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根津公子の都教委傍聴記(11月28日)〜教育に金を削るべきではない
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●根津公子の都教委傍聴記(2019年11月28日)

教育に金を削るべきではない

 校長の任命、校長等任用審査についての議案はいずれも個人情報に当たるとして非公開議題。公開議題は次の2報告のみ。

1.SNSを活用した教育相談(上半期)の実施状況について

 昨年度8月25日から9月7日まで、都立高校生を対象に試験的に実施したこと(プラス評価)を踏まえ、今年度は対象を都内国公私立学校の中学生・高校生に、相談期間を毎日(4月1日〜5月31日、8月20日〜9月15日、1月4日〜1月18日は、回線数を増強)に拡大した。その結果、上半期の相談件数は2120件(1日平均11.6件)、中学生が52%、平均相談時間は41分、一人当たりの相談回数は1回が70%・4回以上が8%、相談内容のトップは友人関係(いじめを除く)で533件だったとのこと。

 この報告に、「1回限りということは、相談しても意味がないと思ったのか。とすれば、事業そのものを見直さないといけない。あるいは、軽い感じのチャット(雑談程度)が多いのか。」(北村教育委員)との発言があった。全くそう思う。

 悩みを相談する際に、自分のことを知らない人に相談するだろうか。自分のことをよく知り、かつ自身が信頼する人に相談するのではないか。中学生も高校生も、担任や信頼を寄せる教員に相談したいはず。そうした指摘がこれまで一度も教育委員からも出てこないのが不思議だ。

 SNSによる教育相談を止めろとまでは言わないが、大した意味はない。「やりました!」と形ばかりの施策でしかない。都教委が本気で教育相談体制をつくるのであれば、子どもたちの悩みやつぶやきを聞き受け止めてあげられるよう、教員の大幅定員増をすることだ。都教委にも教育委員にもそれはわかっているだろう!教育に金を削るな、と言いたい。

2.今年度上半期に寄せられた都民の声(教育・文化)

 寄せられた件数は2459件。うち、「苦情」が76%。分野別では、生徒指導に関するものが41%、教職員に関するものが21%。

 「苦情」の事例がいくつか示された。一つ上げよう。「都立高校生が登校時に広がって歩くので、迷惑。倫理観が欠如している。指導を。」との「苦情」に学校側は「ご指摘を受け、登校時のマナーについて注意喚起する印刷物を作成し、教室に掲示するとともに、副校長から指導を行いました。あわせて、教員による生徒の登校時の見守りを校門前だけではなく、範囲を広げるなど、より指導を徹底していくことにしました。」と対応したとのこと。

 こうした「苦情」について、一人の教育委員から「思いやりや想像力が欠如しているのではないか」と感想が述べられた。同感だ。上記した「苦情」に対しても、その方が高校生にその場で注意したらいいだろうに、と思う。告げ口やお上に解決してもらう的発想には息苦しさを覚える。都教委はこうした「苦情」にはすぐに対応する。しかし、次に示す請願・陳情には全く対応しない。「都教委の方針」に反するからだ。

 請願は、ア.「日の丸・君が代」の強制と教員処分を撤回すること イ.小山台高校定時制・立川高校定時制の廃校方針を見直し、存続させること ウ.学校現場の意見を十分に尊重して、また、公開の場で議論を行って教科書採択をすること について。陳情は、登下校の際に使う医療的ケア児専用車両に看護婦配置を求める要望や都立学校生の頭髪の黒染め指導を行わないように通達を出してほしいとの要望。

 公益通報制度(教育庁等窓口、弁護士窓口)の弁護士窓口を利用したのは13件。いじめ、セクハラ、会計処理、個人情報に関するものとのこと。それだけの報告だったのではっきりとはわからないが、この制度の性格から見て、いじめとは教職員間のいじめということだろう。兵庫の件が騒がれたが、子どものいじめと同じく、いじめは日本社会に蔓延している。子どものいじめ防止を本気で考えるならば、都教委がまずすべきは、子どもたちと触れ合う教員たちが、ゆとりを持って働くことのできる労働環境をつくることだ。ここでも、教育に金を削るべきではない。


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