石田嘉幸と申します。
いくつかの新聞で紹介されているのを見て、渋谷へ「主戦場」という映画を見に行ってき
ました。
慰安婦問題について、日系二世の監督が論者へのインタビューを重ね、それを対抗的に構
成した作品です。
杉田水脈や藤岡信勝といった方々の声に直ちに吉見義明や戸塚悦朗の言葉が対抗する濃密
な疾走感に居眠りしている暇がありません。
印象に残ったのは、いずれも慰安婦問題で論点とされる事柄からは少し外れているのです
が、確か藤岡信勝さんの「国家は謝罪してはいけないんだ」と言う主張に、アメリカ政府
が、戦中の日系人収容への謝罪をしている場面が対比されるシーン、白人のネトウヨ応援
団という位置取りなんでしょうか「テキサス親父」という方がいて、その日本人マネージ
ャーが、突然、不細工な女がフェミニズムとか言ってるんだ、というような事を言い始め
てしまうところ、オノ・ヨーコのいとこだという日本会議の加瀬英明さんが、自分は人の
本は読まないとか、アメリカは最近まで黒人差別がひどくて、日本が「勝ったから」それ
を解消できたんだ、というような発言をしてしまっているところでした。
国家は謝罪してはいけないという言い方には、国家を自らが構成していくものとして捉え
ることができない、何か魔術的な存在であると理解している段階であることが示されてい
て、北朝鮮も拉致問題を謝罪してはいけないという事になってしまうので、論理的に考え
られるのであれば、この先もっと変化せざるを得ないはずだなと、思わされました。
最後の方の小林節さんインタビューには少し違和感を感じました。
様々な喋る顔が対比され組み合わさっていくこの映画の構成からは、ユーチューブなどに
存在している様々な語りを再編成して2次創作として全く別の思想を生みだすことができ
る可能性のようなことを感じました。
ネトウヨの方でしょうか、「とんでもないこの映画は見る必要がない、私がこの映画につ
いて書いたものを読んでくれればいいです、人が良い我々がだまされてインタビューに応
じてしまったのです」的なことをユーチューブに掲載している方もいるようですので、よ
ほどショックだったのでしょうが、逆に「あほなネトウヨを完膚なきまでに粉砕」、など
と溜飲を下げてしまって終わりにしまうのも、間違った見方だと思います。それぞれの肉
体がこの映画に切り取られた言葉をどのような脈路で生みだしているのか、解体して理解
していくことが求められているように思います。
上映館は各地に増えつつあるようですので、ぜひご覧になることをお勧めします。
「主戦場」イメージフォーラム
http://www.imageforum.co.jp/theatre/movies/2411/
オフィシャルサイト
http://shusenjo.jp/
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staff01.
Last modified on 2019-04-28 20:40:31
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