みの中、毎号「オリパラ2020」コーナーを設けることにした。第一回は3月26日の聖火リレーを前にしたフクシマの現実に迫る。司会=五輪災害おことわり連絡会の五輪忠司(「ごりんちゅうし」でなく「いつわただし」)氏で始まった。

 福島県内の聖火リレーは、新型コロナウイルス対策で、なるべく見に行かないようにということだが、安倍首相自身は見に行くと明言したと五輪氏は皮肉る。聖火リレーに合わせて3月14日に常磐線を全線開通させたのだが、この開通は相当無理筋の開通だったと、地元の人たちも言う。ここで、堀切さとみさんたちが聖火リレーの行われるJビレッジを中心に現地を訪ねた時の短い映像が流された。その中で、大熊町議の木幡ますみさんは、帰還困難区域の真ん中を走る線路まわりだけ解除している(地図を見ると解除された所はまるで焼き鳥の串のように細く、列車と聖火を走らせるのに必要最低下の範囲に見える)ので、駅ができてもその周辺には人は住んでいない。聖火リレーのためということは明らかだという。



 例えば大野駅(大熊町)の駅前の路上は、4.02μ㏜/h、道端の草むらは、9.7μ㏜/h(放射線作業に従事してお金をもらっている人の許されている線量の2倍以上ある)とても高いので、聖火ランナーも50メートルくらい走ったら車で移動し、中継地点のそばでまた10メートルくらい走るという「まだらリレー」、あるいは「キセルリレー」をするとか。2017年ころから少しずつ帰還困難区域を線量が高いことを承知で解除してきたのは、自治体が国に申請して認められると、町の予算の5倍ものお金が入ってくるからということだ。ところが、ここで大きな2つの問題がある。
1、JRの職員の健康、つまり被曝(この区間のフィルターにかかった放射性物質が2350㏃と、高かった。)
2、乗客乗員の安全(終息していない原発の直近を通過することで、何かあった時の安全が担保されていない。全くマニュアルがない)
 続いて、このTVに寄せられた福島の方の「きっぱりとオリンピック中止すべき」というメッセージが読み上げられた。

◇ここで乱鬼龍氏の未来を予言した川柳が発表された。
  帰還困難やがては地球かもしれぬ  乱鬼龍

◆特集その2 またもや非正規労働者を景気の安全弁にするのは許せない!
 ゲスト=菅野存さん(ジャパンユニオン・東京東部労組)

 コーナーに入る前に、ジョニーHさんから「新型コロナウイルスの基本的なワンポイント知識」が示された(図がないと説明できないので、アーカイブ画像で確認してください)。新型コロナウイルスの検査に用いるPCR法というのは、細胞を増やして新型コロナウイルスが存在するかどうかを調べるものだが、実際には結果が出るまで1日はかかる。それを韓国が開発した短時間で判別できる「ドライブスルー」方式(決して車に乗って窓口を通り過ぎるいる間に検査が終わるわけではない)といわれているやり方だと短時間で終わると、図を示しながら解説した。アメリカなどはさっそく取り入れたが、日本では韓国からすでにキッドが輸入されているにもかかわらず、使用させていないという。

<新型コロナウイルス労働相談から見えてくるもの>



 代わって、この検査にも関わるが、新型コロナウイルスにまつわる労働の現場の問題点をジャパンユニオン・東京東部労組委員長の菅野存さんに伺う。
 2月に入ってから、新型コロナウイルスに関する相談が広範囲に持ち込まれるようになったとか。初期のころは、休業に関するものに続いて、マスクをつけさせないなどが25.2%と多かった。雇用主のマスクNOの理由は、「笑顔が見えない」などだがこれに関しては「労働者への安全配慮義務」が労働法に明記されていることから、それに違反すると指摘しているとか。
 2月の末の学校封鎖や人が集まることの自粛指導後は、内容が深刻になってきた。時差出勤やテレワークが非正規者には認められない、休業期間中の所得補償、雇用打ち切りなどが増えている。非正規の人たちがリーマンショック時の派遣切りのように、雇用の調整弁にされて非正規労働者が路頭に放り出されることは許せないと、労働相談は今後も続けていくということだ。(3月21、22日にも行った)

◆ここでちょっと一休みで、ジョニーHさんの歌
今回は童謡「森の小人」の替え歌で、カラオケでも歌えます。

◆特集その3 介護現場からの告発/なぜ国家賠償訴訟をしなければならないのか
 ゲスト=伊藤みどりさん(訪問介護ヘルパー歴10年)・藤原るかさん(訪問介護ヘルパー歴30年)


<介護保険は掛け捨てである>

「全く知らなかった」と言ってもいい驚きの介護保険の仕組みが説明された。まず、ほとんどの人が天引きで徴収されている介護保険料は、掛け捨てだそうだ。2000年4月に始まった介護保険は、本人と公費(国や市町村の税金)で折半している。ところが2012年ごろから改定の度に月額保険料が値上がりしてきて現在は6771円。そのうち実際に介護に使われているのは18%だという。では、残りはどこへ行ったのか。民間に流れている。例えば、お年寄りの健康維持のための体操を民間に委託し、その委託料になっている。保険料値上げの度に、政府は高齢者社会だから費用がかさむというが、真っ赤なウソなのであるというか、直接の介護費用には回されていない。

