韓国の軍事情報協定(GSOMIA)破棄をどうみるか?/その背景に迫る | |
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韓国の軍事情報協定(GSOMIA)破棄をどうみるか?〜その背景に迫る安田幸弘(レイバーネット国際部)韓国の軍事情報協定(GSOMIA)破棄の決定に日本と米国が「極めて遺憾」と反応。それもそのはず、一番GSOMIAを必要としているのは米国で、米国に追随する日本も自動的にGSOMIAが必要になる。 もう一度、GSOMIAについて確認しておくと、2006年(第1次安倍内閣が成立した年)の「ロードマップ」に続いて2007年に日米が「2プラス2」で合意、日米GSOMIAを締結した。一連の合意は日米軍事同盟の下で米軍・自衛隊の一体化と、自衛隊の集団的自衛権の行使を確認するもので、2015年の「戦争法」、そして2016年の日韓GSOMIAへと続く。この動きの延長には今年の参議院選挙で安倍が叫んだ「憲法改正」がある。 GSOMIAは軍事情報包括保護協定で、これ自体では、締結国との情報共有についての協定ではなく、あくまでも二国間で共有する情報の保護に関する協定。したがって、GSOMIAがなくても日韓間で情報共有や交換はできるし、実際にGSOMIA以前は特に問題なくやってきた。日本にとって、韓国とのGSOMIAは「米国に言われたから」締結するもので、それ以上でも以下でもないが、韓国にとってはそうではない。 GSOMIAは軍事協定の一種だ。そして韓国には日本との軍事協定を結ぶことに対する強い抵抗があった。李明博政権時代の2009年に北朝鮮の長距離宇宙ロケット発射と二度目の核実験を背景に日韓間でGSOMIAの議論が始まり、2012年に李明博政権は締結を決定した。しかし、これに対して韓国内から「日本との軍事協定反対」という強い反対の世論が沸き上がり、協定への署名は取り消された。 その後も北朝鮮によるミサイル・核の動きは続き、米国は本土防衛のためのミサイル防衛システムを極東に配置する作業が進められ、2006年には韓国は強い反対にもかかわらずTHAAD配置を受け入れ、日韓GSOMIAを締結するに至る。 ミサイル防衛については、韓国は執拗な米国からの圧力にもかかわらず、韓国型ミサイル防衛システムにこだわり、韓米のミサイル防衛一体化を拒否し続けてきたが、結局、THAAD配置を受け入れたことで韓国は米国のミサイル防衛網に組み込まれることになる。そして早くから日米の一体化を進めてきた日本としても、米国のミサイル防衛網を補強するために韓国の参加を強く望んできた。そのような流れの中で日韓GSOMIAは締結された。 日本のマスコミはGSOMIAについて、ミサイルの発射や軌道、落下点などの情報を共有するために必要だと言っているが、GSOMIAを過小評価しているのか、あるいは何かを隠しているのか。 最近、日本ではF-35の「爆買い」や、護衛艦の空母化、そしてイージスアショアといったニュースが話題になった。これらはすべて日米韓による軍事情報網の存在を前提とする軍事システムの一部だ。自衛隊のF-15後継機としてF-35が選ばれたのは、F-35が「空飛ぶ端末」だからであり、それを機動的に運用するためには空母が必要であり、それらを動かすための情報を提供する極東のレーダー網で弱い部分を補強するのがイージスアショアだ。F-35がスマホなら空母は基地局、レーダーはサーバーだ。 このシステムを十分に稼働させるためには、地理的に一番北朝鮮に近い韓国のレーダー基地は不可欠で、そのレーダーのデータを日本の自衛隊や、沖縄・グアムなどの米軍のレーダーと一体化することで、極東地域のリアルタイムの情報ネットワークが完成する。しかし、この情報ネットワークは最高度の機密が要求される。もちろんレーダーなどのデータは暗号化されるが、この暗号化されたデジタルデータを共有するシステムを利用することがまさに、GSOMIAという法的根拠を要求する核心的な理由だ。 GSOMIAの破棄は、極東に張り巡らされたこの情報網の一角がブラックアウトすることを意味する。日本と韓国のどちらがダメージが大きいかは明らか。韓国にとってGSOMIAが保護する情報は、自国の防衛にはそれほど大きな意味はない。GSOMIAは米国と日本のためのシステムを保護するものだから。 もちろん、GSOMIA破棄で一番困るのは米国なのであって、当然、韓国としては米国との関係を考えると少々窮屈な立場に立たされることになるが、「韓国をここまで追いやったのは日本だ」ということは米国も十分に承知している。しかも、米国としては「じゃ、韓国はいらない」とは言えない立場だ。どうしても韓国は必要だ。しかも韓国は日本のように米国の属国ではないので、どやしつければ縮み上がるような国ではないのだが、どうやら日本は韓国も自分たちと同じように、米国のご機嫌を損ねることはしないと思っていたらしい。 そういうわけで、今回のGSOMIA破棄は、安倍政権が推し進めてきた米軍と一体化した「日本軍」という夢にとっての障害になるばかりでなく、まあ、十中八九、米国からは「韓国がヘソを曲げちゃったじゃないか。変なことするな」とどやしつけられているだろう。 日本のマスコミは「GSOMIA破棄で損をするのは韓国」なんて呑気な記事を送り出している。やれやれ。 Created by staff01. Last modified on 2019-08-23 14:40:11 Copyright: Default |