〔週刊 本の発見〕『なぜリベラルは敗け続けるのか』 | |||||||
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毎木曜掲載・第121回(2019/8/8) 「お説教」からは何も生まれない『なぜリベラルは敗け続けるのか』(岡田憲治、集英社)/評者:渡辺照子「争点がない」、「投票率が低い」とさんざん言われ、低調に終わった参議院選挙。現政権は度重なる醜聞にもめげず、議席減とはならなかった。選挙システムのおかしさもあるだろう。しかし、野党はがんばっているのに成果を上げられないことも主要因ではないか。多くの人の政治へのあきらめに対し、私は解決策を常に切望している。 どう「がんばれば」良いのか。そのヒントを本書に求めた。 どんな本なのか。一言で言えば、外連味のないアフォリズムに満ちたフレーズ満載の本だ。各章の表現からして「魅力的」だ。「なぜリベラルは『友だち』を増やせないのか」「善悪二分法からは『政治』は生まれない」「議論のための議論から卒業しよう」等々。 はい、わかりました。これだから、帯にあるキャッチコピーの「私は本書執筆で『友』を喪う覚悟を決めた」となるのだろう。各章の表現は自らの思想と信念を遵守する「リベラル」の人たちへの忌憚のない指摘なのだから。 自戒を込めて言うのだが、私もこれまで「自分の思想の正しさ」をいかに繰り返し粘り強く訴えるかが運動のカギだと思っていた。特に私が当事者として取り組む雇用法制問題は改正という名の改悪を繰り返し、そのおかげで自分自身が派遣切りにまであったのだから恨み千万なのだ。「アベ政権打倒」。この言葉を吐くだけでルサンチマンがいくらかは晴れるような気がした。だが、事態はいっこうに変わらない。変わらないどころか悪化の一途だ。それでいて、その状況の変化に当事者である多くの非正規労働者らが無関心なことにいら立ちを覚えていた。でも、自分たちの言動や活動方法を変えることで少しでも何かが変わるのであれば、私はその方法を取ること辞さない。「特効薬やブレークスルーはないものか」とまでの手抜きは考えまい。だがこれまでのやり方の盲点を突く「何か」が欲しい。 ポイントは、理論の正しさをさらに追求することではなく、もっと日常的な、思想に燃える人々の具体的な態度の改めなのだと何年か前から思っていた。 その私の思いに応えるような章がある。「『お説教』からは何も生まれない」の章だ。象徴的なエピソードが紹介される。1990年のPKO法案反対集会に参加した学生と壇上の講師とのやりとりだ。講師陣が過去の栄光の話ばかりをし、当時の問題に触れないことを学生が指摘すると「君たちはまだまだ修行が足りない!もっと勉強しろ!」と一喝した光景を、いわゆる「左翼」が仲間を増やせない最大の要因だとする個所だ。 著者はこのような現象を「『政治とは正論をぶつけることだ』という敗北と失敗を約束するような杜撰な戦い方」とまで言っている。そして、これまで日本の左翼が軽視してきた「ゼニカネ」の問題をこそ政治の世界で取り組めと提言するのだ。 それで、どうすれば良いのか。著者は「税制改革、雇用政策等において、理念と、ままならない現実を対立させるのではなく、同じ理念にたどり着くための道筋を、最も友人が増えそうな設定を念頭に、政治的判断へと翻訳させることだ」としている。ようし、やってみようではないか。 本書は、こじらせリベラルの慢性肩こりのツボを強力に刺激するマッサージのようだ。痛いのに気持ちよく、クセになる。私が大きな決断をする際に、この本が背中を押してくれた。 *「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美、根岸恵子ほかです。 Created by staff01. Last modified on 2019-08-10 22:53:15 Copyright: Default |