Netflix独占配信のドキュメンタリー映画『レボリューション−米国議会に挑んだ女性た
ち』、もうご覧になりましたか?
邦題の『レボリューション』はちょっと言い過ぎで、原題は“Knock Down the House
”ですから『議会をノックダウン』あたりが妥当なところでしょう。とはいえ、内容はま
さに“革命”と呼ぶにふさわしい心揺さぶられるドキュメンタリーです。私はNetflixの1
か月無料期間中に3度も見てしまいました。
Netflixによる映画紹介は「巨額の富を持つ現職議員に対抗し、志固く2018年の下院議員
選に出馬した女性新人候補者のうち、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスなど4人の戦
いぶりを追う」となっています。
この「下院議員選」は正確には「民主党予備選」とすべきか。4人のうち1人は上院議員予
備選に立候補していますから。4人とはアレクサンドリア・オカシオコルテス(ニューヨ
ーク州下院14区。以下、AOC)のほかポーラ・ジーン・スウェアレンジン(ウェストバ
ージニア州上院)、コーリ・ブッシュ(ミズーリ州下院1区)、エイミー・ヴィレラ(ネ
バダ州下院4区)。うち勝ったのはAOCだけです(NY州は民主党の牙城で、本選でも
圧勝)。AOCの輝かしい勝利のかげに、惜しくも敗れた数多くの進歩派急進派候補、女
性・有色人種・マイノリティ候補がいたのだと思い知らされます。
4人の立候補の動機はさまざま。しかし、現職民主党議員が全くあてにならないという思
いは共通です。AOCは「NY州14区=ブロンクス&クイーンズは労働者の町なのに、ク
ローリー議員はウォール街や不動産業界などから1期300万ドルも献金を受けている」。ポ
ーラは炭坑夫の娘。空気や水を汚染し、住民の健康を破壊し、地域を切り捨てた鉱業会社
と癒着する現職のマンチン議員が許せない。コーリは同じミズーリ州ファーガソンで起き
た黒人少年射殺事件に怒り、長年議席を持つ黒人議員が差別解消に何の成果も上げていな
いと立候補を決意。娘を肺塞栓症で亡くしたエイミー。保険未加入を理由に医師が検査を
拒否したためです。「医療は人権だ」のスローガンを掲げ、製薬会社から献金を受ける大
物候補に対抗します。
映画を見て初めて知ったこともたくさんあります。AOCの立候補は、草の根グループ「
ジャスティス・デモクラッツ」と「ブランド・ニュー・コングレス」が現職議員に対抗す
る候補者をクラウドソーシングで募集した際、AOCの弟が彼女を推薦したことがそもそ
ものきっかけだったなんて、びっくりですね。AOC勝利の裾野には、彼女が属するDS
A(アメリカ民主主義的社会主義者)だけでなく、アメリカ社会・政治の現状を憂え、そ
の刷新を願う広範な人びとの努力があった、ということなのでしょう。
最後の場面は、予備選勝利の5日後、ワシントンの連邦議会議事堂をパートナーと訪れた
AOC。子どもの頃、大人たちと一緒にここ議事堂前に来たとき、父(AOCが大学在学
中に他界)が私にこう言った、と涙をこぼしながら振り返ります。父の言葉は、ネタバレ
になるのでここに載せるのはやめておきましょう。ぜひ映画を見てください。この父を持
つプエルトリコ・ルーツの女性がトランプ支配下の米政界に躍り出た。何てすばらしいこ
とかと私は感動しきりです。
〔浅井健治@週刊MDS編集部〕
*視聴サイト
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Last modified on 2019-06-14 21:31:04
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