<労働に見合った報酬? 人件費を上げると事業所は赤字になる?>

 訪問介護のホームヘルパーは、全国で43万人いるが、そのうち7割が非常勤である。仕事は、入浴、トイレ、などの身体介助と掃除、洗濯など家事援助など日常生活の支えだが、時間に追われ、利用者は会話もしたいのに話しかける余裕すらないという。事業所は、経費の70〜90%を国から、10〜30%を利用者の利用料で人件費などを含めた事業全体を回すことになっているので、丁寧な介護をしたりヘルパーへの人件費を上げると、事業そのものが立ち行かなくなることもあるという。そんな状態では人材不足・サービス低下などは当然で、この事業それ自体が破綻寸前にあるという。



<分単位の介護サービスで何ができる?>

 労働現場はどうなのか、北穂さゆりさんの現場の映像を見てから、藤原るかさんに生々しい現場の様子をうかがう。以前は1か所90分60分の時間単位だったのが、今では20分など、だんだん分単位になってきたので、話す暇もないという。時間に追われてのケアの心苦しさを「お年寄りにはお年寄りのスピードがあるのに…」「入れ歯が合わなくて、何度も聞き返すが…」という。さらに「昼休みがないので、自転車に乗ったまま肉まんを食べる」とも。
 自分たちの実際の賃金の内訳を示しながら、実働拘束時間と給料が支払われる時間との差は、約2倍。これでは理想に燃えて社会福祉の仕事をしたいと就職した若者が去っていくのも仕方がないという。今やこの職種は60歳過ぎが多く、平均年齢は60歳近い。一方、20代は1%ということだ。

<なんで困難な国賠訴訟を選んだか>



 3年ごとの介護の費用見直しをするのだが、民主党政権時は上がったものの、安倍政権になってから減額されてきた。伊藤さんたちは、厚労省(労働基準局、老人健康保険課)に減額処遇改善や介護現場の実態を数字で示して訴えてきた。昨秋は財務省も同席する中で「労基法無視」の不法労働環境にあることを認めざるを得なかったという。それほどの劣悪状態の中で、2019年11月に伊藤さんら女性3人で国の責任を問う裁判を起こした。

 企業ではなく、勝訴を勝ち取ることが難しい国賠訴訟を選んだのはなぜか。「事業所を訴えても、事業そのものが立ち行かなくなるだけ。この組織の大元である国に改善してもらいたかった」からという。
 この裁判は、日本ではまだ正式には認められていないけど一部、ウーバーイーツなどに見られるゼロ時間契約が介護現場に持ち込まれる危険性を感じたからともいう。イギリスの映画『家族を想うとき』でも妻の介護の仕事がゼロ時間契約で、仕事がなければ収入がない。これが介護の現場に導入されれば仕事として成り立たなくなり、社会的問題になるという危機感からだという。
 交渉の中で、財務省は「介護は、主婦でもできる」とこの仕事自体と「主婦」を貶める発言をしている。それに則ったのか、一部の行政、例えば三鷹市などがボランティアに切り替えていっている。それが推し進められていったとき、これから団塊世代を迎える後期高齢者の生活は、守られるのだろうか。

<この裁判は、3本の柱でなっている>

1、現在の介護保険制度は労働基準法を守れない仕組みである
2、介護の社会化とんでもない。介護で家庭に縛り付けられている女性の人権問題として言われていたこの言葉が、新たな差別を生んでいる。つまり非常な劣悪条件での当人の疲弊と、新たななり手がいない。放置すれば、在宅介護どころか施設介護も人手不足になる
3、人材不足は国の責任。つまり、介護労働者の生活を守るのは国の責任。具体的には「移動」「待機」「キャンセル」時間を支払うこと



<この裁判が終わるまで仕事を辞めないで頑張ろうネ>

 伊藤さんは、「人と人がかかわり命をつなぐことなので、この仕事は本当に面白い、もっと早くからやればよかった、裁判を通して」という。藤原さんは「人間らしさ 自分が生きていていいんだと思える」と介護を受ける人、する人共に自己肯定できる仕事だという。訴訟を起こしたのは3人。60歳を越えている彼女たちは「裁判で勝つまで、何とか仕事をしながら頑張ろうネ」と“老後の楽しみ”として取り組もうと励ましあっていると、明るく話す。
*今後の予定
3月30日 14:00 東京地裁803号法廷
3月28日 大崎南部労政会館で18:30から第6会議室
(新コロナを受けて準備会に変更)
 次回のレイバーネットTVは 4月15日(水)「新型コロナ問題と医療の実態」を取り上げる。

*写真=小林未来

Created by staff01. Last modified on 2020-03-27 11:40:50 Copyright: Default


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